ガオー!
人気実力共に今や日本を代表する女優の松嶋菜々子さん。
突然、彼女に吠えさせて、萌えを狙った演出でしょうか。
かつての大河主演を惜しみなく使い、ヒットを狙う姿勢が感じられるオープニングです。
◆「どうする家康」次回予告 初登場・松嶋菜々子「ガオー」虎の真似?早速ネット萌える 家康の母・於大の方(→link)
あらすじ
織田軍に包囲されてしまい、絶体絶命の松平元康。
でも、負けはしない!
元康は、寅の歳、寅の日、寅の刻に生まれた運命の子である。
そんな元康を白兎と呼んでいた織田信長は兵を引く――古沢脚本の妙が光る展開ですね。巧みな構成は前作を思わせると評価されるのであろうか?
元康は大高城を飛び出し、最愛の瀬名たちを残した駿府に帰ろうとする。
しかし、家臣団は一致しない。
彼らは故郷の三河に戻りたい。
仕方なく駿府へ向かう元康の前に立ち塞がるのが松平昌久。重臣の鳥居忠吉らは重傷を負ってしまった。
ようやく岡崎の大樹寺に逃げ込み、悟りを開く元康であった。
あらすじ:ドラマ通構文バージョン
今週もアートなオープニングから始まる『どうする家康』。
歴史ものに不慣れな初心者にもやさしい展開が光る。
織田軍に包囲されてしまい、絶体絶命の松平元康。でも負けはしないはずだ。
ここで元康の母・於大の方の姿が。
「ガオー!」
愛らしく叫ぶ松嶋菜々子さん。『利家とまつ』でヒロインを務めただけあって、安定感のある演技である。
なぜ虎の真似をするのか?
というと、元康は寅の歳、寅の日、寅の刻に生まれたから。
『鎌倉殿の13人』の三寅を思い出すファンもいることだろう。今年は『平清盛』から主演の松山ケンイチさんのみならず、スタッフも参加している。
リベンジを果たしたい熱気が感じられる作品だ。
どういうわけか元康を白兎と呼んでいた織田信長は兵を引く。
「これまでとは違う」と言うテレビ業界人も多いという斬新な信長像。時代劇に詳しい専門家によれば、今年の今川義元や徳川家康の像は正反対だという。
寺島しのぶさんのナレーションとのギャップにクスリとしてしまうファンも多いはずだ。
ようやく大高城を飛び出した元康は、最愛の瀬名たちを残した駿府に帰ろうとするが、家臣団は一致しない。
彼らは故郷の三河に戻りたいのである。
誰しも家を思う気持ちはある。そう感じさせる秀逸な展開だ。
仕方なく駿府へ向かう元康。しかし渋々三河へ向かうと、松平昌久が立ち塞がり、重臣の鳥居忠吉らは重傷を負ってしまった。
このあたりは舞台となる静岡の地名も頻出するせいか、静岡での初回視聴率は22%超えを叩き出した。
昨年の神奈川に続き、地元を活性化できることだろう。
やっと岡崎の大樹寺に逃げ込み、悟りを開く元康。
“か弱きプリンス”がどう強くなってゆくのか、これからも見守ってゆきたい。
“シナハン”を重ねてゆく古沢マジックに今週も唸らされた。
ドラマ通構文とは?
二度もあらすじを載せて何なのだ?
「ドラマ通構文」とはいったい何なのだ?
