どうする家康感想あらすじレビュー

どうする家康感想あらすじ

『どうする家康』感想あらすじレビュー第17回「三方ヶ原合戦」

2023/05/08

浜松をめざし、徳川家康を討つ! 風の如く進め!

と、風林火山から風だけを抜き出す、残念信玄の進軍で第17回放送が始まります。

大河ドラマにおける合戦の面白さは、史実がどうであれ『もしかして家康が勝ってしまうんじゃないか?』とドキドキさせるところにあると思うのですが、今回はそんなこと一切なく信玄が勝つことが明白です。

三河武士は妻とのイチャイチャしか頭にありません。武田軍にとってみれば、まさに鎧袖一触。

ただし、徳川軍も黙ってはいません。必殺のアイテムがあります。

おにぎり!

本作は失敗大河のリベンジを狙っているかのような作品ですので、『花燃ゆ』のキーアイテムを推してきます。

やたらとおにぎりを握り、和気あいあいとした雰囲気でイチャラブ需要に応じる一方で、本多忠真はアル中をアピールです。

もうすぐ死ぬから、その前に個性を演出せねばなりませんね。アクションが得意な波岡一喜さんの無駄遣いには無念としか言いようがありません。

亀姫と五徳もわざとらしく登場していますが……当時の武士って、そんなに一家団欒するものなのでしょうか?

 


あらすじ:古の腐女子風

オイィィィィ助けてくれ〜〜〜〜! 信玄がガチ総攻めなんだがw 総受けの家康どうすんのw

そう思っていたら、信長が助けにキターーー!

二人でイチャついているうちに、援軍を出してくれるって。

5,000!

いや、3,000だ!

手を重ねたところでは、思わず変な声出たwww 地上波で何やってんすかwww

家康は信長に励まされて、ついに信玄を防ぐために打って出たw

でもスーパードS攻め相手につらいよねw 信玄も家康にエロスを感じているのかw 遠くからみてキュンキュンしててワロスワロスww

 


どうするヘアメーク

何度もダメ出ししてうんざりしてきましたが、このドラマの女性は、髪の処理がおかしい。

顔から肩の近辺ちょろりとさせる。

これは悪名高い大河ドラマ『天地人』でもあったスタイルで、センスが悪いとしか言いようがありません。

女性がつけている花も気になります。

ああいう花飾りというのは、髪の毛を結った状態でないとなかなか刺せません。ヘアピンでもなければ厳しい。

それなのに、井伊虎松ガールズはそういう髪飾りをつけている。しかも造花だと見てわかるため、痛々しいほど。

時代劇の醍醐味って、できる範囲で当時のおしゃれを楽しむところもあると思います。

むろん、ある程度の逸脱は許容範囲であり、お羽黒や眉剃りをやってなくても誰も文句は言わないでしょう。

しかし、本作はそうした適正範囲を超えていて、しかもセンスが悪いから辛いのです。

なぜこんなことに?

そう考えると、作り手が日本古来の美意識を肯定的に見ていないからではないでしょうか。

長所を生かすように組み立てるのではなく、自分がいいと思うものを雑に加えていく。そのせいで無茶苦茶になっているのでしょう。

 

どうする『大奥』との格差

ドラマ10『大奥』の仲里依紗さんは、原作綱吉のツヤツヤリップを再現するため、工夫を重ねたそうです。確かに一目見たら忘れられない艶やかな唇でした。

そういう原作や流行を踏まえた逸脱は、アリでしょう。

往年の名作『独眼竜政宗』だって、当時の流行メイクのせいか、いま見直すと女性の眉毛が大変しっかりしています。

上方修正するならばよいのです。

しかし、今年はどうなのか。それがよくわかるのが『大奥』の當真あみさんです。

田沼意次を演じる當真あみさんは、見るからに聡明で、キリッとしている。それでいて愛くるしさもある。和服の所作も素晴らしく、サッと立ち上がるところは見事でした。

そんな彼女の魅力すら潰すのがこの大河です。

◆「大奥」出演の16歳・當真あみが大河デビューへ 愛らしく天真らんまんな亀姫役(→link

愛らしく天真らんまんを強調しすぎたせいか、ヘアメイクも何か幼く見せようとしているし、顔もきょとんとしていて、魅力が生かされているとは思えません。

つくづく役者の魅力を失わせるドラマですよね……。

もう一人注目は、この大河と朝ドラ『らんまん』に出演している田辺誠一さんです。

朝ドラでは思う存分に本領発揮していて目が離せない。

また、『らんまん』で主人公の姉・綾役を好演している佐久間由依さんが、『ひよっこ』では有村架純さんと共演したものです。

出演作品により分かれる道を見て、複雑な気持ちになります。

 


