浜松をめざし、徳川家康を討つ! 風の如く進め!
と、風林火山から風だけを抜き出す、残念信玄の進軍で第17回放送が始まります。
大河ドラマにおける合戦の面白さは、史実がどうであれ『もしかして家康が勝ってしまうんじゃないか?』とドキドキさせるところにあると思うのですが、今回はそんなこと一切なく信玄が勝つことが明白です。
三河武士は妻とのイチャイチャしか頭にありません。武田軍にとってみれば、まさに鎧袖一触。
ただし、徳川軍も黙ってはいません。必殺のアイテムがあります。
おにぎり!
本作は失敗大河のリベンジを狙っているかのような作品ですので、『花燃ゆ』のキーアイテムを推してきます。
やたらとおにぎりを握り、和気あいあいとした雰囲気でイチャラブ需要に応じる一方で、本多忠真はアル中をアピールです。
もうすぐ死ぬから、その前に個性を演出せねばなりませんね。アクションが得意な波岡一喜さんの無駄遣いには無念としか言いようがありません。
亀姫と五徳もわざとらしく登場していますが……当時の武士って、そんなに一家団欒するものなのでしょうか?
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あらすじ:古の腐女子風
オイィィィィ助けてくれ〜〜〜〜! 信玄がガチ総攻めなんだがw 総受けの家康どうすんのw
そう思っていたら、信長が助けにキターーー!
二人でイチャついているうちに、援軍を出してくれるって。
5,000!
いや、3,000だ!
手を重ねたところでは、思わず変な声出たwww 地上波で何やってんすかwww
家康は信長に励まされて、ついに信玄を防ぐために打って出たw
でもスーパードS攻め相手につらいよねw 信玄も家康にエロスを感じているのかw 遠くからみてキュンキュンしててワロスワロスww
どうするヘアメーク
何度もダメ出ししてうんざりしてきましたが、このドラマの女性は、髪の処理がおかしい。
顔から肩の近辺ちょろりとさせる。
これは悪名高い大河ドラマ『天地人』でもあったスタイルで、センスが悪いとしか言いようがありません。
女性がつけている花も気になります。
ああいう花飾りというのは、髪の毛を結った状態でないとなかなか刺せません。ヘアピンでもなければ厳しい。
それなのに、井伊虎松ガールズはそういう髪飾りをつけている。しかも造花だと見てわかるため、痛々しいほど。
時代劇の醍醐味って、できる範囲で当時のおしゃれを楽しむところもあると思います。
むろん、ある程度の逸脱は許容範囲であり、お羽黒や眉剃りをやってなくても誰も文句は言わないでしょう。
しかし、本作はそうした適正範囲を超えていて、しかもセンスが悪いから辛いのです。
なぜこんなことに?
そう考えると、作り手が日本古来の美意識を肯定的に見ていないからではないでしょうか。
長所を生かすように組み立てるのではなく、自分がいいと思うものを雑に加えていく。そのせいで無茶苦茶になっているのでしょう。
どうする『大奥』との格差
ドラマ10『大奥』の仲里依紗さんは、原作綱吉のツヤツヤリップを再現するため、工夫を重ねたそうです。確かに一目見たら忘れられない艶やかな唇でした。
そういう原作や流行を踏まえた逸脱は、アリでしょう。
往年の名作『独眼竜政宗』だって、当時の流行メイクのせいか、いま見直すと女性の眉毛が大変しっかりしています。
上方修正するならばよいのです。
しかし、今年はどうなのか。それがよくわかるのが『大奥』の當真あみさんです。
田沼意次を演じる當真あみさんは、見るからに聡明で、キリッとしている。それでいて愛くるしさもある。和服の所作も素晴らしく、サッと立ち上がるところは見事でした。
そんな彼女の魅力すら潰すのがこの大河です。
◆「大奥」出演の16歳・當真あみが大河デビューへ 愛らしく天真らんまんな亀姫役(→link)
愛らしく天真らんまんを強調しすぎたせいか、ヘアメイクも何か幼く見せようとしているし、顔もきょとんとしていて、魅力が生かされているとは思えません。
つくづく役者の魅力を失わせるドラマですよね……。
もう一人注目は、この大河と朝ドラ『らんまん』に出演している田辺誠一さんです。
朝ドラでは思う存分に本領発揮していて目が離せない。
また、『らんまん』で主人公の姉・綾役を好演している佐久間由依さんが、『ひよっこ』では有村架純さんと共演したものです。
出演作品により分かれる道を見て、複雑な気持ちになります。
どうする二番煎じ狙い
「我らが桶狭間を成す時ぞ――」
このセリフで、本作家康の愚かさがわかってしまうから辛い……。
伝説的な大勝利を前例として、その繰り返しを考えると、軍隊は徹底して弱くなります。やってはいけません。
これは日本史を考えるうえでも重要でしょう。
日露戦争は辛勝でした。
実質的には英米が介入した外交交渉でどうにかなりましたが、以降、これを日本人の本質と考えてしまう悪癖が蔓延しました。
兵器開発から何から何まで、後塵を排する。第一次世界大戦以降の対応も不十分。日露戦争で下士官級が大勢戦死したため、引き継ぎもできない。
それを「日本スゴイ!」の精神論で埋めるようになった。
海軍は第一次世界大戦で弱点が露呈したイギリス海軍式戦法が抜けきれず、演習では奇跡的大勝利であった日本海海戦をお手本にして繰り返すばかり。
こうして日本軍は弱体化してゆきます。
物資面での不足を補うメンタル栄養剤として悪用されたのが、戦国武将の逸話です。
日本軍参謀本部が編纂した『日本戦史』という書籍があり、ざっとまとめるとこんな論調です。
「日本人は奇襲が得意なんだ! 物資不足でも奇襲で勝てる!」
桶狭間はその代表格で、そりゃもう褒められます。とはいえ、それでは勝てないことをアジア・太平洋戦争で証明したわけですが……。
こうした価値観を敗戦で払拭できればよかったのに、戦後もしぶとく残り続けてしまった。
「一撃必殺!」という家康のくだらないセリフからも、こうしたギャンブル感覚でテキトーに歴史を読み解く、そんな悪癖を感じてゾッとしてしまうのです。
歴史の上っ面だけ拾って物語を作ろうとするときに、やらかしがちなミスと申しましょうか。それが本作お得意のドラマ制作手法になっている気がしてなりません。
どうする襟だけ別の色
なぜ信玄は襟だけ別色の衣装なのでしょう?
和装は襟だけ別の布地にすることはありません。襟だけ別につける「半衿」はありますが、そうにも見えません。
このドラマはどうにも和装の基本的な構造も踏まえていない。
信長の陣羽織も妙です。ほんとごめんなさい、ゴミ袋かレインコートに見えてしまって……リアルに悶絶してしまいました。
大河ドラマという貴重な枠ですから、せめて和装だけでも台無しにするのは止めて欲しいです。
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