と言いますと、なんとなくオシャレで賢そうに見える構文のこと。
本作を褒める記事をご所望の方は、他にいくらでもあることをご認識いただければ幸いと思い、以下に参考記事リンクを貼らせていただきました。
ざっと検索をかけただけでも凄まじい数になります。
◆ 「神君」でも「たぬき親父」でもない等身大の“松平元康”。「戦場から離脱した大将」という描写をどう受け止めるべきなのか?【どうする家康 満喫リポート】1(→link)
◆大河ドラマ「どうする家康」は「平清盛」のリベンジ作!? 初回放送で見えた!今後の注目ポイントはココだ!(→link)
◆『どうする家康』初回で感じた7つの魅力 “かよわきプリンス”やアートなOP…「俺の白兎」も話題(→link)
◆「どうする家康」初回視聴率、静岡で22%超え!2010年以降で最高値に(→link)
◆「どうする家康」好スタート これまでとは違う…同業者が感じた“4つの驚き”(→link)
◆『どうする家康』を時代劇研究家はどう見たか?注目したのは「徳川家康と今川義元のイメージの逆転」(→link)
◆「どうする家康」今川義元初回退場!CP語る3つの狙い 古沢マジック炸裂“シナハン”生きた元康の恐怖心(→link)
◆「どうする家康」第1回「どうする桶狭間」“か弱きプリンス”徳川家康に込められた思いとは【大河ドラマコラム】(→link)
◆超高速だが不慣れな人にやさしい、斬新な第1話【どうする家康】(→link)
私は?と言えば、第1回放送から厳しい見方となってしまいましたが、今回もまた同様。
褒め記事をご覧になりたい方は上欄の記事をクリックしていただき、厳しい見方にご賛同いただけそうな方のみ、先へお進みください。
どうする精神力
前年の大河『鎌倉殿の13人』はメンタルケアを重視していて、撮影現場では、役者さんやスタッフに対して、リスペクトトレーニングが取り入れられておりました。
今年は大丈夫でしょうか?
役者さんの顔色が沈んで見えるんですよね……気のせいだったらよいのですが、現場の雰囲気が乱れている危険性を感じます。
どうするドラマ構成
まだ第2回放送だっていうのに、追い詰められている予兆が出ています。
ペース配分と構成がおかしい。序盤から回想シーンを入れすぎています。
初回はいきなり桶狭間敗戦までを高速で描き、2回目で遡って描かれていますが、果たして効果的でしょうか?
戦国時代に詳しくない方がご覧になられたら、場面が飛びまくって、内容を捉えきれてないようにも思えます。
子役を敢えて使わないのは『真田丸』や『麒麟がくる』、『鎌倉殿の13人』でもそうでした。
しかし、毎回それが正解ではなく、本作は不自然さに繋がっていませんか?
◆「13歳を39歳で!」家康演じた “瀬名”有村架純との「むずがゆい」出会いを振り返る(→link)
『鎌倉殿の13人』も、第一回の実衣や三浦義村は年齢的にはかなり無理がありましたが、さほど注目はされていません。
それを気にさせないほどシナリオに引き込む力がありました。のみならず、平安末期から鎌倉時代の作品が他にあまりないことも比較されにくかったことも当然ながら影響しているでしょう。
しかし戦国時代は、鎌倉期よりずっと世間に浸透していて漠然とした人物イメージもあるでしょうから、作品として出すには、より高度な演出が求められるはず。
元康と瀬名のおままごとシーンをごく自然に受け容れられた方は少なかったのでは?
どうする人物描写
Amazonプライムビデオに『MAGI』というドラマがありました。
天正遣欧少年使節団を描いた作品で、織田信長と豊臣秀吉が出てきます。
信長を演じるのは吉川晃司さん。
秀吉は父・拳さんを彷彿とさせる緒方直人さん。
この二人が、信長と秀吉の理想形のような人物像でしたので、非常に爽快感がある一方、焦りも感じました。
大河はもう二度とVODに勝てないのでは?
魔王のような織田信長、猿のような豊臣秀吉――そんな古いテレビ業界の手垢にまみれた人物像で大河に登場させられたら、アマプラで取り組んでいる新しい戦国ドラマには勝てるはずがない。
そんな心配は、2020年『麒麟がくる』における織田信長が染谷将太さんに決まったというニュースで吹き飛びました。
ベタではない信長にチャレンジするんだな……と思ったからです。
むろん時代考証を考えれば史実から逸脱させてはいけないという制約はあるだろうし、新しい信長像を受け容れられない層からはバッシングも起こるでしょうが、チャレンジなくして進歩はありません。
ゆえに従来の像とは異なる染谷将太さんの起用という時点で期待は高まり、実際の染谷信長も素晴らしいものでした。
それに比べて本作はどうでしょう……。
あまりに「テレビ業界が考えるベタな信長」ではありませんか?
