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『光る君へ』感想あらすじレビュー第16回「華の影」

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第16回「華の影」
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疫病に対してあまりに無策

道長は道隆に疫病対策を進言します。

このままでは貴族も罹る、内裏に入り込んだらどうするのか?

そう迫っても、道隆は取り付く島もなく、そんなことは起きぬと返すのみ。

疫病対策を陣定(じんのさだめ)ですべきだ!と道長が食い下がっても、道隆は疫病などより相次ぐ放火が大事だと言い放つのです。

更には「中宮大夫である道長こそどうするつもりだ!」と逆に迫ります。職務怠慢というわけです。

道隆は視野が狭窄しています。

放火犯は自分たちに悪意を持つ貴族の仕業だと思っている。

疫病対策をしないことに怒った庶民が犯人である可能性については、想像すらできていない様子。

これは道隆一人の問題でもないかもしれません。

では、いつになったら疫病対策ができるの?ということを大河ドラマからヒントを見出してみましょう。

『麒麟がくる』では、望月東庵と駒という医者師弟が出てきました。

東庵は、実在した曲直瀬道三がモデルと推察できます。

なぜ曲直瀬道三本人を登場させなかったのかというと、東庵と駒は庶民救済のために医術を使う設定だからということもあるのでしょう。

庶民救済のシンボルが、駒の作る芳仁丸という安価な薬でした。今の基準でいえば、せいぜい薬草を練った程度のものと思われます。

とはいえ、あの時代ならば十分最新鋭です。

ああいう薬を民衆にまで到達させるとなると、江戸時代が転換点となります。

徳川綱吉は【生類憐れみの令】により、「病人を家から追い出すようなこと」を禁じました。犬を助けるだけの法令ではありません。

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そして2023年の実質大河ドラマともいえる『大奥』では、吉宗時代の医療改革が描かれています。

作品オリジナルの赤面疱瘡対策として描かれましたが、史実においても吉宗は医療を大きく進歩させます。

医療を向上させるのであれば、まず国のシステムを変えることが重要。

そのため吉宗は、各地で薬草栽培を奨励し、簡単な薬ならば民衆が自ら調合できるようにしたのです。

現代人からすれば素朴なようで、当時とすれば画期的です。

病気になったらなす術なく、死を待つか、祈祷でもするしかない状態と比較すれば、薬草を煎じて飲むだけでも大幅な進歩と言えるでしょう。

病は気からと言います。気力が尽きたら命も縮む。ほったらかしにされるのではなく、薬を口にできるだけで助かる命はあるのです。

中でも朝鮮人参栽培は重要です。

先日、日本の漢方は中国の技術を盗んだものだという意見が現地にはあると、中国の方から聞きました。

酷い言い分だ!……と反論したいようで、一理あるとも思えました。

朝鮮人参を含む栄養ドリンクは今日でも高級ですよね。ましてや昔は最高級品です。しかも朝鮮や中国からの輸入頼りです。

吉宗時代となると輸入による金銀流出が深刻な問題でした。輸入頼りの高級薬剤を国産にしたら大幅な財政改善が見込めます。

とはいえ、輸出する側からすれば目玉商品をそうさせるわけにもいかない。

そこで朝鮮と交易する対馬藩が、こっそり朝鮮人参の種を盗んだという説もありまして。

このあたりは来年の『べらぼう』にも関わりかねない話ですので、予習しておくとよいかもしれませんね。脚本の森下佳子さんは医療描写が盤石ですので、是非とも見たいところです。

