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『光る君へ』感想あらすじレビュー第16回「華の影」

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第16回「華の影」
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徳のある統治をせねば国は滅びる

都で疫病が流行り、多くの患者や被害者が出ている――その噂を耳にした帝は胸を痛めていました。

そして道隆に唐の『貞観政要』のことを言い出します。

隋の煬帝が国を滅ぼしたのは、兵の備えを怠ったからではなく、民を疎かにし、徳による政をしなかったからだ。朕はそのようになりとうない。

忠臣としての働きを頼むと伝えると、道隆は「お任せくださいませ」と平然と言いますが、果たしてそんな気はあるのかどうか。

お上はあれこれご案じなさらず、中宮様と仲睦まじく生きて欲しい、皇子をもうけることこそが国家繁栄の礎であると言っています。

そしてこの疫病の最中、道隆は伊周を内大臣に据えたのでした。

『貞観政要』が出ましたね。

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『鎌倉殿の13人』では北条泰時が読んでいたこの漢籍。

帝が政治の指針として持ち出すことで、先ほどの「香炉峰の雪」の場面に別の意味合いが浮かぶようにも思えてきます。

白居易があの詩を詠んだとき、「左遷されて地方にいた」という背景があります。

彼は官僚であり、どうすればよい政治ができるか考えていて、それが作品にも反映されている。

そんな作者の意図を無視して、ただのアクセサリのように用いる、ファッション的漢籍教養はいかがなものか?

上っ面だけ理解して、教養をひけらかし、一体何なのか?

そんな苦いものがジワジワと浮かんでくるようにも思えます。

紫式部は『紫式部日記』で清少納言の教養なぞ上っ面だけだと批判しました。

なぜ彼女はそこまで手厳しいことを記したのか?諸説あります。

本作では、思想を読み解かず、教養をファッション扱いする姿勢への批判性がすでに出てきているように思えるのです。

これは私も感じているところではあります。

平安貴族にとって人気ナンバーワンとも言える作品が白居易の『長恨歌』でしょう。

しかし、この作品の背景となる玄宗の楊貴妃への熱愛が持っていた危険性を、どれだけ真剣に考えていたのか。

悲恋の背景としてだけでなく、政治的危機をどう考えていたのか。

あるいはこの悲劇をもたらした安禄山の危険性をどう考えていたのか。

安禄山のように強固な武力を有した家臣が牙を剥けば危険であり、それを抑え込むことをどこまで検討していたのかどうか。

女性の政治権限については抑えるどころか、むしろ女院という強化をしてしまう中関白家。

さらに後世では、武官の危険性をふまえていないからこそ、武士の台頭につながってゆく。

――漢籍の思想を政治に生かせるようになってゆくのは、もっと時代がくだってからのようです。

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そんな伊周に苦言を呈するのは藤原道兼

叔父である道兼と会うのは何年かぶりだと応対する伊周。

伊周は疫病対策は父がしているといい、貧しい者が罹るだけで我々には関係ないと言ってのけます。

「そのような考えで内大臣が務まるとも思わぬ」

道兼が手厳しく言うも、反対に伊周は「叔父上は何かよいことをなさったのか、このまま何もなさらないのも悪くない」と煽り返してくる。

以前の道兼ならば「花山院出家の謀略は俺あってのことだ!」とでも言いそうですが、自暴自棄となった時期を経て、彼もようやく成熟したのでしょう。

甥っ子相手にムキになるわけでもありません。

 

悲田院は地獄と化した

まひろが乙彦に「さわは文を受け取ったのか?」と尋ねています。

どうやらまた返されたようで……沈んでいると、文字を教えていたあの少女・たねが入ってきました。

“とと”と“かか”が帰ってこないのだとか。

聞けば、昨日、悲田院に行ったそうです。熱があり、薬草をもらいに行ったのだとか。

疫病の者がいると止める乙彦に構わず、まひろはたねを連れて悲田院へ向かうことにしました。

そこは一面、地獄でした。

病人と屍が横たわり、子どもが水を求めている。

と、たねは両親の姿を見つけ泣き出しました。すでに死亡している様子。

そして薬師が入ってきて、冷たく言い放ちます。

「生きている者は手をあげよ、死んだ者は運び出す」

親の遺骸に泣きつくたねは、邪魔だと言われてはねのけられ、ぐったりとしてしまいます。

まひろは、たねの看病を始めました。

「あめ、つち……」

そう呟くたね。

「あめ、つち、ほし、そら、やま、かは、みね……」

後に続くまひろ。

たねはまひろに教えてもらった字を思い出しつつ、短い生涯を終えてしまったようです。

乙彦がそろそろ戻ろうと告げるものの、まひろは動きません。

別の患者の看病を始めるのです。

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