不良漫画に出てきそうな信長と申しましょうか。
真っ赤っ赤。
いかにも昭和から平成前期にあったヤンキー信長像で、セリフも中二病というスラングそのまんまでした。
さらには、テカテカした照明に、ペカペカしたBGM、そしてBL狙いかのようなボディタッチ。
『麒麟がくる』で船に乗ってやってきた、染谷信長の登場シーンと比較したらなんと陳腐なことか。
むろん役者さんが悪いのではなく、脚本や演出の問題であり、この先も、同じ調子で映像化するのか?と考えると頭を抱えたくなってしまいます。
『麒麟がくる』の徳川家康役だった風間俊介さんが1月10日放送の『大奥』に出ていて、改めて思いました。
風間さんは発声が抜群によい。
冷静さと聡明さが常にあって、その裏に何かが滲む。『麒麟がくる』の家康は本当によかった。
『麒麟がくる』の武将たちがコーエーテクモさん準拠のパラメータだとすると、『どうする家康』はその半分ぐらいに見えてしまいます。
なぜなのか?と理由を考えると、作り手が、役者さんや戦国武将の知名度、大河というブランドに頼りっきりで、登場人物たちをどんなキャラに仕上げていきたいのか、という意識に問題があるのではないでしょうか。
キャリアを積んだ役者さんはともかく、不安なのは若手です。
山田裕貴さんと溝端淳平さんは、時代劇もこなせるし、将来的にも大河で起用したいと思っているからこその配役でしょう。
彼らは大事な宝玉です。もっと丁寧に磨いてください。
どうする公式サイトとSNS
昨年と比較しても、様々な面でクオリティに疑問がある本作。そのひとつがネット配信です。
公式サイトは情報量が少ない。
SNSも同様で、放送後に『吾妻鏡』との比較や「かまコメ」(出演者インタビュー)が流されていた『鎌倉殿の13人』での取り組みは素晴らしいものがありました。
放送前に見せてくる写真もワクワクしたものです。
こうした昨年の動向と比較すると、今年は明らかに熱量が足りてない。担当者が変わったのでしょうけれども、一体どういうことなのでしょうか?
今後、SNSで何かトラブルが起きなければよいのですが……。
どうする戦争描写
今年の『どうする家康』は合戦の様子を湿っぽく見せ、「戦を避ける家康は素晴らしい」と誘導したいようです。
しかし、戦闘や負傷者の描写があまりに薄っぺらくて、かえって悲惨さが伝わってきません。視聴者を身震いさせた『鎌倉殿の13人』に遠く及ばないでしょう。
戦争の傷という点では『麒麟がくる』が秀逸でした。
あのドラマでは薬を売る少年が殺される場面があっただけでなく、ただ道をゆく場面にも負傷した物乞いが映っていました。彼らは戦で後遺症の残った兵士に見えたものです。
何より駒のキャッチコピーが「戦災孤児」でした。
脚本家の池端俊策さんが見た、アジア太平洋戦争で痛めつけられた戦後日本の記憶が蘇ったかのようで、胸がしめつけられる。
そんな作品と比べると、本作は上っ面で戦争を描いているだけに思えてなりません。
戦争のもたらす無惨さと真面目に向き合っていないのでは?という懸念は、元康が戦場から逃げ出すことで笑いをとろうとするようなセンスからもうかがえる。
前線からの逃亡は罪が重いものです。
「退くものは斬る!」
そうして血刀をかざす将の姿はお約束ですが、あれはパターンとしてかっこいいからそうしているわけではありません。
戦場には将兵が大勢います。そこで何らかのスイッチが入って我先に逃げ出すと隊列が崩れ、それだけで大損害が出てしまいます。
撤退戦は難しいもので、将たる者は、なるべく部隊が乱れぬよう、逸る心を抑えて指揮を取らねばならない。
そんな戦場で大将が率先していなくなるって?
「ヘタレ」なんて笑っている場合ではなく、人命を著しく損なう危険性があります。
要は、戦争に対する緊張感が全く感じられない。弛緩しきったドラマになっているため、いきなり介錯云々やられても、悪ふざけにしか見えないのです。
この元康は「本当に腹を切ってしまいそうだ!」とハラハラした視聴者はいたのでしょうか?
