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【源実朝は男色だった?】
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恋せぬゆえの悩み
後白河法皇のように寵愛する相手がいれば、記録に残ってもおかしくはない。
寵愛する男性がいれば影がちらついてもおかしくないように思えます。
しかし、そうではない性的嗜好もある。
2022年にNHKは夜ドラ『恋せぬふたり』を放送しました。
誰に対しても恋愛感情も性的欲求も抱かない――「アロマンティック・アセクシュアル」の男女を主人公とするストーリーです。
このドラマを作るにあたり、NHKは持ち前の取材力で色々と調べ、見る側の偏見を減らすように挑んだはずです。
大河ドラマにおける源実朝の描写にも、そうした知見が反映される可能性はあります。
2022年まで、アロマンティック・アセクシュアルを主役としたドラマが放送されなかったこと。
存在したにも関わらず、いなかったことにされてきたこと。
このことは大きな意味を持ちます。
ましてや実朝のように、源氏の血を引く子を残して当然だと思われる人物が、そんな悩みを抱いていたとすればどれほど悩ましいことでしょうか。
ひ弱で不安定で、北条に操られるだけの将軍実朝。
そんな像を刷新するであろう『鎌倉殿の13人』です。
2022年にあわせて、多様性を反映させても良いはずで、見る者の見方まで広がるのであれば、大きな意義を持つことでしょう。
昔から同じことで悩んできた者がいる
かつて大河ドラマでは、過激な性的描写がみられました。
大河ドラマは教養や歴史教育に役立つために、子供でも見ることが推奨されていました。
そんなドラマで思わぬ性的描写があると、ドギマギしてしまう。そんな昔懐かしい思い出を語るファンもいるものです。
大河ドラマに性的な場面が出てくるだけで、大仰に取り上げるネットニュースにはそんなノスタルジーを感じます。
しかし時代は変わりました。
過激な性描写がある歴史劇を見たいのであれば、VODを見ればよい。
インターネットでいくらでも過激な描写が見られる時代に、大河にお色気シーンを期待するほうが時代錯誤です。
むしろ多様性や歴史の中に埋もれた人々の声を拾ってこそ意義があるのではないでしょうか。
そこで思い出されるのが第35回放送です。
美しい千世を妻としながら思い悩む実朝に対し、大竹しのぶさん演じる歩き巫女がこう語りました。
「お前の悩みはどんなものであってもそれはお前一人の悩みではない。遥か昔から、同じことで悩んできた者がいることを忘れるな」
彼女の言葉を聞き、思わず感極まって涙した実朝。
『鎌倉殿の13人』には、それを認める新時代の要素も期待されます。
その点、第39回放送は、まさに契機となったかもしれません。
源実朝は、北条泰時に心を寄せていた。
恋の和歌を送った。
妻である千世を大切に思うけれども、応じることができない。
なまなましい欲望ではなく、儚く純粋で、それゆえに叶わない、プラトニックな恋が描かれた。
優しく、切なく、歌人として才能を残した実朝らしい。
かつ2022年にふさわしい描写だったのではないでしょうか。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考文献】
坂井孝一『源実朝 「東国の王権」を夢見た将軍』(→amazon)
坂井孝一『考証 鎌倉殿をめぐる人々』(→amazon)
細川重男『鎌倉幕府抗争史』(→amazon)
他