どうする二番煎じ狙い

「我らが桶狭間を成す時ぞ――」

このセリフで、本作家康の愚かさがわかってしまうから辛い……。

伝説的な大勝利を前例として、その繰り返しを考えると、軍隊は徹底して弱くなります。やってはいけません。

これは日本史を考えるうえでも重要でしょう。

日露戦争は辛勝でした。

実質的には英米が介入した外交交渉でどうにかなりましたが、以降、これを日本人の本質と考えてしまう悪癖が蔓延しました。

兵器開発から何から何まで、後塵を排する。第一次世界大戦以降の対応も不十分。日露戦争で下士官級が大勢戦死したため、引き継ぎもできない。

それを「日本スゴイ!」の精神論で埋めるようになった。

海軍は第一次世界大戦で弱点が露呈したイギリス海軍式戦法が抜けきれず、演習では奇跡的大勝利であった日本海海戦をお手本にして繰り返すばかり。

こうして日本軍は弱体化してゆきます。

物資面での不足を補うメンタル栄養剤として悪用されたのが、戦国武将の逸話です。

日本軍参謀本部が編纂した『日本戦史』という書籍があり、ざっとまとめるとこんな論調です。

「日本人は奇襲が得意なんだ! 物資不足でも奇襲で勝てる!」

桶狭間はその代表格で、そりゃもう褒められます。とはいえ、それでは勝てないことをアジア・太平洋戦争で証明したわけですが……。

こうした価値観を敗戦で払拭できればよかったのに、戦後もしぶとく残り続けてしまった。

「一撃必殺!」という家康のくだらないセリフからも、こうしたギャンブル感覚でテキトーに歴史を読み解く、そんな悪癖を感じてゾッとしてしまうのです。

歴史の上っ面だけ拾って物語を作ろうとするときに、やらかしがちなミスと申しましょうか。それが本作お得意のドラマ制作手法になっている気がしてなりません。

 

どうする襟だけ別の色

なぜ信玄は襟だけ別色の衣装なのでしょう?

和装は襟だけ別の布地にすることはありません。襟だけ別につける「半衿」はありますが、そうにも見えません。

このドラマはどうにも和装の基本的な構造も踏まえていない。

信長の陣羽織も妙です。ほんとごめんなさい、ゴミ袋かレインコートに見えてしまって……リアルに悶絶してしまいました。

大河ドラマという貴重な枠ですから、せめて和装だけでも台無しにするのは止めて欲しいです。

 

どうする弓矢

『鎌倉殿の13人』の時代は、個々人の剛弓が自慢の種でした。

それゆえ矢に自分の名前を書き、源頼朝を射たことがバレてしまった山内首藤経俊なんていう人物も出てくるのです。

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こうした弓矢を個人技能として重視する流れも、集団戦により変わってゆきます。

戦国時代となると、集団戦術に組み込まれてゆき、卑怯とされた毒矢を用いることも出てきます。

中世から近世に向け、そう変化していった。

今年の大河ドラマは、そうした弓矢の戦術的な変化を意識しているように思えません。

弓を引いた時にキリキリと音がする――そういう緊張感が見たいのに、本作の映像はRPGのアーチャー感覚と言いますか。

カッコつけている割には弓矢の扱い方から和弓の魅力が削がれていて、『鎌倉殿の13人』を懐かしむばかりです。

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どうする返り血

戦場で無傷だった伝説を持つ本多忠勝。

武田軍と遭遇して戦闘に発展しながらどうにか本陣へ戻ってきましたが、返り血を浴びてドヤ顔するのって、いかにもフィクションなんですよね。

傷口から血が入るとまずいことは、経験則でそれとなくわかっている。

プロなら返り血を浴びたら、ドヤ顔などせず黙々と洗浄して欲しいものです。

このドラマって、義元の首を投げさせたりしてインパクト映像を求める割に、地道な描写では、本気で人を殺るための覚悟や経験が見えて来ないんですよね。

『鎌倉殿の13人』の善児が懐かしい。

 