そんな調子ですから、根本的な疑問が尽きません。
彼らは本当に、生死のかかった戦国人なのか?
誰一人として5W1Hが不明であり、画面に映るたびに、思いつきで行動しているように見える。学校の教室でウケ狙いに走る陽キャのような。
「がおー!」なんて、あざとく叫ぶ武家の夫人なんて、もう全く理解できない。
『鎌倉殿の13人』の大江広元を思い出してください。
彼はしばしば謀殺を進言していましたが、なぜ殺すのか、殺すことでどういうメリットがあるのか、いつも計算があった。
ああいう理詰めの言動で、彼自身の行動規範は説明されていた。
わけもなく叫んで誤魔化すような真似はしていません。
どうするバストアップ多用とエキストラ
大河に限らず、駄作にはある特徴があります。
主要な登場人物たちが、顔と顔を直接突き合わせていないとシーンを盛り上げられない――私はそれを「フェイストゥフェイスシステム」と呼んでいます。
映像的には、胸から上に集中したバストアップで、演出的にはベタで楽になりますが、危険な兆候です。
これをしばしばやらかすと、登場人物がテレポート状態になり、絵が単調になります。
家康と信長の出会いなんて、まさにそうでしたが、バストアップを多用するには理由があります。
所作を誤魔化せることです。
時代ものは特に所作の美しさが重要です。
『麒麟がくる』の長谷川博己さんや『鎌倉殿の13人』の小栗旬さんは、和装ならではの立ち方、座る動きが美しく、主演は流石だと思えました。
『鎌倉殿の13人』第1回は、大泉洋さんの読経姿が洗練されていて、他の坂東武者とは違う、そりゃ政子もぞっこんになると引き込まれたものです。
むろん他の出演者も絵になるように美しかった。
それが今年はどうにもおかしい。
思い返せば2015年大河『花燃ゆ』では、上級武士の妻たちが、和室屋内でスタンディングパーティでもするようにずらっと立っている珍妙な場面がありました。
カナッペでも食べるのかと呆然としたものですが、今ならわかります。
女優クラスならともかく、エキストラまでの所作指導が追いついていない。和装で立って座ることができないから、スタンディングパーティ状態だったのではないでしょうか。
そして今年も、ぬぼーっと立っている場面が多く感じます。
昨年と比較するとわかりやすいかもしれません。
『鎌倉殿の13人』では、室内で複数名が座りながら協議をする場面が多くありました。エキストラたちがずらっと集まりながら座り込む場面も多かった。
それが今年は立ちっぱなしで、しかも妙な顔つきのエキストラが多い。いきなり切羽詰まっているのは?と感じるのは、そうした状況も一因です。
どうする鎌倉殿頼り
ネット広告は、ユーザーの履歴行動から選び、画面に表示されます。
ゆえに今年であれば『どうする家康』のVOD宣伝が大きく出てくるはずですが、U-NEXTあたりは未だに『鎌倉殿の13人』が前面に押し出されてきた印象があります。
私の検索履歴からすれば、どうしたって今年は家康の方が多いのに、なぜか鎌倉がプッシュされる。
歴史雑誌でもまだ鎌倉時代関連の記事が出ていますし、流行り廃りの激しいネットメディアですらこんな調子です。
◆『鎌倉殿』の「公暁」が自分を「コウギョウ」と呼んだとき、深い深い感動に襲われた理由(→link)
◆ NHK「どうする家康」鎌倉殿ネタ?源頼朝の名前に視聴者反応「勘弁してくれ」「ろくなことない」(→link)
これは大河ドラマとしては異例のことです。
東京オリンピックが目前であっても、2020年には2019年大河ドラマ『いだてん』の話題は出ませんでした。
まだ1月とはいえ、VODにおける昨年と今年の大河需要が何やら妙な感じがします。
どうする関連番組
2018年下半期朝の連続テレビ小説は『まんぷく』でした。
日清食品が世界に誇るカップヌードルの開発秘話がベースになったドラマですが、この放映時、おかしなことが起きています。
そもそもチキンラーメンという食べ物は、主人公の夫が一から開発したものではなく、台湾の伝統食品を日本向けにパッケージ化して売る商品の特許を買い取っただけでした。
しかしドラマでは日清食品の言い分をそのままに主人公夫妻が開発したとして流したのです。
それを告発する記事がネットニュースだけでなく、週刊誌にも掲載されましたが、NHKの関連番組では訂正せずそのまま流していたのです。
ドラマの創作にあわせて史実を捻じ曲げることがあってよいものでしょうか。
