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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第7回「わしの家」】
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どうするキャスティング
スタートから出鼻をくじかれるばかりか、小規模ながらも炎上を繰り返し、挽回どころか毎回ファンを減らしている。
そんな悪評を感じ取ってか。
ドラマのキャスティングに難航していませんか?
以前『花燃ゆ』と同じで話題性ばかりを重視していると指摘しましたが、今度はこんな記事。
◆「どうする家康」藤岡弘、長女・天翔愛&次女・天翔天音姉妹 大河&ドラマ初出演“父娘共演”巫女の一味役(→link)
話題作りに必死ですね……というか、こういう話は心の底から好きな感じが伝わってきますね。
どうする宣伝戦略
私は芸能ニュースには全く興味がありません。
しかし大河の出来が悪すぎると、どうにも、そこを見ていかねばならないようでして。
『どうする家康』は、映画とのタイアップを盛り込んだ広告戦略を感じます。
「あの『レジェンド&バタフライ』の脚本家が大河でも見られる!」
ってやつで、ある意味、伝統的ではありますね。
先日放映されたドラマ『大河ドラマが生まれた日』でも描かれたように、映画とテレビ局が時に歩調を合わせるのは日本芸能界の伝統
実際に相乗効果があったのが1980年の大河ドラマ『獅子の時代』とされています。
あれは映画界の大スター・菅原文太さんが主演というのが売り。
「映画中心の俺が出るんだから、それなりの意義がなければ出ない」と文太兄さんも語ったとか。
確かにそれはその通りで、大河出演を契機に彼は幕末通になりました。半藤一利さんと対談したほどです。
そういう麗しい関係でなく、今年は計算ありきなんですよね。
『岸辺露伴は動かない』と、露骨に絡めていて、オープニングや衣装。そして青年時代の露伴役まで出してくる。
◆なにわ男子・長尾謙杜に「批判と超期待」の声が入り乱れるワケ!嵐・松本潤主演NHK『どうする家康』&「超ガチンコ映画」に抜擢の“実力”と「ホンモノ志向」 (→link)
公共放送でこうまで露骨な仕掛けはよいのでしょうか?まぁ、今更ですけどね。
ただ、この戦略はどうにも誤算があるようで。
◆1週間で『鬼滅の刃』に首位を明け渡し…木村拓哉“信長映画”「苦戦の裏にジャニーズのお家事情」(→link)
映画とのタイアップは、成功によって成立します。
『岸辺露伴は動かない』の原作とドラマ版は、たしかに傑作。NHKも相当慎重に作っています。
ただ、今回はどうなるか……。
これまでだって負ける気がしない戦略を組み立てて失敗してきていますよね。さて、どうなるのでしょうか。
鼎(かなえ)の軽重を問う
上記見出しにあるような
「鼎(かなえ)の軽重を問う」
にはどんな意味があるか?
春秋時代、楚荘王が九鼎の重さを問いかけた――これの意味するところは?
九鼎は夏王朝・殷王朝から周王朝に渡った王位の象徴である。その重さを問うということは、暗に九鼎を持ち帰る事を意味します。
つまり楚が周王朝に取って代わる事をにおわせました。
『春秋左氏伝』より
どうする大河ドラマ――誰かがそう問いかけているように思える今年。
他にもこんなニュースがあります。
まずはおなじみ日刊ゲンダイさんから。いつも本作に関して厳しい意見を披露している日刊ゲンダイさんが、どうにも甘くなりました。
◆松本潤ひと安心? NHK大河「どうする家康」復調ムードも課題山積…大コケ許されないワケ(→link)
◆NHK大河「どうする家康」の評価に変化 新解釈プラスし“歴史ファンタジー”で視聴率好転(→link)
なぜか?
理由はこの辺にあるのでは?