どうする使者

水野信元の態度があまりに悪くて驚きました。

使者を殺すということは禁忌であり、どの家でも厳罰を定めています。

しかし、そんなルールがあるということは、それだけ危険だからこそ。

なのになぜ、あのような煽り方をするのでしょうか。

本作では、今後も僧侶を使者とするような展開にはならなそうですね。本当に戦国時代とは思えない作品です。

 

どうする信玄の怒りゲージ

本作は、怒りの表現も単純です。

まるで、ゲージMAXになると必殺技を放つアクションゲームみたいな世界観と申しましょうか。

信玄はずっと家康に怒っていた。外交が複雑な戦国時代ですから、キレるとまではいかずとも、イライラしていた。

具体的に言えば、家康が勝手に今川氏真を助けて、北条と和睦したあたりには確実に怒ってましたね。

それが三方ヶ原の戦いを迎えて急激に怒りのゲージを上げてきたかのような感情表現。

瀬名の奪還だの、阿月のマラソンだの、場当たり的にどうでもいいような話が映像化される一方で、大河らしい大きな流れが見えてきません。

 

どうするBLとブロマンス

野原で語る信長と家康――そんなBL狙いはわかりました。

しかし、もはやNHKでその需要は無いでしょうよ。

今やBLというのも古く、時代はブロマンス(ブラザー+ロマンス)です。

兄弟愛のような濃厚な愛情の先に見える何かを求める。それがブロマンスというもの。

家康と信長のように、愛情など育んでおらず、いきなりタップしたら顔を近づける雑なソシャゲ。古臭すぎてもう辛いのです。

NHKのセンスが古いのか?というと、そうではありません。

例えば『麒麟がくる』の脚本家・池端俊策さんは「親友を討つ苦しみを描きたい」と語っておりました。

信長を演じる染谷将太さんは「もうずっと十兵衛(光秀)ラブ」と語っていました。

池端さんが狙ったわけではないのでしょうが、濃すぎる友情を描いたらブロマンスになった。そんな巧みさが見えました。

そして朝ドラ『らんまん』は、NHKが満を持してブロマンスに挑んでいます。

この作品では、言動が無茶苦茶な主人公・万太郎と、そのお付きである竹雄という青年が登場。

主従関係はあるものの、兄弟愛のような感情もあり、竹雄はずっと万太郎を心配し見守っています。

この万太郎が一人で上京するからお役御免だと告げたとき、竹雄は「あんた一人じゃ生きていけないよ!」と怒り、大喧嘩になりまして。この竹雄の逡巡だけで1回15分を使い切りました。

番宣でも「ラブラブカップルみたい」と呼ばれる万太郎と竹雄。これはNHK渾身のブロマンスですね。

ブロマンスは相手を大事に思う気持ちが大事です。心と心の通い合いですね。

そういう条件をきちんと満たしている作品がある一方、『どうする家康』が古臭い暴力的なBLとは、なんとも哀しくなるばかりです。

万太郎と竹雄の前では、信長と家康なんて風前の塵に等しい。もうこんなカップリングは解散させませんか。

 

どうする妻とイチャイチャ

なぜこのドラマは、三河武士が妻といちゃつく場面ばかり流すのでしょう?

昭和おじさんの妄想垂れ流しですよね。

発声がよろしくないから、セリフが聞き取れない。

聞き取れたところで昭和ホームドラマですから不要なのですが……ぶっちゃけて言いますと、時間稼ぎですよね?

本物の馬に乗るのは難易度が高いとか危険とか、散々、苦しい言い訳がメディアに流れていましたが、どうにも信じがたい。

三方ヶ原を描くとしておきながら、こんなボソボソとした口調のラブコメが続くなんて、誰が求めているのか。

 

どうする合戦の手抜き

本作の合戦は、どういうわけかいつも濃霧ですよね。快晴がまずない。

確かに霧と城は関係が深い。あえて霧がかかる場所に城を築くことはありました。

そうはいっても限界ってものがあるでしょうよ。

というわけで、杜撰な合戦描写をピックアップしてみました。

・霧で誤魔化す(が、誤魔化しきれていない)エキストラの少なさ!