『鎌倉殿の13人』と比較しますと、例えば源実朝が北条泰時に恋をしている設定はあくまで劇中のみで完結し、関連番組では扱いません。それが当然かと思います。
それがどうにも今年はおかしい。
関連番組を見ていると、ドラマが用いている古い通説をそのまま補強するようなことを流しています。
大河ドラマにあわせ、関連番組まで同調させるとさすがに問題ありだと思います。
明後日1月18日に放送される歴史探偵では「北の関ヶ原」こと【慶長出羽合戦】が描かれますが、放送前の告知文に「徳川家康」の名前が出ても「最上義光」が出てこない状況って何なんですかね……。
◆歴史探偵 「北の関ヶ原 直江兼続と伊達政宗」(→link)
上杉家の名将・直江兼続と伊達政宗が激突した東北の関ヶ原。戦いのさなか、上杉と伊達が手を結び、徳川家康を攻撃する幻の計画が練られていた。愛の武将・直江兼続の戦い!
『どうする家康』に最上義光は出ないようですから、仕方ないってことでしょうか。
こうなるとスタッフも「もがみよしみつ」って呼んでいそうで悲しくなります。それともはなから知らないのか。
どうするアクションシーン
先週のレビューで私は「アクションシーンに現代的な動きが入っているため違和感がある」と記しました。
しかし、それが良いという視聴者もいるようです。
そういえば、信長役の岡田准一さんも格闘技に長けているためか、家康との相撲シーンにそんな動きが見られた気もします。
もう、いっそのことド派手にプロレス技を仕掛けていったらどうでしょう!
怪我だけはくれぐれもご注意を。
どうする敬老精神と教養
前回放送で、心が痛かったのがイッセー尾形さんでした。
老将の鳥居忠吉を演じていて、歯が抜けているため、何を言っているかわからない。
別にそれだけなら問題ありませんが、笑い者にされてしまうような様子がイジメのようで辛かったものです。
忠義の武将に対してあまりに失礼ではないでしょうか?
そう感じていたら、作り手は真逆のようで“ネット爆笑”を取れたことを誇るような記事があり、さらに心痛を感じてしまいました。
記事の中でこう答えられています。
「一体、歯がどのくらい抜けるとしゃべりにくくなるか、イッセーさんと一緒に何度か実験をしました(笑)」
「(笑)」ってなんだかなぁ……。
確かに「やい、じじい!」と若武者が老将に食って掛かるシーンは『鎌倉殿の13人』でもあり、三浦義村が高齢になったときにやり返されたのは小気味よいと思いましたが、本作の場合は違いますよね。
華流時代劇では、年長者への無礼な言動は、儒教の敬老精神に照らしあわせて最悪の愚行であるため、そんなシーンは出てきません。
仮にそんな場面があるとすれば、人格低劣な小悪党を描くときになります。
それが『どうする家康』では、何度も実験をしてまでも表現したい、ウケ狙いの小道具にされている。
これを軽薄と言わずして何というのか。
突如、思いついたように『論語』を唱えられても、作品としてどうにもチグハグなのはそのせいでしょう。
暗記で試験は乗り切るけど、本質的には聡明でない――そんな人を見ているような、嫌なリアリティだけはあるんですけどね。
どうする視聴率
早速ですが、放送直前に公開した私の予想記事が外れました。
-

2023年大河ドラマ直前予想『どうする家康』はどうなる?消せない懸念
続きを見る
この部分です。
・再生回数は低迷するけど、視聴率はそこそことる
昨年の勢いを汲み、今年の出演者の顔ぶれからして、最初ぐらいは注目されると思ったら、思わぬ低調ぶりでした。
◆大河「どうする家康」初回視聴率、関東15.4% 歴代2番目の低さ(→link)
『西郷どん』と同率、過去2番目の低さで、過去最低は1989年『春日局』だったことを考えると、近年では実質最下位とも言える出だしです。
どうするBL大河
第2回放送をめぐっては、BL要素に着目したネット記事が早くも出回りました。
◆ 松本潤『どうする家康』、「BL大河」と話題のワケ――岡田准一のセリフ「俺の白兎」がトレンド入り!(→link)
大河ドラマでBLを推してくるとなると、なかなか厄介です。
振り返れば2009年『天地人』がBL漫画を出し、2018年『西郷どん』でもBLが押し出されましたが、余計なお世話としか言いようがありません。
-

大河ドラマ『西郷どん』超直前予想! BLやモテ要素で、やっぱり不安は拭えない
続きを見る
-

薩摩趣味(薩摩の男色)を大河ドラマ『西郷どん』で描くことはできるのか?
