大河ドラマ『利家とまつ』

大河ドラマ『利家とまつ』/amazonより引用

大河ドラマ感想あらすじ

大河ドラマ『利家とまつ』レビュー 昭和平成の良妻賢母は現代社会にどう映る?

平成14年(2002年)に放映され、大河ドラマとしては第41作目にあたる『利家とまつ』。

信長や秀吉の片腕として知られる前田利家を唐沢寿明さんが演じ、その妻・まつを松嶋菜々子さんが演じました。

松嶋菜々子さんは、今年の大河ドラマ『どうする家康』でも、家康の母親・於大の方として登場して話題となりましたが、“まつ”時代はどんな女性を演じていたのか?

さっそく振り返ってみましょう。

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おんな大河という伝統

歴史とは、当然のことながら男性だけではなく、女性によっても構成されるものです。

昭和42年(1967年)3作目の『三姉妹』(舞台は幕末)以来、大河でも女性目線の作品を作られて来ました。

中でも女性目線の戦国モノは、昭和56年(1981年)19作目『おんな太閤記』がヒット作として記録に残っております。

血生臭く、内容も複雑な歴史ものを、どうすれば女性にも見てもらえるのか?

そこを追い求める路線があったのです。

2000年代の『利家とまつ』や『功名が辻』(2006年・第45作)は、そうした流れを汲み、好評を博した成功作として認識されています。

2006年大河ドラマ『功名が辻』(→amazon

 


おんな大河をさらに突き詰める

当時の世相に目を向けますと、1999年は「男女共同参画社会基本法」が施行されました。

『利家とまつ』の制作発表時も、男性の陰に隠れた女性にスポットライトを当てるものとして、

「二人から始まる加賀百万石ストーリー」

「戦国最強のホームドラマ」

として宣伝されたものです。

では、女性への配慮とは何か?

本作出演者を見れば理解できます。

『利家とまつ』は、主演の松嶋菜々子さんと唐沢寿明さんという豪華な主演で話題を集めました。民放トレンディドラマで見る顔を、大河に引っ張って来た感がそこにはあったのです。

しかも、松嶋さんと織田信長役の反町隆史さんは、入籍直後の夫婦共演です。

嫌な言い方ではありますが、まさしくワイドショー的な興味関心を引くキャスティングでした。

織田信長/wikipediaより引用

この作品における前田一族は、まさしくイケメン揃い。

利家の弟・佐脇良之は竹野内豊さん。時代劇初挑戦でした。反町隆史さんと1997年に共演した『ビーチボーイズ』が話題でもありましたね。

マンガでお馴染みの前田慶次郎はミッチーこと及川光博さん。史実では利家より歳上のはずですが、そこは『花の慶次』と同じく無視してでもイケメンに。

利家の嫡男・前田利長には、初々しさが残る伊藤英明さん。『麒麟がくる』では斎藤義龍の熱演で注目されましたね。

ともかく、令和現在おなじみとなったイケメン戦国乙女ゲーのようなキャスティングだけでも『利家とまつ』は見る価値アリというような仕様です。

台詞回しも、現代語のようにして難易度を下げています。大河では定期的に取り上げられる流れを、ここでも取り入れました。

ドラマの筋も、サラリーマン夫妻が共感できる工夫が随所にあるのです。

 


コミカル&シリアス夫婦漫才 そして加賀百万石へ

本作は、天下取りを目指し、ナンバーワンを目指す男の野心を控えめに抑えています。

主役周辺はナンバーツーであることに満足し、友情や飲みニケーションで和むような作りを目指していたのです。

ターゲット・オーディエンス(総低視聴者層)は、サラリーマン夫婦でした。

主演の前田利家とまつだけでも豪華ですが、それと比べられる夫婦も豪華!

佐々成政とはるは、山口祐一郎さんと天海祐希さん。

豊臣秀吉とおねは、酒井法子さん。

夫婦関係のトライアングル、明暗を描くことが、本作のみどころでした。

余談ですが……『利家とまつ』と『麒麟がくる』には、出演者の薬物スキャンダルという共通点があります。

麒麟がくる感想あらすじ

『麒麟がくる』(→amazon

『利家とまつ』は、放送後の発覚です。それでもNHK公式ガイド本ですら、おね役が誰であるか記載されていないことすらあります。

トライアングルとなった夫婦の確認すら、奥歯にものが挟まったようになるもどかしさと申しましょうか。

それを名場面集でどう処理するのか?

非常に不純ながら、気になるところではあります。

もうひとつ、不純な噂でも。

『利家とまつ』の決定当時、こんな噂がささやかれ、記事にもなりました。

加賀ゆかりの政治家が、本作を誘致したことで観光貢献アピールを狙ったのではないか――そんな疑惑です。

ドラマは、高度経済成長期のサラリーマンを満足させるようなものでしたが、放映当時は平成。

終わることのない不景気が続く中、地方経済再生のため少ないパイの奪い合いが行われていたのです。

大河は一年限定であります。

それでも当時の地方観光にとっては魅力的なブランド。

『利家とまつ』に関して流された噂の真偽はさておき、大河と観光の利害関係は常に意識されるところでもあります。

そうすると全国一律の受信料を徴収しておきながら、

・北海道と沖縄が舞台になりにくい

・戦国モノは中部に集中しやすい

・幕末作品は雄藩エリアに集中しやすい

というような特定地域に偏りがちな状況は不平等ではないでしょうか。

もちろんNHKとて視聴率の呪縛からは離れられませんから、数字の取れやすい人気キャラにスポットを寄せたい事情はわかります。

しかし、何度も同じような舞台を擦るよりは、新しく未知なる魅力やキャラクターを伝えるというのも大事な一手だとも思います。

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