・出演者も不安になるほどロケがない!

・歩兵のやる気ない歩き方からして、エキストラの指導は足りてます?

・陣太鼓を鳴らす意味があるのだろうか? スローテンポで何かおかしく感じる

・火をつけたエキストラが転がる? そんなことできるわけないでしょ!

・とってつけたような重苦しいBGMなのに、和風の要素がないため盛り上がらず

・甲冑も変

・移動速度がおかしい。テレポートでも使えるのかと思えるほど

・地形について真面目に考えていない。日本ではそんなにしょっちゅう会戦(大規模な陸軍同士がひらけた地形でぶつかること)になりません。森林、川、山が入り組んでいますし、平原は農地になっている

とまぁ、いかにも手抜きな描写が目立ち、それが積もり積もって緊迫感を失わせてしまい、何も盛り上がらないんでしょう。

『麒麟がくる』では、できていました。

・敵と味方で陣太鼓の打ち方が違う

・火がついて転がる雑兵がいる

・首を取るために叫んで戦場を駆け回る、そんな光秀の狂気よ

・ざんばら髪で配送する織田信秀も渋かった

・桶狭間で毛利新介が今川義元の首をとる場面は、ワイヤーアクションで迫力満点だ

・地形も考慮。桶狭間は高低差が勝利の鍵。美濃の合戦は川がポイント

『麒麟がくる』からわずか数年で、なぜここまで質が落ちたのでしょうか。

 

どうする井伊直政

先週も今週も、SNSでは『おんな城主直虎』がトレンドにあがる始末。

井伊直政が気持ち悪い柄の着物で登場し、しょうもないヘアメークをして、女連れで浜松城下に登場しました。

しかもまた「私は怪しい女ですぅ」スマイルを浮かべた千代までセットで出てきている。

なぜ井伊直政をここまで改悪するのでしょう。

戦見物に女を連れてくるって、人としてどうかしている。巻き込まれたらどうするのか。

彼女たちも暇ですか? 武田軍がやってくるのに、直政の追っかけをできるほど当時の女性は暇なのですか? 女を出すためならどんなくだらないシチュエーションでも使いますよね。

そもそも、この井伊直政が「遠江の民が恨んでいる!」と叫んだのも、わけがわかりません。

『おんな城主直虎』で描かれましたが、井伊谷は今川の圧政に苦しんでいた。

直政の父・井伊直親は今川に殺され、幼い虎松は逃亡生活を強いられるなどの苦労を重ねたのです。

むしろ徳川の支配を歓迎してもおかしくない。

それなのにこのドラマは何なのでしょうか?

単に『おんな城主 直虎』の逆張りした結果なのでしょうか?

「フィクションだから史実に添う必要が無い」とはその通りなのでしょうが、ここまでありえない設定してよいのですかね。

 

どうする信玄の視力

家康が籠城する浜松城の前にやってきた武田軍。

信玄が説明セリフで「家康は臆病だけど賢いの♩」と、勝頼にツンデレ解説する意味は一体なんなのでしょう。

あんな遠い距離でも「見えるよね」とか言ってて、独りよがり感が凄まじい。

Zoom会議でもしているつもりなのかな?

ところが、家康にしても「信玄、かかってこい!」とか叫んでしまうからズッコケてしまいます。

「かかってこい!」って、いい歳した大人のセリフとして相応しいですか。

何度も言いますが、本作の人物は『信長の野望』からステータス全数値マイナス50相応なほどに幼稚です。

弛緩したセリフが連続するから、どうしてもそうなってしまうのでしょう。

いつもいつも俳優陣が気の毒で仕方ありません。

 

