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【大河ドラマの女忍者ランキング】
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2016年『真田丸』
真田といえば忍者――そんなイメージは『真田十勇士』のヒット以来、日本人の心に深く刻まれているのでしょう。
1986年の新大型時代劇『真田太平記』でも、原作に登場する女忍者・お江が重要な役割を果たしています。
2016年の大河ドラマ『真田丸』では、男性の忍者が複数いました。
・佐助:身体能力の高さ、忠誠心、忍耐力を備えている。真田幸村の最期にまで付き添った
・出浦昌相(いでうら まさすけ):国衆であり素破の頭領でもある
名もなき女忍者も登場。名妓のふりをして、酒の席で艶かしく昌幸を誘惑し情報を得ようとします。
が、出浦昌相が即座に見抜き刺殺。佐助が遺体を始末しました。
2020年『麒麟がくる』
神出鬼没の三河の農民として、菊丸が出没。
岡村隆史さん演じる菊丸は、素朴で地味。マイペースに振る舞っているようで、薬草の生えている場所を知っている。
彼と光秀が行動していると、ピンチの際にどこからともなく石つぶてが飛んでくる、不思議な現象も起きていました。
正体は三河の忍び――それがようやく明かされたのが【桶狭間の戦い】。
劇中で描かれるまで、視聴者まで騙される見事な偽装ぶりでした。
この作品では、高い戦闘能力などではなく、とにかくリアリティを重視した忍者らしき人物が複数回登場します。
光秀が親子連れとぶつかった後、手のひらに密書を握らされている場面もありました。
医者である望月東庵、旅芸人である伊呂波太夫といった特定の技能を持つ民間人が、スパイの役割を依頼されることもありました。
いかにも乱世らしい働きでした。
忍者の忍術(知恵)は科学的にも認められる?『麒麟がくる』の菊丸も実践
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2022年『鎌倉殿の13人』
かつては朝廷・貴族の下に雇われていた武士。
彼らが独立して政権を築いていく様子が描かれた『鎌倉殿の13人』の時代は、忍者もまだ確立されていません。
しかし、そうした働きをする者がいなかった、とは言い切れない。
『孫子』はじめ兵法書には「スパイの用途」が記されていて、昔から原始的な間諜はいたと考える方が自然でしょう。
『鎌倉殿の13人』の劇中では、時代考証を踏まえると不自然な刺客が二名います。
善児とその弟子であるトウです。
刺客はその場限りで使い捨てにする方が効率的、かつ同じ人物を使い続けるのはリスキーなため、現実的ではありません。
しかし、そんなことすら忘れてしまうほどの存在感が、この刺客師弟にはありました。
トウは、ヒントやモチーフになったと思われるキャラクターがいます。
三谷幸喜さんはじめ、スタッフの多くが意識していたと語る『ゲーム・オブ・スローンズ』のアリアです。
アリアは大貴族の娘でありながら、刺繍よりも剣術を好むおてんば少女。
実家であるスターク家が政治闘争に敗れてしまい、乱世の中に放り出されると、彼女は刺客としての技能を身につけ、家族の仇を殺すと胸に誓います。
アリアはメインプロットから外れた位置にいました。
復讐への道のりはあくまで個人的なものであり、物語内で大きく躍動する政治外交上の闘争劇とは関係ありません。
しかし、孤独な暗殺者というサブプロットはうまく機能し、ドラマを盛り上げてゆきました。
では『鎌倉殿の13人』のトウは?
彼女は目の前で善児に両親を殺され、刺客への道を歩み始めました。ジッと影のように師匠・善児の背後にいるけれど、親の仇を晴らすのかどうか……いつ善児に牙を剥くのか?
殺すことだけを教えられたトウは、その後どんな道を歩むのか?
彼女の道が一本加わることで、『鎌倉殿の13人』もまた物語に深みが加わったものです。
重要なのは、トウがあくまで自分なりの道を歩んでいたことでしょう。
それまで大河に登場した女忍者たちは、全員とは言わずとも、お色気と共に男の周辺をうろつくことがお約束でした。
トウは、途中、三浦義村が強引に口説いてきたことはありますが、お色気の状況とは無縁です。
本作の劇中で描かれる女性の繋がりは、シスターフッド(女性同士の絆)であり、斬新な像といえました。
女性であり、刺客であり、かつ、自己実現のために生きる――恋愛要員とされず、我が道を模索する女性像は、2010年代後半から大河ドラマにおいても目立つようになりました。
そうしたジェンダー観が反映され、かつ魅力的に輝いたのがトウです。
正確には女忍者ではないものの、同様の存在であった彼女は、ついに初音や小りんとは一線を画する存在となったのです。
こうした状況を踏まえながら「女大鼠」を考察してみたい。
今年の大河ドラマ『どうする家康』で松本まりかさんが演じる伊賀の女忍者(女大鼠)です。
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