平安時代からだいぶ話が飛んですみません。

平安時代の疫病対策に話を戻しますと、打つ手があまりに乏しいことは確かです。

落語には「葛根湯医者」というスラングが出てきます。どんな病だろうと葛根湯しか処方しないヤブ医者という意味です。

しかし、平安時代ですと、この葛根湯すら手に入らない。

それこそ健康マニアで上級貴族の藤原実資クラスの人物が、太宰府に来ている唐人医経由で手に入れるといった手段しか考えられません。

江戸っ子なら当たり前に口にできる薬が、平安時代は一部エリートだけのものだと考えると、医療やインフラの進歩がわかりやすくなると思います。

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まひろよ、逝くな、戻ってこい

藤原道兼が弟の藤原道長を呼び止め、なぜそんな顔をしているのかと聞いています。

悲田院に行くと返事をすると、道兼が止める。

「都の様子は俺が見てくる。汚れ仕事は俺の役目だ」

そう言い切る道兼よ……嗚呼、こんなに格好いい男だったのかと惚れ惚れしてしまいそうです。

人生の苦さや転落も知ったからこその悟りがある。まさか道兼に心を打たれる日が来るとは。

かくして道兼は悲田院にきますが、道長もついてきていました。「私は死ぬ気がしない」と強気です。

「相変わらず間抜けな奴だ」

道兼はそう言いながら、兄弟で中を見回ります。

二人の視界に入らないところでは、まひろが看病を続けながらも咳き込んでしまい、乙丸が帰宅を促します。

薬師が、道兼と道長に手伝うように言います。仲間が倒れて人手が足りないのだとか。

内裏に言ったらどうだ?と道兼が言うと、薬師は諦めたように、申し出たが何もしないと素っ気なく返します。

「なんと!」と驚く道兼。

一方、道長は、よろめいて倒れてきたまひろとぶつかります。

「まひろ! まひろ! しっかりいたせ、まひろ!」

抱き寄せ、馬に乗せて悲田院を出る道長。そして「お姫様抱っこ」をして、家の中に運び入れるのでした。

いとは呆然として、道長様とは何者なのかと戸惑うばかり。

道長は、まひろが疫病かもしれないから私が看病すると藤原為時に告げます。

大納言様にさせるわけにはいかないと恐縮する為時に、「私のことはよい!」と強く言い切る道長。

いとはますます困惑し、二人の関係は何なのかと問い詰めます。なんせ、あのお姫様だっこですからね。

「久しいのう……なぜあそこにいた」

道長はまひろの看病をしながら、心の声で語りかけます。

生まれてきた意味は見つかったのか?――逝くな、戻ってこい。

確かにこれはソウルメイトとしか言いようがない。ものすごく甘ったるいようで苦い。

道綱の言葉で、まひろのことを思い出してしまった。そしてよりにもよってこう再会するとは。

恋したとか、もはやそういうことではなくて、もう人生の一部になってしまった。

まひろを失うことは手足を引きちぎられるようなものかもしれない。まさにこれこそソウルメイト。魂がつながった相手なのだと思います。

そんな相手が消えてしまわないように看病する道長の姿も、看病されるまひろの姿も、神々しさすら感じさせます。

乙丸と百舌彦が並んで座って待っていると、朝が来ました。

道長が一息ついていると、為時が近づいてきました。そして一晩中看護してくれたことに感謝しながら、大納言には朝廷で果たす役目があるのだから、お帰りくださいと頼みます。

道長も素直に受け入れ、彼は自宅へ戻りました。

夫を出迎えた源倫子赤染衛門が「昨夜は高松殿(つまり明子)の元にいたのか?」、ご無礼いたしたというと、倫子が「衛門」と声をかけます。

「殿様、昨夜は高松殿ではないと思うの。殿のお心には、私ではない、明子様ではない、もう一人の誰かがいるわ。ふふふ、おほほほほ……」

不敵にも見える表情で笑う倫子。

彼女は小麻呂を抱いています。私は退場したのかと思っておりました。長寿猫ですね。

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小麻呂は、道長の妻になる前の倫子にとっての支えでした。

それが再登場とはどういうことなのか?

まひろとは知らず、夫の心の中にいる女性の存在に気づいてしまった倫子。

源氏物語』の紫の上は、光源氏が別の愛する女性がいることに気づいていたことでしょう。

通う相手ではなく、心の奥にいる永遠の女性、藤壺です。

それが誰でどういう関係かまではわからないけれど察知できてしまう。

倫子もそうなってしまうのでしょうか。

猫といえば、今後は一条天皇の御猫が登場します。期待しましょう!

まひろは、道長の声が「まひろ、まひろ」と呼ぶ声が心に響いてきて、目を覚ましたのでした。

 


MVP:たね

『麒麟がくる』では、駒の薬を売っていた少年が殺害される場面がありました。

あのシーンに対しては「こんなものは見たくない」という批判があったものです。

乱世の厳しさを表す秀逸な場面だと私は思ったものですが、それだけでなく東庵や駒の民を救う思想も理解されず、「バカw」だの「ファンタジーw」だの罵倒されていました。

もしもNHK大河チームがそんな声を真剣に受け止めていたら、たねや、たねを救おうとするまひろはなかったことでしょう。そうならなくてよかったと思います。

歴史は史書に名を残す人物だけが紡いできたものではありません。

たねのように幼くして命を落とし、字も書けない人は消えてしまいます。

そんな消えた存在に光を当て、歴史を学ぶ意義を再確認させてくれるたねは重要でした。

今回は理想の政治についても語られました。

道隆に代表される中関白家は、庶民のことなど目に入らない。関係ないと考えている。

そういう人々が優美に過ごす前半が光だとすれば、たねが命を落とす後半は影でした。

疫病に苦しむ庶民を描くことは、何もまひろと道長がロマンチックな再会を果たすだけの意味があるわけではありません。

当時の社会矛盾。

清少納言紫式部の対比。

思想を持つ者と、そうではない者。

そんな対比を際立たせたのです。


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文:武者震之助note

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