どうする決断

今回は「打って出るかどうする!」とやりたかったのでしょう。

しかし、表面的になぞっただけで何も響くところがありません。

将が決断を下すとなれば、込み入った要素があります。その分析も必要です。戦国作品の大きな見どころとも言えるでしょう。

それを気持ちだけで適当に判断する。

つくづく頭を抱えたくなります。なぜ歴史にも、兵法にも興味がない人に、大河を発注したのか。本人も引き受けたのか。

 

どうするBGM

メインテーマを流すのは定番の技巧です。

それこそ『らんまん』では東京に向かう万太郎と竹雄の場面で流れました。感動しました。

それをこのドラマは三方ヶ原出陣で流す。

悲壮感も何もない。遠足にでも行くかのようでした。

 

どうする乗馬

思えば失笑の嵐となったVFX乗馬。

◆NHK総局長 「どうする家康」のCG乗馬シーンに理解求める「今は過程」(→link

その改善に挑んだ結果がコレだ!

・乗馬シーンを避ける理由が危険性考慮という説がSNSで展開されていましたが、バッチリ乗れるようで安心です!

・実際に乗っている場面とVFX合成の混合ぶりが不味い

・乗馬飲酒する愚か者がいるせいで、緊張感もリアリティも台無し

・無駄に長い。時間稼ぎがアリバイのようで何が何やら……

・乗馬できない説を覆したとはいえ、主演同士を比較しても『鎌倉殿の13人』のあとでは辛いものがあります

◆ 松本潤〝馬に乗れない説〟を打ち消した!「浜松まつり」で見事な乗馬を披露(→link

 

どうする雑な『孫子』

武田信玄と言えば『孫子』。

思い出したかのように今回の合戦で唐突に出してきました。

勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む。『孫子』「形篇」

勝てるものは勝利を確信してから戦い、負けるものは戦ったあとに勝利を求める。

孫子はキャッチーなフレーズが多い。

といっても、その部分だけを切り取って使うのはよろしくない。

「兵は詭道なり!」

(戦争は騙し合いだ!)

こんな風に叫びながら、背後から切り掛かるようなやり方がダメな典型例ですね。

孫子は、大前提としてキャッチーなフレーズで切り出し、その理由や中身を吟味するものです。

『麒麟がくる』では、斎藤道三と明智光秀が「敵を知り己を知れば百戦危うからず」を引用しながら語りました。

このあと、織田信秀との戦いにおいて、斎藤道三は巧みな戦術で勝利をおさめます。これは斉藤勢が強いだけでなく、織田勢が弛緩していたとわかる合戦でした。

そんな勝利を収めても、斎藤道三は浮かれない。

相手は豊かな経済力がある。立て直してまた攻めて来たらたまらない。

そう戦略を練り、娘の帰蝶を織田信長に嫁がせることとします。

斎藤道三は敵のことをよく把握しているからこそ、そうした戦略を立てることができる。

そういう中身のある描写でした。

それと比較すると、この信玄は家康に関して何かBLゲーみたいなことを呟くだけ。わけがわかりません……。

 

どうする「シン・三方ヶ原」

このドラマは、やたらと「シン・大河」というフレーズを使う記事が多いものでした。

そんなのは庵野監督だけでよいでしょう。

「真」は無双シリーズで十分です。

そう思っていたら、大河のサブタイトルになりました。

いいかげん頭に「真」をつけるセンスの悪さに気づいていただきたい。

◆松潤主演NHK『どうする家康』は「シン・大河」になる? 大ヒット大河ドラマ“勝利の方程式”とは | 2023年の論点(→link

ちなみに上記の記事はノベライズ担当者によるものですので、そういうセンスを共有できているのかもしれませんね。

 

どうするOBN(オールド・ボーイズ・ネットワーク)

先日、 NHKスペシャルで『“男性目線“を変えてみた』という素晴らしい番組を放送していました。

そこで紹介されたものがOBN(オールド・ボーイズ・ネットワーク)です。

◆「オールド・ボーイズ・ネットワーク」とは?(→link

今年の大河はOBNそのものに思えます。

「な? わかるだろwww」とでも言いたげに提示される世界観の前提が、ハッキリ言って理解できません。

大事な命懸けの合戦の前に、ダラダラと長ったらしいイチャイチャ。戦国時代というより昭和のサラリーマンものでは?