続きを見る
-

史実の源実朝は男色ゆえに子供ができず?源氏将軍が三代で途絶えた理由
続きを見る
BL狙いではなく、多様性を尊重するように出した2022年『鎌倉殿の13人』は、そこを読み解かれないどころか、歴戦の腐女子は萌えないだのなんだの、妙な誤解も生じました。
こうした歯がゆい状況をどうにかできないものか。
そう思っていたら、海外ドラマこんなことがありました。
◆「ウェンズデー」はなぜクィア・ベイティング批判をされたのか(→link)
こういった広報からドラマまでの一連の在り方を、クィアな人々を餌で誘きよせるマーケティングの手法「クィア・ベイティング」であるとして、様々なメディアが批判した。
カナダの総合エンタメサイトScreen Rant※2は「クィア・ベイティングとは、LGBTQ+の表現がかつてないほど増えている時代において、視聴者を維持するためだけにLGBTQ+の関係をからかう厄介な行為」と説明し、主要なメディアが未だにドラマの中心からクィアなストーリーを排除していると指摘。
オーストラリアを拠点とするポップカルチャー専門のメディアJUNKEE※3も人間性よりも利益を優先させる陰湿な戦略であると非難した。
クィア・ペインティング――なるほど、客寄せのように性的マイノリティを扱う手法は批判されているんですね。
あの信長から家康への執着なんて、ハラスメントじみていて、そもそもどこにトキメキ要素があったのでしょうか。
客寄せとして狙ったシーンだとするならば、一体いつの時代の作品なのかと呆れるばかりです。
萌えの使い方もあざとく、錚々たる役者たちにこんなことをさせてどうしたいのですか?
どうする岡崎
個人的な意見で申し訳ありませんが、大河ゆかりの地が観光誘導を狙う動きには言いたいことが山ほどあります。
観光モデルとして古い。
昭和の時代ならば家族旅行を見込めたのでしょうが、日本の家族観や旅行観も変貌するのに、いつまでもしがみついていたら誰も興味を持ってはくれません。
実際、ソーシャルゲームとのタイアップを狙う自治体も増えていて、『刀剣乱舞』などかなり上手にやっているでしょう。
大河と観光となると、北海道と沖縄の不公平感についても、物言いしたくなります。
両者は、他の観光資源が多いから放っておけばよいとでも?
