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【『べらぼう』感想あらすじレビュー第14回蔦重瀬川夫婦道中】
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エレキテルは効かない? 源内がおかしい?
エレキテルが気になったのか。
蔦重が源内のもとへ出向くと、大荒れでした。
なんでも弥七というふてぇ野郎が、エレキテルの図面を盗み、複製品を安価で販売したとか。その品が悪い信用を落としたそうです。
ここで浮上してくるのが、新之助のありがたみですね。
新さんは誠実で真面目なので、そういうことはしなかった。
誠実さがありがたいとわかるのは、往々にして不誠実な後任者がなんかやらかしたときなんですわ。
源内は、弥七を相手に訴訟の準備中です。
これが今回のポイントで、訴訟や法が何度か出てきますね。
それでも、蔦重は気になっています。
いねがうつせみの身代金として持ってきたものは本物、源内が作ったものです。
そこでそっと「弥七の品が悪いから効かないのか?」と念押ししますが……苛立つ源内は、弥七のせいだ!と強く断言しました。
こりゃ相当危ういですね。
エンジニア気質なら文句を言う前に検証すべきはずなのに、頭に血が昇って怒りを別の方向へ押しやっていて、本質的な問題解決に向かうことができません。
めぐる恨みが瀬川を襲う
松葉屋に戻り、その懸念を瀬川に話す蔦重。
瀬川もその辺の危うさを見抜いていて、カッカきているから認められないだけだと忠告します。
二人は相性抜群で、ちゃんと根拠あるアドバイスをしてくれるのがいいですね。
すると瀬川が瀬川本にクレームをつけます。
検校が工藤祐経で、お付きの手下が曽我兄弟なんだそうです。
工藤祐経と曽我兄弟いえば『鎌倉殿の13人』に出ていましたが、これも重要かもしれねえ。

曽我兄弟/wikipediaより引用
というのも曽我ものが人気だから設定を流用したというツッコミではあるんですが、『鎌倉殿の13人』を思い出してみてください。
坂東武者ときたら、何かあるとすぐ暴力で解決しようとする。
あの価値観なら、源内先生は弥七の首をとっていても不思議はないわけで、それが訴訟となる流れに人類の進化を感じさせてくれます。
瀬川のツッコミに対し、蔦重はおしどりが侍に化けて助けるのは『塩売文太』そのまんまだと言います。
そして瀬川を取り合って高田馬場で戦う。ああ、仇討ちで有名な場所さ。ストーリーの安直さに蔦重は呆れています。
そんな幸せそうな二人をじっと見つめるのが、病み上がりの松崎。
瀬川がそのもとへ看病に向かうと、突如として袖を掴まれました。
「覚悟!」
包丁をかざし、振りかぶります。
蔦重は駿河屋から証人になってもらえるとの返答をもらい、喜んでいました。ただし条件が……。
「その店に瀬川花魁置いた日にゃ、俺ゃすぐさま降りるぜ」
蔦重は困惑しつつ、吉原に累が及ぶとは聞いたけれど、片がついたはずだと主張します。
いつもは無口なふじがさらにこう続けます。
「重三。世の中にゃ、検校を腹の底から憎んでる人だっていんだよ。座頭金で家が潰されたり、親が首くくっちまったり。そんな人たちは妻だった花魁が楽しそうに本売ってるの許せないと思ったりしないかね」
瀬川のことまで恨むのかと困惑する蔦重。
これも源内と同じですね。人一倍、風を読むことに長けた蔦重なのに、それができなくなってら。これが恋ってやつか。
するとそこへ、瀬川花魁が刃傷沙汰に巻き込まれた急報が松葉屋から知らされてきます。
犠牲にされた女たち
いねが松崎に水を浴びせながら折檻しています。
大事はなかったし、病み上がりだからとそれを止めに入る瀬川。
「さぞ気分がよかろうな。私を憐れみ、助けるのは。父上と母上は金につまって自害された! お前の夫のせいじゃ! 私はお前らのせいでかようなところに身を落とされたのじゃ!」
武士の娘らしい凛とした口調で瀬川を罵る松崎。
「……それを言うなら、わっちが売られてきたのは、お武家さんのせいでありんすよ。きつい年貢に耐え切れず、親はわっちを売りんした。百姓の娘と旗本のお姫様を同じにするなという話もありんしょう。けんど恨みは恨み。恨みの因果を巡らせても、切りがありんせんのでは?」
傷ついた頬で、そう反論する瀬川。社会の歪みが立場の弱い女性にふりかかる構造が見てとれます。
現代社会で、こうした問題もどこまで改善されたのやら。
世の中が不景気になって悪くなれば、老若男女が苦しみますが、とりわけその歪みが女性に向かいやすいとも言われています。コロナ禍においても、若年女性の自殺増加が顕著であったと統計が出ていました。
そこへ蔦重がやってきます。
瀬川の怪我を確認すると、右腕と右頬だけで済んでいる。傷跡が残らないか気にする蔦重に、いねは大袈裟だと言います。
どうして瀬川のいるところに座頭金がらみの訳ありを送り込んだのか!と、いねに抗議する蔦重。
私のせいか!と反論するいねに対し、大見世の女将にしちゃ迂闊だとさらに詰め寄ります。
瀬川は別に鳥山検校の客ではなく、八つ当たりだと言います。
その上で彼女は、恨まれている人が大勢いることを痛感させられており、振る舞いに気をつけるしかありません。
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