大河ドラマ『西郷どん』は、主人公の西郷隆盛がそんな視点から描かれることが放送前から周知されました。
◆明治維新から150年、2018年大河ドラマの主人公となるのは男にも女にも“日本史上最もモテた男”西郷隆盛です。(→link)
◆『西郷どん』 注目は男にも女にもモテる未熟でうかつな主人公(→link)
確かに西郷は、魅力的な人物として知られますし、そのことに異論を申し上げる気持ちはサラサラありません。
薩摩隼人たちの気風は、時代もエリアも異なる世界で生きる私からも非常に魅力的に映ります。
しかし、です。
幕末・維新当時の人にとって、コトはそう単純ではありません。
特に江戸では
「薩摩芋がモテた? おととい来やがれ!」
「芋侍に抱かれるのだけは、勘弁でありんす」
と、散々な評価でした。
では実際にモテたのは?
結論から申しますと京都では長州藩士であり、その中でも久坂玄瑞が際立った存在。
そして新選組の土方歳三も同様に女性からの人気が絶大でした。
本稿では、幕末のモテ事情と、西郷どんのモテモテ真偽を併せて振り返ってみたいと思います。
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薩摩趣味といえば男色でごわんど
モテるモテない以前に、大河ドラマ『西郷どん』からすっぽ抜けていた要素。
それが、当初は描かれると思わせぶりにしていた「男色」です。
※以下は薩摩の「男色」考察記事となります
薩摩趣味(薩摩の男色)を大河ドラマ『西郷どん』で描くことはできるのか?
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別に「濃厚なBLをやってほしかった!」ということではありません。
薩摩では、明治時代になってから「鹿児島で遊郭ができた!」と驚かれるほど、男色が盛んだったということ。
つまり、女からのモテ要素を出すのはそもそもおかしいんじゃないのか、というところです。
西郷隆盛はじめ薩摩藩士が、美男を見て「よか稚児!」(美少年)と熱くなった話もあります。
大山格之助などは、戊辰戦争で大苦戦した庄内藩の名将・酒井了恒(酒井玄蕃)と出くわした際、そのイケメンぶりにメロメロになったとか。
大河ドラマ『西郷どん』で疑問が湧いてくる描写はまだあります。
「島妻」である愛加那(とぅま)の扱いです。
彼女や彼女との間に生まれた子は、史実ではどう考えても差別的な扱いをされております。
薩摩本土と離島の間には、差別関係がありました。
差しだされたような立場の島妻を「島の女にもモテた!」と言い張るのは、無神経だと思うのです。
幕末モテモテ伝説! 主役は長州・久坂と……
では幕末でモテモテ伝説を持つ集団と言えば?
長州藩士たちです。
中でも、180センチ超の長身かつ、一番の美男であり美声の持ち主・久坂玄瑞はバツグンでした。
吉田松陰の妹・文からも惚れられ、久坂本人はいやいやながらも結婚に至っております。
彼が京都で漢詩を吟じながら歩くと、色街の女がうっとりとして声をあげたというのですから、幕末ナンバーワンのモテ男かもしれません。
久坂以外も、長州藩士はともかくモテモテ。
それというのも、色街でパーッと気前よくお金を使うからです。その原資が藩の金だと思うと、ちょっと複雑な話ですけれども……。
【禁門の変】では、長州藩の暴走という負の一面がありましたが、それでも京都の人々は彼らにエールを送り続けました。女性相手でも、お金を使いまくる話が「英雄色を好む」ものとして喧伝されたのですね。
ちなみにモテないことで有名だったのは、会津藩士です。
それというのも、彼らの背景には「真面目さ」と「苦しい藩財政」がありました。
会津藩士は、妻以外の女性および男性との性的交渉は原則禁止。
それを破った場合、妻が誇りを失ったとして離縁することすらありました(山本覚馬と妻・うら等)。
ただし、藩主である松平容保はまた別の話。その美しさと気品ゆえに、彼が姿を見せると女官がざわめいたのだとか。
「壬生狼」と京都の人々から嫌われ抜いた新選組隊士だって、色街ではモテることがあります。
そんな中でも、モテ男伝説ナンバーワンは、この方!
報国の心ころわするゝ婦人哉
【意訳】モテモテで国への忠誠心すら忘れちゃうヤダー
そんな狂句を詠むほどに女性から支持されたのは土方歳三。
現代人も当時の人が見ても「こ、この人はイケメン!」と驚くほどですからね。そりゃ、モテますわ。
んで、肝心の薩摩は?
西郷と豚姫、あるいは大久保利通のように、個々のロマンスは確かにあります。
ただ、久坂レベルの伝説はナシ。
西郷の側近であり、人斬り半次郎として恐れられた中村半次郎(桐野利秋)なんかは、坂本龍馬の妻・おりょうを脅して関係を迫ったとして、宿屋から「嫌やわぁ」と嫌われた話もあります……。
中村にも、村田さとという交際女性はいたそうですけれども、モテとはちょっと違いますね。
ちなみに『花燃ゆ』でこうした長州モテ路線が封印されたのは、そこを描くとヒロインが気の毒だからでして。
さすがにその辺りは脚本家にとって気の毒だったと思います。
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