◆大河「どうする家康」松本まりか女大鼠は主役を食った!「くノ一」がドラマで大ウケ(→link)
松本まりかさんの色気に便乗ですね。
◆NHK大河「どうする家康」妖艶くノ一登場! ダメダメ松潤の男気にSNS大盛り上がり…第6回見どころ(→link)
ああいう手裏剣を投げたところで威力はたいしたことがありません。
『麒麟がくる』の菊丸は農民のフリをして、薬草が生えている場所を知っています。そのほうが実践的です。大麻を炊いて敵を無力化したり、毒を使う方がよい。
話を戻しましょう。
そんなゲンダイさんから、かつてこんな記事が出されていました。
◆濡れ場、脱ぎ場の調整係だ? なんとも疎ましい職種が登場(→link)
過激なシーンを撮るときには、女優が萎縮してしまわないよう間にコーディネーターが入ってカウンセリングをし、できるだけ不安を取り除いて撮影する――。
そんな取組に対し
「いらんわ!」
と一蹴したものです。
これはなにも日本だけでなく、イギリス人名優も反対し、物議を醸したこともありました。
◆セックスシーンで女性俳優への保護は必要ない、『GoT』ショーン・ビーンの発言に波紋(→link)
しかし、時代と価値観は変わります。
ついにNHKでも導入されたのです。
「大奥の舞台裏」として日々、制作の裏側やオフショットなどを公開している番組公式Twitter。13日には「大奥ではNHKで初めてインティマシー・コーディネーターを導入しました」と明かされ、「ヌードやキス、セックスなどインティマシー(親密な)シーンにおいて、制作側の意図を十分に理解した上でそれを的確に俳優に伝え、演じる俳優を身体的・精神的に守りサポートする役割の方です」「コーディネーターが介在する事で、不安や懸念のある俳優が、場合によって『NO』と言える環境を作り、萎縮することなくリラックスした状態で演技に最大限集中してもらうことを目指しました」と説明した。
◆「NHKがここまで」『大奥』で過激な性描写ができた理由に専門コーディネーターの尽力と“3つの約束”(→link)
「最初はコーディネーターが参加することに100%賛成じゃなかった方から、入ってもらってよかったと言ってもらえることが増えました。また、以前に現場をご一緒したことがある方とのお仕事の際には、私が提案する前にすでにクローズドセットのつもりでいてくださっていたり、少しずつですが意識が変わってきているなと感じます」
この役割に反対する人というのは、何か勘違いしていませんか。
エッチな本を読んでいたら取り上げた学校の先生とか母親とか、そんなイメージでも抱いているのではないかと思えてきます。
むしろ逆ですよ。
しっかりとした親密な描写ができるのは、インティマシー・コーディネーターがあるからだと思えます。
『大奥』では徳川綱吉役の仲里依紗さんが、かなり大胆なシーンが披露され、その背景にインティマシー・コーディネーターがいたことが明かされました。
一方、『どうする家康』はどうか?
私は本レビューで、瀬名が“夜伽役”になる場面では、どうせインティマシー・コーディネーターもいないだろうと指摘していました。
それが『大奥』がNHK初だったということで、やはり大河にはいなかった。
今年のくノ一で盛り上がっている様子を見てから、『大奥』とその反響を思い出すと、苦笑せざるを得ません。
むしろ『どうする家康』は、小中学生が喜びそうなラッキースケベ狙いに思えます。
自分から動かないけれども、セクシーなお姉さんがいてムフフなサービスがある。今週の巫女はその象徴でしょうね。
どうしてお子様はラッキースケベが好きなのか?
そりゃ、アプローチの仕方がわからないからであって、大人になったら卒業しないとね。
さて、このドラマはそんな一生青春状態のおじさまを救うセラピーだとは思います。まるで近代家父長制ファンタジーの趣がある。
人類は全員ヘテロセクシャルだ。女の価値は子を産み育てることにある。女には拒否権も知能もない。
そういう価値観ですので、当事者の心理的な負担を軽減するインティマシー・コーディネーターが邪魔者に思えるのでしょうね。女は黙ってセクシーに脱いでろと。
そういう明治から昭和の価値観に合わせてきて、その古臭さだけに安堵する視聴者のノスタルジーを煽るのだけはうまい。
しかし、それでは時代遅れです。
大河が、そんな特定の層、しかも声が大きな層に忖度して、メディアを靡かせる――なんて作りをしていて大丈夫なのでしょうか?
本当に斬新で視聴者を考えさせ、きちんと歴史を扱ったドラマの方がふさわしいのでは?
それは何か?
NHKドラマ10の『大奥』です。
今年の実質的な大河は『大奥』だよな……と呆れていたところ、実際にそう感じたのは自分だけでなく、世間でも同意見が広がり始めていることを感じます。
◆NHK『大奥』に「こっちが大河」嵐・松本潤超え評価!綱吉・仲里依紗の圧巻演技と155万回超再生(→link)
上記のような軽めのネットニュースから、朝日新聞の紙面にまで掲載されている。
◆(テレビ時評)「大奥」は時代劇か 太田省一(→link)
大河ドラマは、映画に負けないような面白い時代劇を作るところから始まりました。
初期は架空主人公の時もありましたし、現在の我々が定義する大河とは異なります。
時代考証をつけ、時代の変遷を描く。そこを守れば通用したのです。
『大奥』はSF要素(ちなみに男女逆転はファンタジーではありません)があるため、大河に入らないと思われるかもしれませんが、今年は大河よりもはるかに綿密で勉強になります。
原点回帰したのならば『大奥』こそ大河でよいのではないか?
上記のテレビ評はそういう趣旨のことが記されています。
その通り。どこかおざなりで何かがおかしい大河より、『大奥』の方がはるかに歴史劇として良心的で高度です。
あのドラマは、大河に対して鼎(かなえ)の軽重を問う出来となっています。
なぜこんなことが起きているのかはわかりません。
大河を見ると、NHKは時代劇を作る力をなくしたように思えるけれども、『大奥』でそうではないとわかる――この奇妙な事態は一体何なのでしょう。
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【参考】
どうする家康/公式サイト