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『光る君へ』感想あらすじレビュー第37回「波紋」倫子も清少納言もキレて当然か

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第37回「波紋」
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美しい紙に、美しい字で、美しいだけでない物語を

まひろの手元が大写しになり「源氏のものかたり」と記しています。

水鳥が水面を滑るように軽々と書いているようで、水の下では足を一生懸命動かしている――紫式部がそう記したことを彷彿とさせます。

左利きの吉高由里子さんが、これだけ書けるようになるまで、一体どれほどの練習をしたのでしょう。

彼女が書いている書状は行成宛でした。

すると、道長と倫子がやってきて、文房四宝を褒美として賜ります。

中宮がうやうやしくお礼を言うと「いや、たいしたものでは」と道長はあっさり返答するのですが……いやいや、かなりお高いものでしょう。

書道を嗜む方は、本作の文房四宝を羨ましがって見ているとか。

この場面は財力があってこそ長編物語を執筆できる、そんな構図まで見せてきます。

倫子が笑顔で女房に冊子作りを依頼する一方、主の心を代弁するように険しい顔なのが赤染衛門です。

行成は文を受け取り、目を通し、硯に墨を擦り、筆を手にします。

彼のような能書家に書写の依頼がされているのです。

バイオリンの響きとともに数文字書きつける。日本書道史における最大の達人ですから、ほんの短い場面のようで、どれだけ気を配ったことでしょうか。

この場面がなっていないとなると、それはもう日本文化への冒涜となりかねません。

書道を嗜む方はきっと「根本知先生(書道指導)は大丈夫かな」「渡辺大和さんを応援しなくちゃ!」と気を揉んでいたはず。

どれだけ困難な作業なのか……と想像するだけで大変なことになっています。

NHK大河でなければできない仕事とはまさにこういうこと。本当に美しい場面でした。

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こうして出来上がってきた紙をチェックするまひろ。

自分の物語を最高の能書家が手分けして書くのですからまさに感無量でしょう。

中宮と女房たちは、皆丁寧な手つきで本を仕上げてゆきます。

和紙とはこんなにも美しいのか。筆で描いた文字はこうも素晴らしいのか。眼福そのものの場面です。

そして、まひろは冊子作りが終わったところで、中宮に里下がりを願い出ました。

これから冊子を携えて内裏に戻るのになぜかと問いかける中宮。

老いた父と娘の顔が見たいとまひろは答えます。

人の心を読み解けるようになった中宮は、娘を思うまひろの気持ちを察し、自分のことばかり考えていたと詫びて、間違いを認めます。

中宮は思いやりのある素晴らしい性格です。

寂しい思いをしているであろう娘に「絹と米と菓子を持って行くように」と言いつけるのでした。

それでも中宮が内裏に戻る時は一緒に参ることを約束させ、まひろは一時帰宅をするのでした。

 

