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『光る君へ』感想あらすじレビュー第37回「波紋」倫子も清少納言もキレて当然か

源倫子が孫の敦成を抱いて、目を細めています。

そんな母と我が子を見ている中宮彰子。

歴史劇の魅力とは、この祖母と孫の背景にある要素を読み解くことにあると思えます。

これだけでも見る価値のあるシーンでした。

 


赤染衛門の懸念

彰子が内裏に戻る前に帝へのお土産を作りたいと言い出しました。

彼女の提案を聞いて、嬉しそうな赤染衛門。あれだけ内向的だった中宮がすっかり表情も明るくなり、精神面でも積極的になりました。

お土産とは、藤式部の物語を美しい冊子にするというもの。

「藤式部」と聞いたとき、母である倫子の顔にかすかな動揺が見られつつも、こう言います。

「それは帝もお喜びになりましょう」

母の動揺に中宮は気づかず、赤染衛門は険しく暗い顔になるばかり。

赤染衛門は藤式部と左大臣道長の特殊な関係を察知。式部に対しては「そういうこともわからないでもない」とやんわりとたしなめながらも、お方様だけは傷つけぬよう釘を刺していました。

と、ここで思い出したいのが『鎌倉殿の13人』での政子です。

政子は頼朝と亀の関係を察知すると、屋敷ごと破壊しました。

あれは、りく(牧の方)が教えた上方由来の「後妻打ち」ではあったものの、坂東の蛮勇ぶりは頼朝の想像をはるかに凌駕。

倫子の嫉妬を不健康とみるか?

いや、政子がヤバい、やりすぎだとみるか?

さて、皆さんはどちらでしょう。

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ここでの赤染衛門は、必ずしも性的な関係を咎めているとも思えません。

当時は「召人」(めしうど)という存在があり、権力者が女房に手をつけることは黙認されていました。

むしろ、そうした関係を超えた心理的な繋がりによる関係性の構築を問題視しているとも思えます。

「ソウルメイト」とはなんだ、けしからんのではないか――そう遠回しに語っているようです。

 


母親失格? そんなことはない

道長との性的な関係は途切れたにせよ、物語でここまで中宮との関係を深めたら、倫子もまひろにコンプレックスを刺激されることでしょう。

母として、娘の心を開かせることができなかった――ここが重要ポイント。

しかし倫子には、そう落ち込まないで欲しいのです。

中宮の土産作りのために、紙はじめ材料を手配することだって、母としてできる素晴らしいことではないですか。猫の手配だって倫子の素晴らしい気遣いです。

何よりも実家が太い。偉そうなことを言っても、道長は土御門あっての権勢なのです。

なお、猫好き大河ファンに良い知らせがあります。

来年の『べらぼう』時代は、猫が江戸っ子人気ペットで不動の一位です。

メインキャストの一人である太田南畝は、

「猫を飼うことにはメリットしかないのですね」

と、格調高い文体で書き記し、山東京伝の弟・京山は、

「猫大好き! 三匹と一緒に暮らしています」

と、素直に書き綴っています。

来年は今年以上に猫がうろつく大河ドラマとなることでしょう。猫への愛情は江戸っ子並、そんな森下佳子先生ですので、ぬかりなく出すと予測されます。

そして、まひろも辛い立場です。

彼女は悪意をもって倫子に嫌がらせをするわけではなく、ただ自分なりに主君である中宮に誠心誠意で仕えるだけで、周囲を掻き乱してしまうのですから。

 


お堅い中宮サロンの共同作業

かくして、豪華な冊子作りが始まります。

「美しい紙」だと感心している女房たち。

確かに色彩パレットが東アジアらしく、見ていて目に心地よいのです。時代劇は伝統色を用いているかどうかも重要です。

中宮は紫の上に愛着があるようで、その若草のような娘の初登場場面は、若草色か、藤壺の藤色か、どちらがよいか藤式部に相談。

まひろは中宮様のお好みでどちらでもよいと返しました。中宮の藤式部崇拝はかなりのものです。

中宮は若草色を選びました。

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宮の宣旨は紙を手にして「このような美しい紙に書かれた文をもらいたい」と語っています。

恋文なのにビジネスレターぽいものを送ってしまうと、

「気の利いた貴公子だと思っていたのに失望した」

と、ドン引きされてしまう。『蜻蛉日記』で藤原寧子藤原道綱母)にそれを指摘されたのが藤原兼家でした。

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ただ、こういう色好みの話題は苦手なのか、他の女房は硬い顔をしています。そこが定子サロンとの違いなのでしょう。

まひろの弟・藤原惟規が、中将の君を追いかけた斎院サロンこと選子内親王に仕えた女房も明るく機転が利いていたため、

「中宮のサロンって、ノリの悪い非リア陰キャじゃね?」

と比較されてしまっていたそうです。

ゆえに明るいお土産が重要なところもあるのかもしれません。赤染衛門の複雑な心境も読み解けますね。

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