こちらは3ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【『べらぼう』感想あらすじレビュー第3回千客万来『一目千本』】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
入銀本に出資しねえか?
重三郎の「これしか中橋」計画が明かされます。
入銀本企画をデッチ上げる。
花の井を使い、平蔵からまとまった金を巻き上げる。
これをひとまず河岸に渡し、当面の困窮をどうにかする。
でっちあげた企画を女郎に話して「嘘から出たまこと」にする。
「花の井花魁は50両入れて本の頭を決めましたかね」
宣伝文句はこうだ。
「どうなんしょう。花の井のような床下手が頭って」
玉屋・座敷持花魁の志津山はわかりやすく敵意を燃やす。煽られやすいなぁ~。
桐壺屋・座敷持花魁の亀菊は、重三郎が話しかけてもスタスタと通りを歩いてゆく。
角か那屋・呼出花魁の常盤木はこうきた。
「また……腹の上で死ぬ男を増やせって?」
そうニッと唇をかすかに歪ませます。
四ツ目屋・座敷持花魁の勝山は、重三郎が話しかけても、もくもくと食事を続けております。
扇屋・呼出花魁の嬉野は、話を聞いているのか、いないのか、コロコロと笑うばかり。
「あ〜あ、おてんとさん」
そうノンビリと明るく言います。
角たま屋・呼出花魁の玉川は、話しかけても髪を結わせつつ、歌うばかりです。
こうして重三郎は、かなりの入銀を確保したのだとか。
駿河屋は本作りを許さない
その上で親父様たちに話を持っていく重三郎。
どういうわけか長谷川様発案の、配り本企画になっていますがね。長谷川様から聞いてねえと言われると、花魁と内々に話したと返す重三郎です。
女郎衆も乗り気で金も集まった。
そう示すと、大文字屋は「一文も出さなくていいのか!」とわかりやすい。
一同は乗り気です。
なんでも馴染み客からも配り物の本を作って欲しいと頼まれているのだとか。
蔦屋重三郎は『細見』も上出来だし、本を作るのに向いているんじゃないか?と、盛り上がっています。
ところが、茶を立てている駿河屋だけはどうにもおかしい。
抹茶ですね。『光る君へ』ではまひろが太宰府で飲んでいたこの飲み物は、高級路線を辿りつつ、日本に定着しております。
「そんなもん、鱗形屋に頼め! てめえは本屋なのか、あぁ? ちげえだろ。てめえの本分は茶屋だろうが!」
そうすごむ駿河屋。何をカッカきてんだ?
重三は別に茶屋を怠けてねえと親父殿たちは庇います。
「怠けてるったら次郎兵衛の方だよな」
そう大文字屋がいうと、その次郎兵衛はこうだ。
「そこだけは言うてもおくれな小夜嵐」
たちまち駿河屋から拳骨でぶん殴られ、鼻血を拭いています。弱っちぃバカボンだな!
駿河屋は、有無をいわせず重三郎を引きずり、階段から突き落とそうとします。吉原のためになることだと抗弁するも、全く聞く耳を持たない。
「うるせえ!」
そう蹴落とそうとすると、自分が階段から落ちてしまう駿河屋。女房のふじも驚いています。
裾から脚をはだけさせつつ、「出てけ、出てけ!」と重三郎を睨む駿河屋。
かくして重三郎は、育ての親から追い出されてしまうのでした。
誰もが手に取りたくなる絵師は誰だ?
河岸ではおにぎりを配り、女郎が食べています。
これも長谷川様の入銀のおかげですぜ。
重三郎は追い出されて、河岸で寝起きするしかないようです。
しかし黙って寝ているわけではなく、絵本の挿絵絵師を選ぶことにします。
唐丸は心配していますが、親父様の機嫌よりも河岸が食えることが大事だ!と重三郎。
吉原になんとしても客を呼び込むと言い切ります。
唐丸は、その本はお金を出した客にだけ配るものではないか?と疑念を呈します。
重三郎は、いっそ本に並ばないことを逆手に取ると言い出します。
本が欲しい! 手に入れてぇ! そう思っても本屋じゃ買えねえ!
手に入れる方法はただ一つ、吉原の馴染みになること――そんな本を目当てに吉原にくる客を取り込む。
コレクター魂を刺激する策を語り出します。大胆な発想の転換ではないですか。
けれども、そうなれば誰もが欲しがる本でなければならない。
重三郎はアイデアを練りだします。
「まあ、やってみるしかねえな」
「できる!蔦重ならできる。おいらそんな気がする!」
唐丸に励まされ、二人で絵師を選ぶわけですが、これはなかなか重要な場面になるかもしれません。
唐丸が絵師に興味を持ち、いつか蔦重と一緒に本を作る絵師になりたい――彼がそう思っているとすればどうでしょうか。
花に見立てて、性分まで表す
蔦屋重三郎が、絵師である北尾重政のもとを訪ねます。
絵師特有の筆の持ち方が見事な重政。
「また、どうして私に女郎の絵本を?」
重政はそう訝しんでいます。
「女郎の描き分けができるんじゃねえかと思った」
重三郎によると、今度の本への掲載を希望する女郎はなんと120名もいるそうで、重政も驚いています。
一人一人の顔を描き分けるのは、素人にも困難だとわかるでしょう。
そこで「北尾先生しかいない!」と重三郎も頼み込みにきたわけですが、重政も困惑しています。
礼金の問題ではなく、墨擦(すみずり・モノクロ)で人を描くと、似たような絵が延々と続くだけでおもしろくねえと丁寧に説明してくれるのです。
では、どうすべきか……。
重三郎が頭を抱えていると、重政は「見立て」るのはどうか?」と提案してきます。
「見立てることで女郎の性分も表しちまうわけか!」
重三郎が感心していると、ふと、花瓶に生けた花が目に飛び込んできました。これだ!
投げ入れ花を見て、近頃、流行っていると口にする重三郎にどんどんアイデアが湧いてきます。
「ツーンとしている女郎は山葵の花とか」
「夜冴えないのは、昼顔とか」
「おお、無口なのはくちなしか!」
「文ばかり書くかきつばた!」
そう盛り上がり出す重三郎と重政です。おぅ、いいもんになりそうじゃねえか!
かくして本の製作が進められてゆきます。
アダチ版画研究所より本物の職人が出演。
「あっ、大文字屋の大山花魁は気高い姐さんなんで、品よくお願えします」
「おう」
「ああ、とべらの白玉花魁は枝が大事なんですよ、枝が」
「そんなに?」
彫り師もにんまりとしつつ、そう聞き返しています。
この版画の再現は胸がいっぱいになってしまいました。なんて精密で美しいのでしょう。まさしく眼福です。
※続きは【次のページへ】をclick!