どうする家康感想あらすじレビュー

どうする家康感想あらすじ

『どうする家康』感想あらすじレビュー第18回「真・三方ヶ原合戦」

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どうする制作統括

再来年の大河『べらぼう』の制作統括が藤並英樹さんだという記事を読みました。

『おんな城主 直虎』と『麒麟がくる』にも参加しているとかで、見えてきたことがあります。

彼は民衆の歴史が描きたいのではないか?

権力者という魚は、庶民という水の中を泳いでいます。

権力者は描いても、民衆は軽んじる――そんなスタンスは大河ドラマの課題でしたので、そこを克服する試みをしている。

その行き着く結果が『べらぼう』だとするならば、これは外さない。私にとっては素晴らしい作品になりそうだと思いました。

一方で、今年の制作総括は『平清盛』と同じ方です。

こちらの場合、通じる欠点があると思えます。それに復讐心すらうっすらと感じるのです。

『平清盛』は不当に貶められた!

そんな意識が大河ファンに向いていて、あえて神経を逆撫でしているんじゃないかと思えるほどです。杞憂だとよいのですが。

 


どうする脚本家交替

ふと思ったことがあります。

今年の大河は、ここまで無茶苦茶で不評なのに、なぜ脚本家の交替をしないのか?

大河ドラマと朝ドラは特殊です。一年あるいは半年という長丁場を一人で書き切るというのは負担が重い。ゆえに複数名でもおかしくはありません。

近年は大河でも朝ドラでも、複数名チーム制が導入されていることがありました。

テコ入れによる交替例もあります。

『花燃ゆ』は何度も変わりました。私としては、最初の方が最善だったとは思えるのですが。

低迷していても交替しないことはあります。脚本家の名を売りにしているとそんな傾向が強いと感じる。

本作もまた、そういうブランドありきの姿勢で良いのでしょうか?

語彙力や話のパターンからして、脚本家の名義はそのままに別人が書いているとも思えません。

時代劇口調、方言、敬語……と、色々と背伸びして書いているのが伝わってきますが、初歩的なミスがあるのはどうにかなりませんか?

助手でもつけるか、校正でもしてください。もうただただ、辛い。

誰も諫言できないのだとすれば、無反省天狗になって彼自身にとってもよくない影響が出てしまいそうです。

 


燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや

まずはよいニュースから。

◆小池栄子、大河出演で再確認「芝居が好き」 ”北条政子カラー”に身を包み決意「コツコツとやっていきたい」(→link

◆〝大江殿〟栗原英雄、〝政子〟小池栄子の橋田賞受賞を祝福 フォロワーも喜び「毎週楽しみにしていました」(→link

大江殿のみならず、全国各地の武衛が祝ったことでしょう。感無量です。

さて、ここで本題。

燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや。『史記』

小鳥どもには、俺みてえなイーグルのビッグなソウルはわからんよね。

『キングダム』でおなじみ、始皇帝の圧政に苦しんだ陳渉という男が、謀反を起こし、秦は崩壊へと突き進んでゆきます。

陳渉はあるとき、肉体労働者仲間に言いました。

「俺、ビッグになってもお前らのこと忘れねえよ!」

「バカじゃねえの。お前が大物になるわけねーだろ」

こう言われて、返した言葉です。

なぜこれを持ち出したのか?

朝ドラ『らんまん』が放映中であり、寿恵子というヒロインが出てきました。

彼女は重度の『八犬伝』オタで、馬琴先生は天才だとうっとりしながら悶えてしまいます。

寿恵子が読みあさっていたのは、芳流閣の場面。

その絵を部屋に飾っていても不思議はない。今回の朝ドラスタッフは抜かりなく、芳流閣の浮世絵が壁に貼ってあることが確認できました。

芳流閣の場面というのは、八犬士の犬塚信乃と、犬飼現八が、芳流閣の屋根の上で出会うという場面です。ここで二人は転落し、なんだかんだで助かり、義兄弟となる。

◆「らんまん」寿恵子、文学オタク?予想外のキャラにネット沸く「似た者同士w」里見八犬伝に悶絶「尊い!」(→link

芳流閣は屈指の名場面であり、絵の題材にもピッタリ。何度読んでも尊くて興奮するという場面です。

寿恵子のようなオタが、この男二人が屋根から落ちる場面にどうして興奮するか?というと、それは極限状態だからというのがあります。

屋根の上に登って落ちてしまう。そのギリギリ、一体どんな気持ちになるのだろう。

普通に生きていたら絶対に味わえない緊張、緊迫感、スリル、勇気。それを想像すると血が熱くなって、カーッとしてくる。

それが歴史作品や冒険ストーリーを楽しむことではありませんか?

