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【安倍晴明の生涯】
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実資、行成、道長らの日記に登場
いくつか例を紹介ておきましょう。
→正暦四年(993年)2月、一条天皇が病気になったため、晴明が禊(みそぎ)を行ったところ、たちまち治ったので、褒賞として晴明は正五位上に任じられたといいます。
◆藤原行成『権記』
→長保二年(1000年)、火災で内裏から避難していた一条天皇が戻る際、晴明が反閇(へんばい)というまじないを行いました。
行成いわく「史上初」とのこと。
◆藤原道長『御堂関白記』
→寛弘元年(1004年)7月、「深刻な干魃が続いたため、晴明に雨乞いの五龍祭を行わせた」という記述があります。
そして見事に雨が降ったため、一条天皇から衣類が下賜されたとのこと。
実資や行成だけじゃなく、藤原道長の生涯や事績を記したことで知られる『御堂関白記』にも登場しているのですから、それだけ晴明が様々な儀式に通じていたことがわかりますね。
繰り返しになりますが、延喜21年(921年)生まれだとすると一条天皇の時代には80歳前後ですから、決して順風満帆な人生とはいえません。
むしろ、この長命ぶりが晴明の伝説的な活躍に尾ひれをつけたのでしょうか。
安四位まで出世して85才で死去
時系列が少々前後しますけれども、長保三年(1001年)に従四位下になると、安倍の”安”の字と従四位下を組み合わせて「安四位」という呼び名も出来たようです。
”名字と位を併せて略称を作る”というのはままある話。
近い時代の例で行くと、高階成忠(藤原定子の母方の祖父)が同じく“高”と位を組み合わせて「高二位」と呼ばれたことがあります。
そして、晴明の記録上最後の活動は寛弘二年(1005年)3月。
亡くなったのは約半年後の同年9月26日とされます。
生年が延喜21年(921年)とすれば85歳ですので、当時としては驚異的な長命となりますね。
しかも亡くなる少し前まで現役の陰陽師として活動していて、尊崇されるのもむべなるかなというところ。
『今昔物語集』『古事談』『宇治拾遺物語』などにも引っ張りだこですが、中には時系列的にありえないメンバーのものもありますので、鵜呑みにはできません。
それだけ「晴明はすごい人」という認識が広い世代と時代で信じられてきたのかもしれません。
晴明のお墓は、嵐山の渡月橋近くにあり、彼を祀る神社は全国各地に存在。
後世の陰陽師が晴明にあやかろうとして祀ったものが始まりとかで、「西行ゆかりの地」や「小野小町伝説」あるいは「空海伝説」と似たようなものですかね。

晴明神社
最後に、ほっこりするかもしれない話をひとつ。
妻が式神の顔を怖がった
京都・晴明神社の近くに、一条戻橋という橋があります。
「戻橋」の名の由来は晴明とは関係ないのですが、彼はこの橋の下に自分の式神を住まわせていたといわれています。
なぜ自宅の敷地内ではなく、わざわざ外に出していたのか?というと
「晴明の妻が式神の顔を怖がったから」
なんですって。
大事な仕事のツールを外に出すということから、少なからず愛妻家だったことが浮かんできますね。
まぁ、史実における晴明の妻についてはほぼ記録がないので、あくまで想像の話。
橋の下に縮こまって住んでいたであろう式神がちょっとかわいそうなような、可愛いような……。
ちなみに、この近所には土蜘蛛退治などで有名な源頼光の邸があったり、彼の部下・渡辺綱(わたなべのつな)が戻橋の上で鬼女(宇治の橋姫とも)と出会い、髭切の太刀で腕を切り落としたといわれていたり、
平安妖怪バスターズとの逸話に事欠かないエリアだったりします。
架替えによって建材は変わっているものの、場所がずっと変わらないため、いろいろと箔がついたんですかね。
時代が下るに従って、化け物の類とは関係ない逸話も多々存在しますので、ご興味のある方は立ち寄ったり、調べてみるのも一興かと。
晴明本人は、至って真面目に役人や陰陽師としての仕事に励んでいたと思われます。
しかし、諸々の創作や映像作品でお馴染みの通り、ファンタジー的に描こうとすればいくらでもできてしまう人物。
今後『光る君へ』では、どんな無理難題をふっかけられ、そしてどうリアクションをするのか。
ドラマの見どころの一つとなりつつありますね。
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参考文献
- 国史大辞典(全15巻17冊, 吉川弘文館, 1979–1997年刊)
出版社:
吉川弘文館(ジャパンナレッジ公式紹介) - 繁田信一『安倍晴明―陰陽師たちの平安時代 (歴史文化ライブラリー)』
(吉川弘文館, 2005年7月, ISBN-13: 978-4642056155)
出版社: 吉川弘文館 公式書籍情報 |
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