井伊直政の背後にくっついている追っかけガールズ。顔が良くてモテるなら女を侍らせたいだろ!とでも言いたげです。

1980年代って、こういう「女を侍らせること=強い男」だという価値観があったんですね。

そんな時代に青春を送った層だけがわかる、気持ち悪い価値観を押し付けているように思えてきます。

しかし、日本史を通してそんな勘違い価値観を抱いているのは、ごく一握りの世代に過ぎません。

それでもこのドラマのスタッフは何も言わずに、ニヤニヤしながら「これぞシン・大河だww」と思っているから流されるわけです。

SNSでずっと好きなセクシータレントの水着画像をRTしていたり。

聞かれてもいないのに、萌えるエロいシチュエーションを唐突に語り出したり。

そういうエッチな自分をポロリしてこそ親しまれる。そんな勘違いした世界観を大河ドラマで展開されても困惑するだけ。そんなことだから視聴率が伸びないのでは?

◆NHK大河ドラマ「どうする家康」第17話視聴率は10・1% 前回から0・6P微減も2ケタ維持(→link

10.1%と、いよいよ二桁割れ目前ですが……話をOBNに戻しまして、その弊害は、関連ニュースにも出ている気がします。

タイトルだけでため息をついたのはこちらです。

◆『どうする家康』阿部寛&武田軍の軍事教育に「ローマ人」「スパルタ」までもがトレンド入りの珍事(→link

作り手が意図的に混同されているとはいえ、ローマ人とスパルタは異なるものですよね。

「日本といえばカンフー!」

そう勘違いされたような虚しさがあります。

それでも特定の層が盛り上がればそれでいいんですかね。

ちなみに「日本のスパルタ」は薩摩島津が有力かと思います。これは江戸時代に来日したロシア人が語った言葉を由来としております。

 

どうするOBNの少年漫画精神

OBNをドラマに適用すると、展開が雑になります。

かつて日本では『週刊少年ジャンプ』が国民的な娯楽でした。

雑誌にはアンケートハガキシステムがあり、それが不調だと打ち切り――そんな風に切磋琢磨させて名作を生み出してきた一方で弊害もありました。

ともかく派手に盛り上げた方がアンケートで有利になり、ワンパターンとなる。

作者が描きたいものをやりきっているのに、アンケート人気が落ちないからダラダラと続いてゆく。

こうした弊害があるためか、やたらと長く、プロットがたるんでしまった作品も多いものでした。

そんな時代、少年漫画より格下とされてきたのが少女漫画です。

少女漫画はアンケートより作家性が重視されるためか、プロットがしっかりした作品が多いものでした。

特に歴史ものは、少女漫画の特性がプラスとなります。

それでも男尊女卑が根強い時代です。今では何を言っているのかと突っ込みたい、こんなフレーズが褒め言葉でした。

「男の俺でも面白く読めた!」

「少女漫画なんて子供騙しだと思っていないで、読んでみて欲しい」

漫画界は女性の地位は低いものとして扱う。かつてはそういう暗黙の了解が溢れておりまして。

少女漫画家は少年漫画家より原稿料が安いことも、当然のこととしてありました。

データを見れば女性読者が多い少年漫画作品について、編集者が「それでもこの作品は男性向けで硬派です!」と言い張ることもありました。

こういう男性優位にあぐらをかいたツケが、今まさに来ているのかもしれない――今年の大河を見て、どういうわけかそんな風に思ってしまいます。

ドラマ作りの上層部が同年代の男性ばかりで、彼らが青春時代にアンケートシステムありきの少年漫画を読み漁っているとすれば?

強引な盛り上げ展開にもそこまで違和感を覚えないのかもしれません。

ちなみに「男女間で歴史へ興味を持つ割合が異なることはない」とされています。歴史は男性だけのものではありません。

宝塚が典型的ですが、女性向けコンテンツの歴史作品は日本の戦国幕末に偏りすぎず、古今東西多様性があることも特徴とされます。

戦国幕末以外も興味を持ってこそ、本当の歴史好きかもしれませんね。

 