北海道は『ゴールデンカムイ』を応援していますが、そういう問題ではないでしょう。
◆「どうする家康」今度はどうする? 家康生誕地が狙う脱「トラウマ」(→link)
なるほど。こういう地域差もありますよね。
しかし過去の事例にも注目してみますと……。
◆視聴率ワースト危機『花燃ゆ』 井上真央が後始末させられる(→link)
ドラマの迷走に大きな被害を受けたというのが、文にゆかりのある山口県防府市だ。
長州(山口県)出身の文と夫の楫取素彦(大沢たかお・47才)は、富岡製糸場のある群馬で活躍した後、防府市で30年以上の余生を過ごし、ふたりの墓もここにある。そこで市は1億2000万円をかけて『ほうふ花燃ゆ大河ドラマ館「文の防府日和。」』を作り、ドラマ初回に合わせてオープンした。
JR防府駅近くの複合商業施設内にあるドラマ館には番組関連のパネルや撮影衣装がズラリ。
ドラマの舞台となり、知名度がアップして市民や観光客が多数来場―と見込んでいたのだが、雲行きが怪しくなった。
「当初、最終回までの数話は防府市がドラマの舞台になり、この地に日本初の仏教系の幼稚園を設立した文が園児らにおにぎりを作るシーンなどがあるはずでした。ところが、序盤の長州編の視聴率がイマイチで、群馬に舞台を移すとやや上向きになったので、脚本を変更。最終回は東京にある鹿鳴館で文と楫取がダンスを踊る華やかなシーンになり防府市でのシーンは一切なくなってしまったんです。ドラマ後のナレーションで触れる程度でしょう」(前出・NHK関係者)
どうするお粗末VFX
前回のレビューで私も指摘しましたが、あのお粗末VFXはやはり散々な評判です。
◆「本当にどうするの」松本潤主演の大河ドラマ『どうする家康』が低視聴率のスタート…韓国での反応は?(→link)
◆ 「松本潤は乗馬NG?」の声まで…『どうする家康』のCG多用演出が大不評(→link)
これについては「合戦シーンでの馬の安全確保のためだ」という表明が公式からありました。
何を言っているのか……。
なんと虚しい大義名分でしょう。
動物愛護だから、あのしょうもない乗馬CGだというのは、いわば紙ストローみたいなものだと思います。
いくらエコロジーだのSDGsだの言われたところで、あの紙ストローに納得できますか?
しかも他の店では、味にさほど影響がない生分解性ストローを使っている。
こうなったらイライラしませんか?
撮影時の動物愛護は確かに重要な課題です。多くの国でそこは対策をしています。
さんざん取り上げてきた『ゲーム・オブ・スローンズ』では大胆に馬が死にます。
しかし、一からCGで作った馬を投入しているので問題はありません。
本物の馬を使っていて、かつ難易度の高い『鎌倉殿の13人』はいかがでしょう?
障害飛越で馬が怪我するかもしれない。あれは動物虐待大河だ!って、なりますか?
ここで1970年代、半世紀前の撮影の話を持ち出さないでください。あくまで2023年で比較しましょう。
他のドラマではでは安全に配慮しつつ、きちんとした乗馬シーンをできている。
それが今年はできてない。そこを指摘されたら大義名分とばかりに動物愛護を振りかざす。あまりに見苦しい言い訳。
要するに、資金や時間がなかった、あるいは事前の取り決めでそうなったのですよね?
ドラマ『大奥』では、冨永愛さんが大河常連のバンカー号を颯爽と乗りこなしていました。大河でできないなんて通じません。
これは馬に限った話ではなく、『麒麟がくる』や『鎌倉殿の13人』のスタッフが、今年は『大奥』にいるのでは?
『大奥』の脚本家は、『おんな城主 直虎』を描き、三谷さん『真田丸』の後でもバトンを引き継げると証明した森下佳子さんです。
作品の出来からして、どうしてもそう感じてしまいます。
あるいは正月時代劇『いちげき』も傑作でしたが、それらと比較すると『どうする家康』の熱意の無さは如何ともし難いものがある。
VFXを利用するなら、上手に視聴者を騙してほしい。ただそれだけです。
ちなみにこうした流れの中、
「いつか人間の兵士までCGになったらどうしよう、なんちゃって!」
なんて意見も見かけましたが、10年前の2013年『八重の桜』の時点で、すでにモーションキャプチャを使用したCG兵士は出ています。
全ては“作り手のやる気次第”ということがよくわかりましょう。
