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蔦重と意次に降りかかる治済の悪意はこれからが本番『べらぼう』中盤の見どころ考察

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『べらぼう』中盤の見どころ考察
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一橋治済の操る糸が見える「平賀源内」の死

平賀源内は、蔦屋重三郎の人生を導く人物でした。

書物の仕事を引き受けたのみならず、生きる道標となった人物といえます。

なによりも「耕書堂」の名を授けてくれた――ただ単に本を売って儲けるだけでなく、「書を以て世を耕す」道を示した偉大なる人物でした。

平賀源内/wikipediaより引用

田沼意次にとってもそうです。

劇中で二人が口論になったように、平賀源内のアイデアを田沼意次が政治に反映させたとは言い難い状況があります。

史実でも源内は、何をしても一流になれないと悩んでいました。彼のアイデアは当時実現するには、スケールや技術の進歩が追いついていないという問題点があったのです。

それを補うためか。『べらぼう』はフィクションの範囲内で設定を変えている点があります。

田沼意次が蝦夷地開発の可能性に気付いたのは、工藤平助の提言によるとされます。

これよりも先に、平賀源内がこのことを持ち出しているのです。

家基の死を調べていた意次は、この件についてじっくりと話し合うことはできませんでした。

しかし、第二章で蝦夷地の話が出た際に、平賀源内のことを思い出すとすれば、実に意義深いこととなるでしょう。

さらに遡ると、源内と意次は「開国すればよい」と語り合う場面がありました。あの開国は、蝦夷地でロシアに対して行うことの伏線だと考えることができる。

源内の功績と意次との関係をフィクションにできる範囲で丁寧に底上げする秀逸な描写の数々です。

平賀源内がどこかおかしくなってゆく前から、去ったあとのことまで考えて種は丁寧に蒔かれておりました。

その伏線は、よいものだけでもありません。

彼の死を悼んだ杉田玄白は「非常の人だからといって、非常の死を遂げることはないだろう」と嘆いていました。

その「非常の死」と一橋治済を絡ませたことが、実に重要な伏線となっております。

徳川家基謀殺疑惑の首謀者として名が上がるのは、田沼意次と、その死による最大の受益者となった一橋治済です。

徳川治済(一橋治済)/wikipediaより引用

さらにここに、その謀殺を調べ真相を掴みかけていた平賀源内と、その死を絡ませることで、より複雑な伏線が形成されている。

平賀源内は死の直前、蔦重の依頼で「治済が家基謀殺の犯人だ」と告発する作品を書いておりました。

蔦重と源内が打ち合わせをして、プロットを語り合っていたのではないかと疑念を抱いてもおかしくはありません。

そんな蔦重は、須原屋市兵衛らと共に田沼意次の元へ向かい、源内の殺人容疑を再調査するよう求めました。

なんとも厄介な!

治済の立場になってみると、目障りな蚊を潰したと思ったら、さらに湧いてきたような状況といえます。

源内を始末したとはいえ、この目障りな本屋どもを消していくとなれば、いくら治済でも少々骨が折れることは確かです。

源内の死にせよ、工作はなかなか凝ったものでした。

たかが町人といえど、立て続けに始末するわけにもいきません。

このことが、第二章以降の伏線として絡んできます。

一橋治済が“黒幕”なり、“ラスボス”として君臨すると示されているように思えるのです。

 


「松平定信」はただの悪人とはならない

蔦屋重三郎、須原屋市兵衛、恋川春町など。

出版業に関わる者たちを苦しめる悪役として、田沼意次の後任者となる松平定信が予測されます。

松平定信/wikipediaより引用

ただ、この定信はどうにも「ただの憎たらしく堅苦しい人物にならないのでは?」と思えます。

彼が『金々先生栄花夢』を興味津々で読む場面がありました。

白河藩とその領民からすれば明君であり、そう簡単に悪党呼ばわりできない人物でもあります。

そんな本作らしい複雑な人物像を描く上で、重要な役割を果たすのが一橋治済でしょう。

『べらぼう』の特徴として、蔦重と政治の絡ませ方があります。

第1回の時点で、蔦重と田沼意次が面会を果たし、「ありがた山」として意次の記憶に残された。

田沼意次/wikipediaより引用

この関係は源内の死で途絶えたようで、予告を見ると意知と蔦重がまた関わることがうかがえます。

田沼意次に重宝されている長谷川平蔵も蔦重と見知った顔であり、ここでも糸が繋がる可能性がある。

田沼と蔦重の関係はプラスかもしれません。

しかし、マイナスどころか大災厄、凶兆そのものといえるのが一橋治済となる――それは源内の死により示されています。

書店や作家に対し、直接手を下すのは、たしかに松平定信となるでしょう。

そうはいっても、特定の誰かが目をつけた連中ばかりが酷い目に遭いすぎじゃねえか?

視聴者はそう感じることになるのでは? 定信の背後に立ち、傀儡師として彼を操る一橋治済の姿が、第二章以降も見られるはず。

定信の悪どさは薄まる一方で治済は奸悪極まりない人物となる。

こうなると史実の治済に対して気の毒に思えるかもしれませんが……彼の場合、政治的功績はないどころか妨害ばかりしており、当時から心ある人に批判されており、特に問題はないと思われます。

 


実はここからが本番だ

『べらぼう』は序盤からフルスロットルで飛ばしてきて、第14回から第16回にかけては怒涛の展開に思えた方も多いでしょう。

しかし、蔦重にせよ、田沼意次にせよ、フルスロットルとなるのはこのあと、天明年間以降です。

あそこまで盛り上げておいてまだ本気を出していないのか……とあらためて驚かされる。

ドラマとして見ても、未回収の伏線はまだまだあります。

あれほど蔦重を毛嫌いしていた鶴屋が、どうやって【地本問屋】として認めるのか?

鱗形屋孫兵衛はどうなるのか? 蔦重を嫌う孫兵衛の二男・万次郎はどう成長してゆくのか?

次郎兵衛は真面目になるのか?

足抜けに成功した新之助とうつせみは、どこでどう過ごしているのか?

合戦や謀殺がなくとも十分おもしろいと見せつけてくる2025年の大河ドラマ『べらぼう』。

第二章以降も、まだまだ盛り上がっていくことでしょう。


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文:武者震之助note

【参考】
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