こちらは4ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【『光る君へ』感想あらすじレビュー第37回「波紋」】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
中関白家の焦燥
そのころ清少納言は、定子の残した脩子内親王に仕えていました。
お菓子を食べながら脩子内親王は何かを読んでいるようで、『源氏物語』を読んだ清少納言の目には鋭い光が宿っています。
定子の長女・脩子内親王(一条天皇の第一皇女)母亡き後はどんな生涯を送ったか
続きを見る
中関白家の陣営が何やら話し合っています。
定子の母方にあたる高階光子が「敦康親王が追いやられるのではないか」と危惧して伊周に訴えているのでした。
「敦康こそ第一皇子であり、定子の忘れ形見なのだから、帝の気持ちは揺るぎない」
藤原伊周がそう言いますが、源方理は「帝は左大臣に逆らえぬ」と焦っているようです。彼は伊周の嫡妻である幾子の兄です。
幾子は帝のはからいで伊周の位も戻されていると嗜めるも、ジッとしてはいられないと光子がせっつく。
しかし伊周が取る手段は、道長への呪詛しかありません。
決定的な証拠となりそうな呪いの人形が何体も出来てしまいますが、大丈夫なのでしょうか。呪詛疑惑で痛い目にあった割に凝りてませんよね。
定子の長男・敦康親王の不憫すぎる生涯 一条天皇の第一皇子は二十歳にして散る
続きを見る
盗賊が藤壺に侵入した
内裏の藤壺で、女房たちが寝静まっています。
執筆中のまひろは、どうやら女三宮が登場する第34帖を書いているようです。
と、突然、悲鳴が聞こえてきました。
筆を置き、様子を探るまひろ。
中宮に何かあったら一大事だ!として走り回っていると、そこには下着姿で震えている女房がいました。
男どもが入り込み、刀で脅して、服を盗んだようです。部屋から出てきた中宮に代わり、まひろは様子を見ています。
ちょうどこの日は惟規が宿直でいたはずなのに、この日に限って早めに退出していて「アイツ、頼りになんないわ!」と呆れたということが『紫式部日記』には記載されています。
盗まれた女房たちの衣服は都の辻に置かれました。
服を脱がされたのならばマシで、屋外まで連れ出されると亡くなる可能性が一気に高まります。
紫式部の同僚であった、花山院の内親王も辻まで連れ出されて惨死しています。
すると、盗賊が置いていった衣服を拾い上げた“謎の若武者”の顔が一瞬、あらわになりました。
藤壺に盗賊が侵入した――その知らせを、百舌彦から聞くと道長は、慌てて藤壺へ向かいます。
中宮は、藤式部が駆けつけてくれたと嬉しそうに語るのでした。
道長から吹いてくる冷たい風
道長はまひろに語りかけ「中宮を助けようと駆けたのは本当か」と確認しています。
その上で他の女房に苛立っていると、まひろは「中宮様が立派だったのだ」と褒め称えます。
自ら女房に袿を掛けた姿には上に立つ者の威厳と慈悲があり、胸を打たれたというのです。まひろは褒める時も具体性がありますね。
ため息をついて「お前もよくやってくれた」と返す道長。
柄本佑さんの道長は不可解です。女房の不甲斐なさを苛立ち、ため息をつくまでは不機嫌に思える。
けれども優しくまひろを褒める。
公任や実資ほど堅苦しくなく、斉信ほど軽薄でもなく、行成ほど誠実でもない。
「これからも中宮様と敦成親王様をよろしく頼む。敦成親王様は次の東宮となられるお方ゆえ」
そしてこの声は、やわらかいようで、一陣の風が吹き抜け秋が訪れたような……ぞくりと肌が粟立つほどの冷たさがありました。
「次のーー」
まひろが驚き、険しい音楽が響きます。
道長は警護が手薄とわかっていて忍び込んだということはただの賊ではないやもしれぬ、後宮の警備を一層厳重にすると無理やり話題を変えました。
「ご苦労であった」
そう労い去ってゆく道長は、まるで今までの彼とは違うような、おそろしいものが滲み出ています。
次の東宮は敦康のはずだった。そうまひろにも言っていたし、中宮も知るはずもない。
公任が、中宮が皇子を産めば東宮が変わるのではないかと口にしたとき、即座に否定したのは道長だった。
一体いつの間に変わってしまったのでしょう。
足早に立ち去り、息をついて歩いてゆく道長を、まひろは愕然としたまま見送ります。
この瞬間、まひろの書く物語の意味も彼女の中では変わってしまったことでしょう。結局は政治権力の道具であったのか、と彼女は理解したのかもしれません。
※続きは【次のページへ】をclick!