善く戦う者は、これを勢に求めて、人に責めず
今年の『どうする家康』は、一昨年の『青天を衝け』と大差のない出来に思えます。
どちらもわかりやすくて勢いはある。
孫子で言うところのこちら。
善く戦う者は、これを勢に求めて、人に責めず。『孫子』「勢篇」
よく戦うものは、勝因を勢いに求めて、人を頼りにしない。
勢いはあるから、中国スマホゲームのおバカ広告みたいで、好きな人には楽しいのかもしれません。
◆「極道幹部を超高温サウナで倒して組長に昇格」中国のスマホゲームがおバカな動画CMを大量出稿する理由 日本で流れているのは「中国の地方都市向け広告」 (→link)
もっとも有名なのは、「マフィア・シティ‐極道風雲」(Yotta Games)だろう。
サウナに入る極道幹部にぞんざいな扱いを受けて怒った部下がサウナの温度を上げて幹部を倒し、自らが幹部になる様子を描いた動画だ。
こういった“俺最強”のノリがありますよね。
信長なんて、それこそマフィア系スマホゲーのレベル99幹部みたいに見えます。
ただし、ドラマ自体に勢いはあっても、報道とファンダムの動向については、わずか2回放送にして、早くも暗雲が立ち込めてきました。
特にサラリーマンの象徴・日刊ゲンダイさんはお気に召さないようで、いきなり叩きモードに突入しています。
◆「どうする家康」喜ぶのは松潤ファンだけ? 紅白に続く“年配層切り捨て”で「どうなるNHK」(→link)
◆ 「どうする家康」もやっぱりか! なぜNHK大河ドラマでは“青春編”がどんどん長くなる?(→link)
まぁ、普段から叩き姿勢が売りなメディアだけに特筆すべきものではないかもしれませんが、こうした「若い者向けにチャラチャラした作品にしてけしからん!」という記事はこちらにもあります。
◆タヌキ親父の家康にリンクしない松潤、ぶっ飛んだ演出は「鬼滅」の見過ぎ? どうする今年、大河見る?大河ドラマ「どうする家康」は若者支持を得られるか(→link)
この手のメディアが大河を叩くのは、それだけ読者が思い入れを抱いているからでしょう。
『どうする家康』が若者を狙っているとは、とても思えません。
笑いのセンスがいちいち「おじさん構文」じみていて、自認はともかく実年齢は若くない層を狙っていると思えます。
最近の大河と言えば、Twitterトレンドがしばしば話題になりますが、あれも本物の若者はあまり熱心に使わないプラットフォーム。
関連コメントで「韓流ドラマのような無茶苦茶さだ」と引き合いに出すところにも年齢を感じさせます。
『冬のソナタ』ブームからもう20年近く経過しましたね。
本作は「若者向けだから、ここはティラミスだ!」と言い出すような悲惨さを感じてしまいます。
今ならハットグやジーパイを食べているのに、一体どうしたことか……と。
話を戻しましょう。
『どうする家康』の成功要因は、ドラマの質そのものではなく、報道やファンダムの誘導の仕方によって決まるということ。
勢いの形成が重要です。
狡いといえば狡い。
しかし、ブランド力がありファンの多い役者さんが出るし、題材やスタッフの知名度は高く、去年の勢いをかき集めれば、「今年の大河は成功だ!」というイメージを形成できなくもない。
問題は、スタートで勢い作りに失敗したところでしょう。
さぁ、どうする視聴者、どうするメディア。
-

本多忠勝の生涯|家康を天下人にした“戦国最強武将”注目エピソード5選とは?
続きを見る
あわせて読みたい関連記事
-

徳川家康の生涯|信長と秀吉の下で歩んだ艱難辛苦の75年を史実で振り返る
続きを見る
-

築山殿の生涯|息子の信康と共に殺された家康の正室 夫には重たい女だった?
続きを見る
-

石川数正の生涯|なぜ秀吉の下へ出奔したのか 豊臣政権の崩壊後はどうなった?
続きを見る
-

本多忠勝の生涯|家康を天下人にした“戦国最強武将”注目エピソード5選とは?
続きを見る
-

酒井忠次の生涯|屈強な三河武士団をまとめ 家康を支えた徳川四天王の最重鎮
続きを見る
-

今川義元の生涯|“海道一の弓取り”と呼ばれる名門武士の実力とは?
続きを見る
-

織田信長の生涯|生誕から本能寺まで戦い続けた49年の史実を振り返る
続きを見る
文:武者震之助(note)
【参考】
どうする家康/公式サイト











