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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第33回「式部誕生」】
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ギャンブラーとなった道長
お手玉を受け取った中宮は、わざと遠くへの放り投げ、女房たちが気を取られている隙に、そっと隠していたお菓子を敦康親王に与え、微笑むとこういいました。
「ないしょ」
そうつぶやく中宮の姿をまひろは見逃しません。
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さて、そんな敦康親王の担当者が藤原行成でした。
敦康親王にかかる生活費の予算を道長に示すと「親王家別当の行成が言うならばよい」とすぐに通されます。
その上で中宮と親王の仲はどうだ?と尋ねます。
親王は中宮を慕っていると答える行成に対し、道長は、さらに伊周が藤壺を訪ねてくることはないのかと探りをいれています。
伊周は目立つことを控えている。洞察力の鋭い、間諜適性のある行成です。
それでも道長としては、伊周の復帰は敦康親王後見を見据えてのことだと油断できません。
中宮に子ができなければ、伊周の力は大きくなるかもしれない。気を抜けないと考えてはいるけれど、自分からは積極的に動かず、行成に調べさせる。
こうしたところが、亡き兄である道隆とその子である伊周との違いでしょうか。
あの二人は「子を産め! 子を産め!」と定子に迫っていたものです。
道長が好きで仕方ない行成は、親王様はこれからも伊周の手に渡すようなことはないと言い切りました。
「この身を賭して、お守りします!」
「頼んだぞ」
なかなか情熱的な行成です。
明子といい、道長はこういう迫ってくる愛にはそっけないんですよね。
今後、まひろに用意した高級文房四宝を、行成には贈るかどうか。
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行成の作品は現在まで国宝としても残されておりますが、晩年にならないと最高級の紙を使えてないようです。
「リモートワークじゃダメですか?」「出勤しなさい!」
行成との密談の後、まひろがだるそうに退職願いを出してきました。
道長に対し、ここでは執筆は無理だと打ち明けている。
落ち着いて物語を書くことができない。里に戻って書きたい。
流石に道長もカチンととして、「局まで与えたではないか」と声を荒げます。
しかし、皆が忙しく働いている中、空気を読まず、のんびり筆を執っているわけにはいかないと打ち明けます。
「書くことは己の使命だろう」
そうイライラを隠さない道長。さらには「内裏のことを見聞きして糧にするんじゃなかったのか?」とまひろに詰め寄ります。
彼女が、なおもうんざりした顔で、気は散るし夜も眠れないと答えると、眠れないなら寝所を用意するとまでいう道長。
さすがに道長も鈍感ですね。
周囲の気持ちもあるからとそれを断るまひろ。そんなことをされたら、ただでさえコネで出仕していると思われているのに、特別枠召人認定確定するじゃないですか。
まひろはしつこく、里に帰ると粘るしかありません。
道長は苛立っています。
続きが書けたら、帝がまひろに会いにくるから、どうか藤壺で書くようにと懇願するのです。
「道長様、私の書くものに、まことにそのような力があるのでございましょうか? これがまことに帝の心を惹きつけていると道長様はお思いですか?」
いつものごとく、面倒くさいことを言い出すまひろですが、気持ちはわかります。もっと確実性のある策で動いてもらわないと、危なっかしいことこの上ありませんよね。
とはいえ、まひろは大量の越前紙を道長の好意で得ています。雇用主になんて態度をとっているのでしょうか。
「わからぬ。されど俺にはこれしかないのだ。賭けなのだ!」
道長は懇願しますが、まひろは突っ込みます。
「賭けに負けたらどうなさいますの? 私はどうなりますの? お役御免無用の身となりましょうか?」
ちゃっかり自身の雇用を確認するまひろ。しっかりものですね。
道長は彼女の心配を否定しますが、まひろはなおも「まことでございますか?」と突き詰めます。契約確認をするために煽ったんですかね。なんてめんどくさい性格なんだ。
そしてこう来ました。
「物語を書きたいと言う気持ちに偽りはございませぬ。続きは里で書きます。必ずお持ちします」
結局、里に帰ることを押し通し、虚無の目になる道長。
まぁ、確かに、納品さえできれば、どこで作業してもいいもんですけどね。
メンタル強者のまひろさん
今年と来年は、大河の新境地を開拓したといえます。
このめんどくさいクリエイターとプロデューサーのやりとりをみて、どこか既視感があると思った方もおられるのではないでしょうか。
たとえば昭和平成のころ、作家が編集者との攻防を明かすことがしばしばありました。そんな裏話を思い出した方もいると思います。
人間の心のぶつかりあいは、血が流れようが流れまいがおもしろい。
戦国幕末ローテーション以外の時代劇も増えた方が良いと思う理由はそこにあります。
史実の紫式部が、出仕後即座に里へ戻ったことは、確かにそうです。
その理由をひねってきたのがこのドラマの持ち味といえます。
『紫式部日記』を読むと、いじめられてしまった紫式部は悪くないように思えます。
とはいえ、あれはあくまで本人目線。
本作はあえて「めんどくさいクリエイターであるがゆえ」としてきましたが、これは良いことではないでしょうか。
来年も依頼主の言うことを聞かないクリエイターが出てきますので、楽しみですね。
現代社会は依頼主の権限が強化されすぎて、弊害ある現場もあると聞きます。
大河で、それはまずい、クリエイターのわがままは日本古来の伝統であると啓蒙できるのだとすれば、素晴らしいことではないですか。
鞭で打っても、鶏が卵をポンポン産むようにはなりませんからね。
孟子にあります。
恒産なければ恒心なし。
まっとうな待遇でなければ、メンタルもちませんので。
よい仕事をさせたいなら、まずはよい待遇から!
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