一条天皇のもとへ入内を果たすも、なかなか子供に恵まれない藤原彰子。
大河ドラマ『光る君へ』では二人の仲を主人公まひろの物語が繋ぐ――そんな描写になっていますが、史実に関して言えば、彼らは二人の皇子に恵まれます。
では、この二人にはどんな事績があるのか?
そう問われて、すぐに答えが出てくる方は少ないかもしれません。
道長の権勢に押されてどうしても印象が薄くなってしまうのですが、彼らも何もしなかったわけではなく、こと後朱雀天皇に注目すると摂関家の利益に反するような政策を取ろうとしています。
一体なぜか?
本記事で、後朱雀天皇の生涯を振り返ってみましょう。
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公任が詠んだ長寿の歌
敦良親王(後の後朱雀天皇)は寛弘六年(1009年)11月25日に生誕。
前述の通り、父は一条天皇で母は藤原彰子です。
紫式部の日記『紫式部日記』では、後朱雀天皇の出産については比較的あっさりした描写ですが、お七夜などのお祝いは盛大に行われており、その宴の席で藤原公任がこんな歌を詠んでいます。
いとけなき 衣の袖は せばくとも 劫の石をば 撫でつくしてん
【意訳】今はお生まれになった皇子様の衣の袖は狭いとしても、ご成長の後は劫の石をなで尽くすほどになられるでしょう
「劫(こう)の石」とは、仏教でとてつもなく長い時間のたとえです。
百年に一度地上に降り立つ天人が、その羽衣で巨大な岩をなで尽くす時間を「一劫(いっこう)」というのだとか。
つまりは、敦良親王の長寿を予祝した歌ということになります。
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敦良親王は一条天皇にとっては第三皇子となります。
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第二皇子が藤原彰子との間にできた後一条天皇(敦成・あつひら)。
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母が定子である敦康親王は即位できずに生涯を終えますが、後一条天皇と同じく彰子の子である敦良親王は道長の外戚となり、将来が明るいことは言うまでもありません。
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これによって寛仁元年(1017年)、敦良親王は数え9歳で皇太子に立てられました。
とはいえ兄の後一条天皇とは歳も近いため、しばらくは皇太子として過ごすことになります。正確には皇太弟ですが、立場としては同じですね。
その後、敦良親王は元服も済ませ、寛仁五年(1021年)には道長の末娘・藤原嬉子(きし/よしこ)が東宮妃として入内。
つまり道長は、孫のもとに娘を嫁がせたわけですね。
当時の姻戚関係からすると別に珍しくもない血の濃さながら、こうして冷静に書き記していると、なかなか怖いものがあるでしょう。
嬉子も、敦良親王から見れば叔母の立場ですが、生まれは寛弘四年(1007年)ですので、歳は2つしか変わりません。
むしろ、数え44歳で嬉子を出産した源倫子に驚嘆すべきでしょう。
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彼女は90歳まで長生きした、あらゆる意味で健康な女性であり、道長は感謝してもしきれない程の恩恵に与っていたことになります。
嬉子は出産の2日後に急逝
祖父である道長の意向で、叔母と結ばれることになった敦良親王。
ゴリゴリの政略結婚ながら、敦良親王が詠んだ歌には妻・嬉子への愛情がうかがえます。
次の一首です。
ほのかにも しらせてしがな 春霞 かすみのうちに 思ふ心を
【意訳】春霞のうちに忍ばせているあなたへの思いを、ほんの少しでも知らせたいものだ
そして敦良親王と嬉子の間で、万寿二年(1025年)、親仁親王(のちの後冷泉天皇)が誕生しました。
後一条天皇が皇子に恵まれていなかったこともあり、道長にとってこれほど喜ばしいことはありません。
しかし、嬉子は産後の肥立ちが悪く、出産して2日後に急逝してしまいます。
娘を喪った源倫子や藤原道長が悲しんだのは言うまでもありません。
敦良親王も悲嘆に暮れたことでしょう。
その後、敦良親王のもとには万寿四年(1027年)に三条天皇の皇女である禎子内親王(ていし)が入内しました。
禎子内親王の生母は道長の娘・藤原妍子のため、ふたりはいとこ同士でもあります。
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そして敦良親王と禎子内親王の二人には、
という子が授けられました。
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