長徳元年(995年)5月2日は藤原道綱母(ふじわらのみちつなのはは)が亡くなった日です。
彼女は平安中期の歌人で『蜻蛉日記』の作者。
同日記は日本で初めて女性が書いた本格的な作品であり、夫は摂政にまで登りつめた藤原兼家でした。
道綱母も藤原氏の出身ですが、父は位の低い国司であり、兼家とは身分違いのセレブ婚となります。
ただ、彼女も「日本三大美人の一人」ともされる美しさを誇っており、さらには和歌も百人一首に選ばれるほどの優れた歌人です。
美人とボンボンのカップル。
どんだけリア充なんだ!
日記もさぞかしドコぞの奥様Facebookの如くきらびやかな内容で「いいね!」の連発なんだろ! と思ったらさにあらず。
この日記がドロドロの嫉妬でどうしようもないのです。
今回の日本史ワル査定は、この藤原道綱母に注目です。
時姫が妬ましい オンナは全員許せない
道綱母は、ダンナ兼家のことをめちゃくちゃ好きです。心から愛してます。
しかし、プライドが邪魔して素直になれない。
そうこうするうちに夫・兼家は別の女性にハマり、たとえば藤原時姫との間に生まれた息子は後に頂点を極める藤原道長だったりします。
まぁ、この頃の道長は出世の見込みない若造なんですけどね。
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実は出世の見込みなかった藤原道長の生涯 なぜ最強の権力者に?
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一方、道綱母の子供は道綱だけ……しかも一人息子はちょっと草食系なもんだから、時姫が妬ましい……あぁ、妬ましい、私以外のオンナは全員許せない!!!
ってなわけで『蜻蛉日記』の怖い内容を確認して参りましょう。
まずはジャブから。
・他の女(町の小路の女)のもとに通うようになった夫が、明け方、自分の屋敷に来た際、門を開けなかった
門が開かないので夫の兼定はさっさと他の女のところへ行ってしまうわけです。
そして、その後、
・夫への嫌味を込めた歌を詠み、しなびた菊花を添えて送る
と、実は、この歌が百人一首にも入ってしまいます。
「なげきつつ ひとり寝る夜の あくるまは いかに久しき ものとかは知る」
【訳】あなたが来なくて嘆きながら1人寝る夜の明けるまではどんなに長いかわかりますか?(門が開くまで待てないあんたにゃ分かるまい)
夫へのイライラを愛する息子にぶつける不条理
さらに日記からの「ジェラシー抽出」を続けましょう。
・小路と子を作った夫だったが、出産後は足が遠のいているようだ。私と同じ目にあって苦しめばよい!
・更に出産祝いで馬鹿騒ぎした息子が死んだってさ。超スッキリ!
「30日あったら30夜うちに来て欲しい!」ぐらい夫が好きなのにツンデレを貫く道綱母。
そのうちツンツンになり、せっかく兼家がじゃれてきても「ここで折れたら負けだ!」と石木のように動かなくなってしまいます。
そりゃ夫も嫌になりますよね。
しかも毒親で夫が来ないイライラを息子道綱にぶつけるんですからたまったもんじゃありません。
・「あー、もう夫婦生活が嫌になっちゃったから尼になろうかなー」
↓
・思春期の息子ギャン泣きで、僕も出家する宣言
↓
「あら、あら。出家したら大事な鷹が飼えないけど良いの?」
↓
息子、鷹を放つ
ちなみに八つ当たりしているムチュコたんのことも大好きなんですよね。
こんな母だから息子の道綱くんは草食系になってしまいましたが、異母弟の道長とは仲良しで正二位まで出世しちゃいます。
もしも肉食系で道長と真っ向勝負となったら、なんやかんやで早死ってこともありますから、結果オーライ的な?
★
藤原道綱母さん。
悪人というよりは某掲示板の怖い主婦みたいな印象があります。
ただ、人の悪口と子供に当たるのは可哀想……まぁ、彼女も可哀想かも、ってなわけで今回は★1つ。
なお、このツンデレ日記は『源氏物語』にも大きな影響を与えたそうですから、歴史ってホント面白い。
悪人度 ★☆☆☆☆
影響力(権力)★☆☆☆☆
嫉妬力 ★★★★★
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文/馬渕まり(忍者とメガネをこよなく愛する歴女医)
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【参考】
川村裕子『蜻蛉日記〈2〉下巻―現代語訳付き (角川ソフィア文庫)』(→amazon)
藤原道綱母/wikipedia