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【『べらぼう』感想あらすじレビュー第3回千客万来『一目千本』】
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『一目千本』完成
重三郎は河岸の二文字屋で、本作りをしています。
女郎たちが語り合う中、黙々と手を動かす重三郎。
『一目千本』
そう貼り付け、重三郎は喜びます。
「できた、できた〜!できました!」
きくや女郎、そして唐丸が手にして、よいものができた、めっぽう粋だと喜んでいます。
しみじみと本を眺める重三郎。
「何かすげえ楽しかったなぁ。いや、やることは山のようにあって、寝る間もねえくらいだったけど。大変なのに楽しいだけって、んな楽しいこと世の中にあって、俺の人生にあったんだって……何かもう、夢ん中にいるみてぇだ! 皆さん、ありがとうございました!」
そう笑う重三郎。
なんて可哀想なのだろう。
七つで親に捨てられ、働きづめで、ずっと周囲の顔色を伺って生きてきた。楽しいと心底思えることなんて、あるようで実はない。
そんな一人の青年が、こうも嬉しそうにしているなんて……胸にグッときました。
これが彼の偉業。生きる喜びを見つける姿を描いてこそ、ドラマなのだと思います。
重三郎は駿河屋に『一目千本』を渡します。しかし駿河屋は「いらねえよ」と突っぱねる。重三郎は粘り、客の手持ち無沙汰にもよいだろうと持ちかけます。
「気が向いたらでいいんで見てくだせえ」
そう重三郎は本を置いてゆきます。
重三郎は松葉屋に本を渡します。
新しい馴染みに渡して欲しいといわれ、女将のいねはどういうことか?と返します。
要するに、特典として渡して欲しいということです。
さらには湯屋に行く重三郎。
湯屋では客が風呂上がりの体を冷やしていて、褌一丁で窓から外を眺める客もいれば、囲碁将棋をしている客もいます。
湯屋の親父は「粋だねえ」と大喜び。「吉原の馴染みになればもらえる」と重三郎は説明してゆきます。
こうして、髪結い床、茶店、居酒屋……男が集まる場所に重三郎は『一目千本』を置いていった。
いわゆるサンプルプロモーションだと稲荷は説明します。
その稲荷の前で、手を合わせる重三郎と唐丸。
果たしてお客はくるのか?
思いつく限りのことをしたと重三郎はしみじみと言います。
可愛さ余って憎さ百倍なんだろう
扇屋が『一目千本』をめくりつつ、「玉川がたんぽぽなのはどうしてか?」と駿河屋に聞いています。
「いるんなら持ってけ!」と返す駿河屋に、扇屋はこう切り出します。
「まだ続けんのかい、こんなくだらねえ喧嘩。片手間に本作るくらいいいじゃねえか」
こう言われると駿河屋は、息子が今日から八百屋をやると言われて許せるかと返す。
扇屋はどうして重三だけは駿河屋を出さないのか、継がせる心づもりかと核心を突いてきました。
目端が利いて知恵が回って度胸もある。何より自分でなんとかしなきゃと思う心根。手放したくねえわな……と扇屋は言います。
勝手に決めつけるなと反発する駿河屋。
扇屋はこのまま重三が戻って来なかったらどうするのかというと、親でも子でもねえ、吉原から追い出すだけだと駿河屋は言います。
とはいえ、女郎と同じで、吉原者の男はどうやって生きていけばいいんでしょう。
「それがらしくねえんだよ! 可愛さ余って憎さ百倍なんて、お前さん、まるで人みてえなこと言ってるよ。忘八のくせに。忘八なら忘八らしく、ひとつ損得ずくで頼むわ、なぁ」
そう言われ、動揺する駿河屋。
扇屋は店には置いた方がいいと『一目千本』を勧めてきます。なんでも面白いんだとか。
駿河屋はしばしたたずみ、本を手に取ります。
「一目千本、華すまひ」
花が相撲を取るという見立てが、冒頭で示されます。
「亀菊はわさびか」
ここから先は、女郎と花の対比が見えてきます。
亀菊は確かにツンツンしている。
志津山はくず。馴染みを複数作って髻を切られたりするんだとか。
ふじも大笑いしています。
なんでも常盤木は、日本三大毒草の「とりかぶと」。
腹上死があまりに多いんだとか。食らうと死んじまう、命懸けという意味です。
駿河屋夫妻はあまりに絶妙なたとえに大笑いしております。江戸前ブラックジョークだねえ。
ふじはよくここまで見立てたと感心しています。
誰よりもこの町を見ているんだ……とふじはしみじみ。
ここでじっと考え込む駿河屋。
高橋克実さんのしみじみとした横顔が印象的ですね。
吉原は千客万来になった
そして半月後――吉原は大賑わいを迎えていました。
蕎麦屋の半次郎も、人混みに驚いています。
馴染みになればあの本がもらえるのかとワクワクしながら歩いてゆく客たち。
ひまわりの女郎が気になる。くちなしの妓がみてえ。
そう話し合いながら、歩いていく男たち。
千客万来じゃねえか!
「やったね蔦重!」
「っしゃ〜、やったな、やったぞ〜!」
そう唐丸と喜びあう重三郎。
「わめいてんじゃねえよ、べらぼうが!」
駿河屋がぶん殴ってきました。そして、とっとと戻れ!と言ってくる。
「回ってねえだろ、義兄さんがよ」
「ああ……いいんですか」
何事もなかったようにいい、さらに駿河屋はこう言います。
「志津山のくず、最高だった。まあせいぜい、吉原のために気張ってくれ」
「へえ!ありがとうございます!」
頭を下げる重三郎。解決ですね。
ちょっと目頭にふれ、唐丸と戻る重三郎なのでした。
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