まひろ、久しぶりの帰省

藤原為時邸に届けられた白い米を見て、乙丸、いと、きぬは大喜び。

娘の働きのおかげで家のものが食べていけると為時が礼を言うと、まひろも賢子の世話を任せていると父に礼を告げます。

すると、そこへ賢子が帰ってきました。

水仙を手にして、母に少し戸惑った顔を見せています。一通りの挨拶をしつつ、水仙はいとに渡してしまう。母には渡しませんでした。

まひろにしても、ジッと静かに娘を見つめるだけで、涙ぐんだり、頬を触れるようなことすらしない。

例えば『真田丸』では、真田昌幸の母で、幸村の祖母である「おばばさま」こと“とり”は、家族の頬をペチペチすることがよくありました。

時代考証を踏まえつつも、そうした仕草で人の性格を表すことはできます。

まひろはどこかクールな性格に思えるのです。笑みすら浮かべません。

為時は、そんな賢子を「照れておるのだ」といい、まひろも「気難しいところが私とよく似ている」と返します。確かにそうですね。

そしてまひろは、しみじみと乙丸にも礼を告げると、顔をくしゃくしゃにしています。

「乙丸は笑った顔も泣いた顔も同じだ」

そう言った後、まひろはしみじみと家の中を見て周り、「みすぼらしく見える……」と感じています。

それこそ『源氏物語』ならば卑しいものの粗末な家とみなされそうな家でしょう。ここにいては、あの物語は書けなかったのかもしれません。

夜は豪華な食事となりました。ただし、平安時代ですのでシンプルといえばそうかもしれません。

私の感覚ですが、日本料理の再現を見て「おぉ、豪華だな」と思えるのは、織田信長のおもてなし御膳あたりから。

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さらには、見た瞬間に美味しそうだ!と思えるとなると、『べらぼう』の時代あたりに食べられていた揚げたて天ぷらあたりからではないでしょうか。

日本食は江戸っ子ファストフードである江戸前寿司、天ぷらが代表扱いとなる、変わった料理といえます。

ただし、世界的に見ても、中世の料理は素朴なものです。これが食べられるだけでも贅沢なのですね。

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酒癖が悪いまひろ

普段は口が重いのに、酒が入ると舌が回るまひろ。宣孝から白酒(バイジュウ)を貰い、飲み干すほど酒は強いのです。

そんなまひろは、女房生活で溜め込んでいたことをぶちまけます。

藤壺の女房は奥ゆかしすぎる。

惟規が結構かわいいとフォローすると、すごいイビキをかいたり、寝言を言ったりすると返す。

為時が、お前だって寝言を言っているかもしれないというと、そこはあっさり認める。

さらには親王五十日の宴は本当に無礼講になってしまったと言い出します。

殿方は酔っ払ってきて絡んでくると笑い、あの生真面目な実資によるセクハラまで明かすまひろ。

いとが、左大臣もハラスメント気質なのか?と問いかけると、まひろはやんわりと否定します。

そしてますます饒舌になっていく……。

土御門の宴は盛大で、お菓子もお料理も食べきれないほど並んでいた。そのお菓子を女房が食べ尽くし、殿方はお酒を飲む。

そうはしゃいでいると、賢子の顔が硬く強張ってきます。

為時が、我々のような貧しい者には縁がない、と話を締めようとしても、まひろは、お菓子は持ってきた、皆食べただろう?と言い出す始末です。さらには賢子にまで……。

「姉上、飲み過ぎだよ」

見かねた惟規が、飲み過ぎだとして、ようやくたしなめます。

「あらお酒は殿方だけの楽しみではありませんよ〜」

「そうだけど……」

わけのわからない理詰めを返す、鬱陶しいまひろ。単なる飲み過ぎなんだってば!

頭がとっ散らかっているまひろは、今度は中宮の出産に立ち会えたことを感激しはじめます。

「もうよい。そのくらいにしておけ」

さすがに父の為時もたしなめます。そろそろ強制的に寝かせてしまうくらいでよいのではないでしょうか。

まひろの“嫌われ上等”、めんどくささが全開ですね。

女性の飲酒は、ジェンダー観があらわれる指標です。少し口をつけて頬を赤らめるくらいが、ほどよいものでしょう。このドラマだと藤原道隆の嫡妻である高階貴子が該当しますね。

まひろは酒に強い。

酔って宮中の内側を暴露をする。

日頃とのギャップがあまりに激しい。

理詰めの面倒臭さを残しながら、酔っ払いらしく話題がすっ飛ぶので、周りはとにかく相手にしにくい。実にのたちの悪い酔い方をしています。可愛げもありません。

そして酔うと、日頃は下劣だと押し殺している本音も漏れてしまう。

とにかく彼女の醜さが露呈してしまう場面ですね。

吉高由里子さんは、酔態の見苦しさと、愛嬌と、知性がそれぞれ発揮されて、ぎりぎりのところで綱を引き合うような演技を見せております。

彼女でなければ、この境地は表現できないのではないでしょうか。

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