鹿を指して馬と為す

鹿を指して馬と為す。『史記』

鹿にアルファアカウントが「馬です」とハッシュタグをつけると、なんかそれが信じられちゃう……。

大河ドラマの関連ニュースでショッキングなことがあったので、共有させていただきます。

◆NHK大河ドラマで「戦離れ」? 2作連続文化人に注目...どれだけ珍しいのか、識者に聞いた(→link

記事のタイトルを読み、一瞬こう思いました。

「ああ、確かに最近の大河の戦離れは深刻だ。渋沢成一郎を出しながら上野戦争をかすりもしない『青天を衝け』。徳川家康が主役なのに金ヶ崎を“なんやかんやで“で済ませた『どうする家康』の戦離れはひどい」

しかし、中身はそうではありませんでした。

要するに、来年が紫式部で、再来年が蔦谷重三郎であるのが異常だということが書かれていました。

果たしてそうでしょうか。

新たな試みではあるものの「戦離れ」が異常とも思いません。

大河の1作目は井伊直弼主役の『花の生涯』。2作目は『赤穂浪士』。どちらも合戦はありません。時代劇というのは合戦だけでもないでしょう。

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『光る君へ』に関していえば、『鎌倉殿の13人』に次ぐ「応仁の乱の前」になります。

戦の有無よりも、応仁の乱を線とみなし、それ以前と以降を分けて考えることが日本史を踏まえる上で重要。内藤湖南以来、この前後で価値観がまるて違うとは指摘されるところです。

そして『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』ですが、大河が戦国幕末ローテーションになったのは最初からでもありません。

初期の頃は、その間に江戸時代中期を入れて三本柱でした。

つまり『べらぼう』はその柱の復活枠であり、脚本は森下佳子さんです。

彼女が手掛けるドラマ10『大奥』で描かれた江戸時代中期は実に面白く、『大河でもこの辺りを見たいなぁ……』と思っていたところで発表があり、私は嬉しくてたまりません。

時代劇の醍醐味を合戦にだけ求めるのは、時代劇への愛が不足していると思います。

と、上記の記事については、以下の部分にも注目させてください。

「1つ目は兵学者の大村益次郎を描いた1977年の『花神』、翌年の78年には桃山時代の商人・呂宋助左衛門を描いた『黄金の日日』が2作連続しており、このパターンに近いと言えるかもしれません」

ただ、同時に木俣氏は「大村益次郎は元武士なので厳密には違いますね」としつつ、もう1つの例がより今に近いのではないかと指摘する。

厳密も何も……兵学者が文化人とはどういう指摘なのか。その調子でいくと、孫子やクラウゼヴィッツ、マハンも文化人に分類されかねません。

『孫子』と著者の孫武|信玄や曹操など名将が愛用した兵法書の何が凄い?

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大村益次郎の代表的な功績といえば、長州征討と戊辰戦争での勝利でしょう。兵部省創成期のトップでもあります。

『花神』というタイトルからして、花粉を撒く花咲か爺さんのように、日本中に戦を広げたことを指しています。ドラマの構成を見ても、戦争が見どころだったことが理解できます。

とまぁ、幕末史に興味がある人が読めばすぐさまわかる、そんな初歩的な間違いですが、記事がアップロードされても、誰も気づかないものでしょうか?

「この海鮮丼は肉が入っていないから、ヴィーガンでも安心して食べられます」

そう堂々と語る誰かを見たらひっくり返りませんか? そのくらいのダイナミックな間違いなのですが……。

しかし、記事へのコメントを見ると『花神』についてのツッコミは少なくてまた驚いてしまいました。

幕末の戦争って、興味を持たれないのですかね。

そりゃあ『青天を衝け』で渋沢成一郎を出しながら、上野戦争をカットしてもさして問題視されないわけです。

こうなると『どうする家康』のスタッフも、いっそ幕末明治で同じようなノリを展開すれば成功したかもしれません。

よりにもよって戦国時代で展開したのがまずかった。

それなら鹿を馬だと言い張っても通ったかもしれません……と言いたいところですが、そもそも戦国時代について勉強していれば、あるいは過ちを指摘する人がいれば、こんな惨状になっていないはず。

三方ヶ原の家康よりも、本作の方が心配です。

武田信玄のイメージイラスト
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文:武者震之助(note

【参考】
どうする家康/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

-どうする家康感想あらすじ

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