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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第9回「遠くの国」】
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もう“三郎”とは呼べない
そこへ、まひろが引っ立てられてきました。
道長がハッとして、知り合いだから預かると言い、盗賊ですよと反論されると、威厳を持ってこう言います。
「控えよ」
まひろは獄中の直秀を見てハッとしながらも、道長の馬に乗せられてその場を去り、百舌彦と乙丸が慌てて背後からついてきます。
もしもこのタイミングでまひろが来なかったら、道長ももっと慎重になれたのかもしれません。
二人だけになると、まひろは道長に問いかけます。
なぜ直秀を検非違使に引き渡したのか。直秀は都を出ていくつもりだった。山を越えて海の見える遠い国へ行くつもりだった。
なのに、どうして?
そう問われて道長は「東三条には武者がいる」と答えます。彼らの前で盗賊を許してしまっては示しがつかない。何をするのかわからない。
道長の意識は真っ当だったのではないでしょうか。
武者を甘く見ると、どうなってしまう?という苦渋の展開を『鎌倉殿の13人』の慈円などは目の当たりにして嘆いています。道長は、武者が暴力装置であると理解できていいるのでしょう。
まひろが、信用のできない男たちを右大臣家は雇っているのか?と問いかけると、道長はうんざりりしたように言います。
「信用できるものは誰もおらん。親兄弟とて同じだ。まひろのことは信頼している。直秀も」
「盗賊だと、わかっても?」
そう問われると、道長は“直秀が通す筋”を理解します。
彼らが狙うのは貴族だというところに一貫性がある。
その点、信頼できるとはいえ、まひろが直秀の処置を心配していると、間もなく放免されると道長が見通しを語ります。それは右大臣家の三郎君が命じたから?
すると道長は、命じたのではなく、心づけを渡したと打ち明ける。
さらには直秀は借りなど作りたくないだろうと続けると、まひろは知ればきっとありがたがると返します。
結果を知ることはないと言いつつ、獄を出れば遠い国へ流されるはずだと道長。直秀の望む通り、海の見える国だとよいが……。
「そうね、海の見える国」
海を知らぬ二人。潮の音が聞こえてくるようです。
そしてまひろはようやく「道長様」と助けてくれた礼を告げます。
「三郎でよい」
「長様としか呼べない。三郎君ならよいかも」
「三郎でよい」
「無理、やっぱり無理よ」
直秀のことを話している。潮の音が聞こえる。そしてまひろと道長の距離は、広がっていくような不思議な場面です。
波が寄せては離れていくような……水鳥の姿も映ります。
もしもこの二人が水鳥ならば、思ったまま身を寄せ合えばよい。
しかし人はそうはできない、甘いようでどこか苦い二人。
「姫様そろそろ戻らねば、お父上が……」
乙丸がそう告げ、送っていくと言う道長に対し、まひろは「ご無用です」とそっけない。
土御門の近くに自宅がある。あのお屋敷の方に見られたら色々と言われたら断る。
「何を言われるというのだ」
そう困惑する道長に対し、やはり距離を空けてきている。まひろは、倫子の道長への恋心を知っているのです。
帰り道、道長は大勢の人が座り込んでいるところを見かけます。
百舌彦が調べると、なんでも散楽一座の釈放を願っているとのこと。盗んだ品による施しを受けていた者たちが、無事を祈っていました。
惟規、勉学に励む?
まひろは帰宅して驚いています。
あの弟が書を読んでる!
「俺だって字くらい読めるんだよ」と返す藤原惟規。
とはいえ、ごろ寝しながら、だらしない読み方ですね。
当時の所作は厳密ではなく、時代がくだると書見台も出てきます。
むろん、意識の高い藤原公任あたりであれば、もっとちゃんとした姿勢で読んでいると推察できます。
勉強嫌いを公言する惟規はこんなものなのでしょう。
紫式部の弟・藤原惟規は実際どれほど出世できたのか モテる男だったのか?
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それでも、惟規が大学に入ると感心しているまひろ。
寄宿学校のような【大学寮】です。しんみりするなんて姉上らしくもないと惟規は笑っています。
父の藤原為時は高倉の女のところに出かけたと、いとが告げてきて、反応に困る姉と弟。
ここでは、いとにも注目したいところ。
彼女は使用人というだけでもなく、ちやはの死後、実質的に為時の妻のような役割を果たしていたと推察できます。
ゆえに内心は複雑なのでしょう。
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