寿恵子の熱いまなざしからそのことを思い出しました。

こうした作品の英雄には「鴻鵠の志」があり、それを物語を通してみたい――。

そんな需要があればこそ、滝沢馬琴のような作家は『八犬伝』を描き、浮世絵師たちは緊迫感のある武者絵を描いた。それを江戸っ子が買い漁って興奮する。

大河も、そうした「鴻鵠の志」を味わう瞬間が、存在意義の一つであったと私は思います。年代や性別は本来関係ありません。

『鎌倉殿の13人』最終回直前、ある小学生が楽しみに見ていると真剣な表情で語るインタビューを見ました。

目ができあがっていて、彼は本当に『鎌倉殿の13人』が好きでたまらないと伝わってきました。

理屈じゃない。魂そのものを惹き込まれている。歴史物語に惹き込まれる人というのは、子どものうちにそういう瞬間が訪れているのです。

むろん、娯楽が多様化した時代です。比率でいけば高くはないでしょう。

ともかく大河ドラマにはその意義がある。

歴史を楽しみ、「鴻鵠の志」を味わうことが好きだ。そんな層をメインとしているコンテンツでしょう。

しかし、本作の態度は終始こんな調子です。

「でかい鳥なんて喜んでみる必要ある?w」

「そういうデカい鳥がドジな行動、スズメみたいなことしたらウケるよねww」

本来大きな器に、ちっぽけなガラクタを入れて、ドヤ顔で差し出してくる。

それを「シン・大河」だのなんだのと言い募っているので、辛さが怒りに変わってしまうのです。

以下のような紹介文にも、そうしたスタンスは滲み出ています。

大河ドラマ通算62作目となる「どうする家康」は、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」や「探偵はBARにいる」シリーズを手がけ、ドラマ「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどでも知られる古沢良太氏が脚本を担当。

織田信長、武田信玄らが群雄割拠する乱世に飛び込み、「どうする?」と何度も決断に迫られた家康を、現代に通ずるリーダー像として描く。

要するに、現代人には「鴻鵠の志」は理解できない。カワイイスズメちゃんにして親しみをアップする。

ひいては、ネットで盛り上げるように誘導する。

燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや――このドラマの作り手に、大きな志がないことは理解できました。

それはそれでよしとしますが、「ビッグな志を持っているとかウケるww」とヘラヘラ笑うのは、もうやめにしませんか?

 

兵形象水

孫子』から。

兵の形は水に象(かたど)る。

要するに、世論は誘導されるということですが、ネットニュースを見ていると、兵という水を入れる器の形が変わっていくことが見て取れる。

まいじつさんのように執拗に叩いていたメディアだけではなく、大手も手厳しくなってきました。

◆ 「どうする家康」視聴率で苦戦 松潤家康と岡田信長の〝BL大河〟に付いていけないファン続出(→link

◆【どうする家康】視聴率10%台で「どうする?」NHK 国会でも論戦(→link

◆ 家康と信長が見つめ合い…NHK大河演出に《ジャニーズ役者にやらせないで…》とファン悲鳴(→link

◆家康は弱腰すぎるし秀吉は媚び媚び…大河「どうする家康」はキャラ造形に違和感(→link

『どうする家康』はネットに特化した作品だのなんだの、本作のファンが語ることを見たことがあります。

しかし、どうでしょうか。

ネットニュースという器が変わったならば、水という視聴者も変貌するのでしょうか?

ネットの評価は、麻薬のようなものです。

褒めあっているうちに酩酊し、依存するようになりますが、それで得られるものは刹那の満足感のみ。刺激を求めて、次から次へとのめり込み、沼にはまっていくだけでしょう。

そんなネット論争には関わりたくありませんが、敢えて指摘したいこともあります。

「『どうする家康』は若者むけの“シン・大河”だ! ジジババは理解できないだけwww」

という趣旨の書き込みです。

これはどういうことか?

タイムパフォーマンス重視の世代にとって、意味のないエピソードがダラダラ続き、勉強にもならないこのドラマは「低タイパ」そのもので、かえって避けられているのでは?

なんて思っていたらハッキリとしたデータが示されました。

◆ 岡田准一や阿部寛の存在感は抜群、はっきりしてきた「どうする家康」の弱点は?(→link

若者層の個人視聴率が『鎌倉殿の13人』の約半分という、今後の大河を破壊するかのような恐ろしい数字です。

スタッフ側はそれによって若い視聴者も取り込みたかったのではないか。松潤らキャストの人選からもその意図を感じる。

しかし、功を奏していない。

T層(13~19歳)の個人視聴率は「鎌倉殿の13人」の約半分。過去に類を見ない大河なので、大河の岩盤支持層とも言える固定ファンの一部が離れてしまったようだ。

固定ファンを手放しただけでなく、さらには若い層にまで避けられているとは、なんたる悲劇……。

そこを踏まえてこう言いたい。

どうする「今時の若いものはこういうのが好き」と語りたがるおじさん!

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文:武者震之助note

【参考】
どうする家康/公式サイト

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