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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第2回「兎と狼」】
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どうする視聴率
早速ですが、放送直前に公開した私の予想記事が外れました。
2023年大河ドラマ直前予想『どうする家康』はどうなる?消せない懸念
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この部分です。
・再生回数は低迷するけど、視聴率はそこそことる
昨年の勢いを汲み、今年の出演者の顔ぶれからして、最初ぐらいは注目されると思ったら、思わぬ低調ぶりでした。
◆大河「どうする家康」初回視聴率、関東15.4% 歴代2番目の低さ(→link)
『西郷どん』と同率、過去2番目の低さで、過去最低は1989年『春日局』だったことを考えると、近年では実質最下位とも言える出だしです。
どうするBL大河
第2回放送をめぐっては、BL要素に着目したネット記事が早くも出回りました。
◆ 松本潤『どうする家康』、「BL大河」と話題のワケ――岡田准一のセリフ「俺の白兎」がトレンド入り!(→link)
大河ドラマでBLを推してくるとなると、なかなか厄介です。
振り返れば2009年『天地人』がBL漫画を出し、2018年『西郷どん』でもBLが押し出されましたが、余計なお世話としか言いようがありません。
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BL狙いではなく、多様性を尊重するように出した2022年『鎌倉殿の13人』は、そこを読み解かれないどころか、歴戦の腐女子は萌えないだのなんだの、妙な誤解も生じました。
こうした歯がゆい状況をどうにかできないものか。
そう思っていたら、海外ドラマこんなことがありました。
◆「ウェンズデー」はなぜクィア・ベイティング批判をされたのか(→link)
こういった広報からドラマまでの一連の在り方を、クィアな人々を餌で誘きよせるマーケティングの手法「クィア・ベイティング」であるとして、様々なメディアが批判した。
カナダの総合エンタメサイトScreen Rant※2は「クィア・ベイティングとは、LGBTQ+の表現がかつてないほど増えている時代において、視聴者を維持するためだけにLGBTQ+の関係をからかう厄介な行為」と説明し、主要なメディアが未だにドラマの中心からクィアなストーリーを排除していると指摘。
オーストラリアを拠点とするポップカルチャー専門のメディアJUNKEE※3も人間性よりも利益を優先させる陰湿な戦略であると非難した。
クィア・ペインティング――なるほど、客寄せのように性的マイノリティを扱う手法は批判されているんですね。
あの信長から家康への執着なんて、ハラスメントじみていて、そもそもどこにトキメキ要素があったのでしょうか。
客寄せとして狙ったシーンだとするならば、一体いつの時代の作品なのかと呆れるばかりです。
萌えの使い方もあざとく、錚々たる役者たちにこんなことをさせてどうしたいのですか?
どうする岡崎
個人的な意見で申し訳ありませんが、大河ゆかりの地が観光誘導を狙う動きには言いたいことが山ほどあります。
観光モデルとして古い。
昭和の時代ならば家族旅行を見込めたのでしょうが、日本の家族観や旅行観も変貌するのに、いつまでもしがみついていたら誰も興味を持ってはくれません。
実際、ソーシャルゲームとのタイアップを狙う自治体も増えていて、『刀剣乱舞』などかなり上手にやっているでしょう。
大河と観光となると、北海道と沖縄の不公平感についても、物言いしたくなります。
両者は、他の観光資源が多いから放っておけばよいとでも?
北海道は『ゴールデンカムイ』を応援していますが、そういう問題ではないでしょう。
◆「どうする家康」今度はどうする? 家康生誕地が狙う脱「トラウマ」(→link)
なるほど。こういう地域差もありますよね。
しかし過去の事例にも注目してみますと……。
◆視聴率ワースト危機『花燃ゆ』 井上真央が後始末させられる(→link)
ドラマの迷走に大きな被害を受けたというのが、文にゆかりのある山口県防府市だ。
長州(山口県)出身の文と夫の楫取素彦(大沢たかお・47才)は、富岡製糸場のある群馬で活躍した後、防府市で30年以上の余生を過ごし、ふたりの墓もここにある。そこで市は1億2000万円をかけて『ほうふ花燃ゆ大河ドラマ館「文の防府日和。」』を作り、ドラマ初回に合わせてオープンした。
JR防府駅近くの複合商業施設内にあるドラマ館には番組関連のパネルや撮影衣装がズラリ。
ドラマの舞台となり、知名度がアップして市民や観光客が多数来場―と見込んでいたのだが、雲行きが怪しくなった。
「当初、最終回までの数話は防府市がドラマの舞台になり、この地に日本初の仏教系の幼稚園を設立した文が園児らにおにぎりを作るシーンなどがあるはずでした。ところが、序盤の長州編の視聴率がイマイチで、群馬に舞台を移すとやや上向きになったので、脚本を変更。最終回は東京にある鹿鳴館で文と楫取がダンスを踊る華やかなシーンになり防府市でのシーンは一切なくなってしまったんです。ドラマ後のナレーションで触れる程度でしょう」(前出・NHK関係者)
どうするお粗末VFX
前回のレビューで私も指摘しましたが、あのお粗末VFXはやはり散々な評判です。
◆「本当にどうするの」松本潤主演の大河ドラマ『どうする家康』が低視聴率のスタート…韓国での反応は?(→link)
◆ 「松本潤は乗馬NG?」の声まで…『どうする家康』のCG多用演出が大不評(→link)
これについては「合戦シーンでの馬の安全確保のためだ」という表明が公式からありました。
何を言っているのか……。
なんと虚しい大義名分でしょう。
動物愛護だから、あのしょうもない乗馬CGだというのは、いわば紙ストローみたいなものだと思います。
いくらエコロジーだのSDGsだの言われたところで、あの紙ストローに納得できますか?
