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『光る君へ』感想あらすじレビュー第9回「遠くの国」

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第9回「遠くの国」
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世を正すことはできるのか

藤原為時の家では、藤原惟規が大学入学を前にして挨拶。

父の顔を潰さぬよう努めると決意を告げます。

乳母のいとは泣いています。今生の別れではないし、休みの日は帰ってくるとまひろが告げても彼女の涙は止まらない。赤子のころから片時も離れたことがないそうです。

一念通天(いちねんつうてん)

『周易参同契』より

ひたむきに一つのことを思いつつければ、天に通じるということ。

率先垂範(そっせんすいはん)

『史記』、『宋書』より

人の先頭に立ち、模範を示すこと。

温故知新(おんこちしん)

『論語』より

過去に学んだことをもう一度復習して、新たな意味を見出すこと。

独学孤陋(どくがくころう)

『礼記』より

人と接することなく学んでいると、意見が偏ってしまう。現代ならばエコーチェンバーか。

さて、惟規は理解できたのか?

というと、一つだけわかったそうで、為時は情けないと嘆くしかない。今日から本気出すと返す惟規。典型的なダメな言い訳ですね。

それでも為時は励まします。

「しっかり学んで、見違えるように成長せよ」

「はい! 行ってまいります」

と、晴れやかに出立するも、為時は心配で仕方ないようです。まひろがなんとかなると励ますと、お決まりのことを言い出します。

「おまえが男であったらと今も思うた」

まひろも同意します。この頃そう思うようになったと。男であったら勉学に励み、大学で学び、内裏に上がり、世を正す。そう決意を語るのです。

「ほう……」

そう感心する父に、まひろは返します。

「言いすぎました」

そう笑うまひろでした。

 

MVP:まひろと道長

今週のMVPは直秀――と言いたいところですが、今回の彼は自分の意思でしたことはあまりない。

彼は身分制の矛盾を突きつけた回が、問題提起としてあった。

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そして終わりを迎えました。

みなさん悲しくてたまらないと思いますが、この退場によって彼は完璧な像になったと思います。

歴史の教科書に、直秀みたいな人物は出てきません。彼らは歴史の狭間に落ちて散って消えて、どこに骨があるかすらわかりません。

では無駄に生きていたのか?というと、そんなはずはない。

彼らの生きた時間を思い、涙を流すことで、弔うことができます。歴史を学ぶ意義が芽生えます。

【正史】に対する【稗史】は重要です。

日本ではフィクションでも【正史】が強くなり、【稗史】が弱いということは指摘されています。

大河ドラマにせよ、かつて架空主人公の作品もありましたが、いつしか消え、稗史目線のために出した人物は「オリキャラ」「邪魔だ」と罵倒されてしまうこともある。

『麒麟がくる』の駒、東庵、伊呂波太夫が罵倒されているファンダムを見て、私はそういう稗史軽視に危惧を覚えていました。

あの作品はなんとなく気に触る要素があるけれども、そこを指摘できないモヤモヤ感が、稗史目線人物にぶつけられていたとは推察できるのですが。

ともあれ今年は『鎌倉殿の13人』の善児とトウに続き、そうした懸念を払拭しそうで安堵しています。

稗史の人物は、正史側の鏡を果たすこともある。

直秀という鏡に映ったまひろと道長は、純粋なようで、何か亀裂が入るような不吉さも感じさせます。

まひろは、道長との恋はもう決着がつきつつある。源倫子と結ばれるという路線だと納得させつつあった。

道長はまひろほど大人になれない。ふわふわした恋に包まれている。

それもそろそろ時間切れだったところで、直秀が屍となってしまった。

道長は己の迂闊さを悔やみ、泣く。けれども彼は、同じような甘っちょろい過ちはしないという方向へ向かうようにも思えます。

一方でまひろは、直秀から鴻鵠の志を受け取ってしまったように思えます。

世を変える――そう思ったからこそ、女であるという壁に激突します。大学に行けないじゃないか……と。

隣に並んで座っているけれど、見ている方向は違う。そんな状況がますます決定的になったように思えます。

そしてここで大きな謎かけがされます。

『麒麟がくる』の明智光秀織田信長も、志が違って本能寺という結末に向かってしまった。

『鎌倉殿の13人』だって、あんなに仲が良かった北条義時北条政子が、最終回でむごい決裂を迎えてしまう。

今年はこうした関係性をさらに突き詰めてきます。

まひろの「世を正す」思いはどこを見ればわかるのか?

まひろと道長は、どう決裂し、対峙するのか?

盛り上がってきました。

戦があるかないか、それはどうでもよいのです。人が人として生きる上での心の動き。これをきちんと描けば盛り上がります。

 

直秀ロスは理解できるが……それどころじゃないかもしれない

ただし、いつまで直秀ロスでいられるかどうか――それが本作の恐ろしいところです。

平安時代なので、今後、割とあっさりとロスを連発しそうな疫病の発生もあります。

それだけでなく、新たな人物を補給することが確定しています。

藤原為時がたどたどしい中国語を話す一方、越前には中国語の発音がバッチリできる朱仁聡周明が漂着。

朱仁聡を演じる浩歌さんは中国語がペラペラです。

そして周明は、松下洸平さんです。

このドラマのスタッフは、彼がブレイクした『スカーレット』から続投している人が多いとのこと。

となれば、相当火力が高い周明になることでしょう。期待しましょう!

そして最後にお礼です。

私も漢籍関係で間違ったことを書き、ご指摘を受け修正しました。

全くもって情けないと思うとともに、独学孤陋とはこのことかと痛感しています。

マウントを取ったり勝ち誇るのではなく、様々な意見を聞いて学ばねばならない。

今年の大河ドラマはそう感じさせるので、秀逸だと思います。

実資のようにクワッと目を見開いて主張したいのですが、学びがない大河ドラマはやはり間違っていると思います。

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文:武者震之助note

【参考】
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