しかも他の店では、味にさほど影響がない生分解性ストローを使っている。
こうなったらイライラしませんか?
撮影時の動物愛護は確かに重要な課題です。多くの国でそこは対策をしています。
さんざん取り上げてきた『ゲーム・オブ・スローンズ』では大胆に馬が死にます。
しかし、一からCGで作った馬を投入しているので問題はありません。
本物の馬を使っていて、かつ難易度の高い『鎌倉殿の13人』はいかがでしょう?
障害飛越で馬が怪我するかもしれない。あれは動物虐待大河だ!って、なりますか?
ここで1970年代、半世紀前の撮影の話を持ち出さないでください。あくまで2023年で比較しましょう。
他のドラマではでは安全に配慮しつつ、きちんとした乗馬シーンをできている。
それが今年はできてない。そこを指摘されたら大義名分とばかりに動物愛護を振りかざす。あまりに見苦しい言い訳。
要するに、資金や時間がなかった、あるいは事前の取り決めでそうなったのですよね?
ドラマ『大奥』では、冨永愛さんが大河常連のバンカー号を颯爽と乗りこなしていました。大河でできないなんて通じません。
これは馬に限った話ではなく、『麒麟がくる』や『鎌倉殿の13人』のスタッフが、今年は『大奥』にいるのでは?
『大奥』の脚本家は、『おんな城主 直虎』を描き、三谷さん『真田丸』の後でもバトンを引き継げると証明した森下佳子さんです。
作品の出来からして、どうしてもそう感じてしまいます。
あるいは正月時代劇『いちげき』も傑作でしたが、それらと比較すると『どうする家康』の熱意の無さは如何ともし難いものがある。
VFXを利用するなら、上手に視聴者を騙してほしい。ただそれだけです。
ちなみにこうした流れの中、
「いつか人間の兵士までCGになったらどうしよう、なんちゃって!」
なんて意見も見かけましたが、10年前の2013年『八重の桜』の時点で、すでにモーションキャプチャを使用したCG兵士は出ています。
全ては“作り手のやる気次第”ということがよくわかりましょう。
善く戦う者は、これを勢に求めて、人に責めず
今年の『どうする家康』は、一昨年の『青天を衝け』と大差のない出来に思えます。
どちらもわかりやすくて勢いはある。
孫子で言うところのこちら。
善く戦う者は、これを勢に求めて、人に責めず。『孫子』「勢篇」
よく戦うものは、勝因を勢いに求めて、人を頼りにしない。
勢いはあるから、中国スマホゲームのおバカ広告みたいで、好きな人には楽しいのかもしれません。
◆「極道幹部を超高温サウナで倒して組長に昇格」中国のスマホゲームがおバカな動画CMを大量出稿する理由 日本で流れているのは「中国の地方都市向け広告」 (→link)
もっとも有名なのは、「マフィア・シティ‐極道風雲」(Yotta Games)だろう。
サウナに入る極道幹部にぞんざいな扱いを受けて怒った部下がサウナの温度を上げて幹部を倒し、自らが幹部になる様子を描いた動画だ。
こういった“俺最強”のノリがありますよね。
信長なんて、それこそマフィア系スマホゲーのレベル99幹部みたいに見えます。
ただし、ドラマ自体に勢いはあっても、報道とファンダムの動向については、わずか2回放送にして、早くも暗雲が立ち込めてきました。
特にサラリーマンの象徴・日刊ゲンダイさんはお気に召さないようで、いきなり叩きモードに突入しています。
◆「どうする家康」喜ぶのは松潤ファンだけ? 紅白に続く“年配層切り捨て”で「どうなるNHK」(→link)
◆ 「どうする家康」もやっぱりか! なぜNHK大河ドラマでは“青春編”がどんどん長くなる?(→link)
まぁ、普段から叩き姿勢が売りなメディアだけに特筆すべきものではないかもしれませんが、こうした「若い者向けにチャラチャラした作品にしてけしからん!」という記事はこちらにもあります。
◆タヌキ親父の家康にリンクしない松潤、ぶっ飛んだ演出は「鬼滅」の見過ぎ? どうする今年、大河見る?大河ドラマ「どうする家康」は若者支持を得られるか(→link)
この手のメディアが大河を叩くのは、それだけ読者が思い入れを抱いているからでしょう。
『どうする家康』が若者を狙っているとは、とても思えません。
笑いのセンスがいちいち「おじさん構文」じみていて、自認はともかく実年齢は若くない層を狙っていると思えます。
最近の大河と言えば、Twitterトレンドがしばしば話題になりますが、あれも本物の若者はあまり熱心に使わないプラットフォーム。
関連コメントで「韓流ドラマのような無茶苦茶さだ」と引き合いに出すところにも年齢を感じさせます。
『冬のソナタ』ブームからもう20年近く経過しましたね。
本作は「若者向けだから、ここはティラミスだ!」と言い出すような悲惨さを感じてしまいます。
今ならハットグやジーパイを食べているのに、一体どうしたことか……と。
話を戻しましょう。
『どうする家康』の成功要因は、ドラマの質そのものではなく、報道やファンダムの誘導の仕方によって決まるということ。
勢いの形成が重要です。
狡いといえば狡い。
しかし、ブランド力がありファンの多い役者さんが出るし、題材やスタッフの知名度は高く、去年の勢いをかき集めれば、「今年の大河は成功だ!」というイメージを形成できなくもない。
問題は、スタートで勢い作りに失敗したところでしょう。
さぁ、どうする視聴者、どうするメディア。
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【参考】
どうする家康/公式サイト