鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第1回「大いなる小競り合い」

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MVP:源頼朝

個人的なことを語って申し訳ありませんが、私は思えば小学生の頃、児童向け『義経記』を読んでからというもの源頼朝が大嫌いでした。

陰険で、義経を追い詰めて殺した憎たらしい奴! そういう思いがどうしても拭えません。

そんなアンチ頼朝歴に自信がある私の目から見ると、今回の頼朝は今まで見た中で最も腹立たしい、最低最悪の頼朝でした。

もうどこかに沈めたいと思うほどで、義時が苛立つ気持ちも、祐親の気持ちも理解できるんですよね。

でも、政子や宗時の気持ちもわかる。

どうということのない川に、白鷺が降り立っていると、景色そのものが変わってしまったように思える。そういう圧倒的な気品があった。

これは確かに頼りたくなる。すがりたくなる。そういう魅力があった。

脚本も演出も演技も、そういう気品が出ています。

座っている姿だけでハッとするほど美しいのは、何かがきっとあるからだろうと。

認めるのは悔しいけど、これは最良最高の頼朝かもしれない。素敵です。

 


北条義時が現時点で只者ではない

なかなかMVPになれそうにない、巻き込まれ方の義時ですが、あれも恐ろしい存在でして。

彼は吸収してしまうのでしょう。

繰り返しますが劉邦タイプ、東洋的な英雄です。

西洋の英雄といえば、典型例としてナポレオンがいます。

押しが強くてなんでも俺がやってしまう。そういうカリスマ型。西洋列強と向き合う中、東洋はそういうナポレオンみたいな英雄がいない自国にがっかりしました。

俺たちの讃えていた英雄ってよかったの?

そこで槍玉にあがった典型例が、劉邦ではなく劉備や『水滸伝』の宋江あたりなんですね。

彼らは自らぐいぐい推すというよりは潤滑剤タイプ。苦手分野はその分野が得意な人に任せて、相手の力を引き出す。

実力者を繋ぎ止めるだけで本人は動かない。

いいからお前も動かんかい!

ナポレオンあたりに憧れたかつての東洋人はそうイライラしたわけですけれども、でも、こういう潤滑剤タイプって、実は有用じゃありませんか?

万能の人物なんていない以上、真ん中に立ってポテンシャルを引き出すタイプってとても大事ではありませんか?

そういう片鱗が、義時は出てきています。

前半部はそんな繋ぎ役は頼朝が務めるのでしょうけれども、振り回されつつ、義時がそのやり方を学んでいるとすれば?

小栗旬さんはこの義時役にピッタリとはまっていると思えます。

オロオロと振り回される気のいいお兄ちゃんのようで、何かを常に吸い取っている。

兄・宗時は欠点も多いように思えるわけですが、あの猪突猛進力は学ぶべきだと無意識下で思っているかもしれない。

こういう受身型の英雄ってとてつもなく難しい。

だからこそ今まであまり注目されなかったのかもしれないけれど、実は今こそ必要かもしれない。

私はもう、北条義時に興味津々です。

 


残虐コメディタッチの是非

本作はコメディタッチにすると明言され、かつ三谷さんの脚本なので不安視されてもいます。

でも、これもNHKの配慮だとすれば?

今週はワイワイガチャガチャしているようで、千鶴丸が水死させられているわけです。もしもそこを重く描いていたら、月曜日が辛くなるわけでして。

それに残酷をコメディタッチで描くのって、実は一番ひどいことではないかと思います。

三谷さんが意識しなかったわけではないというか、1990年代に一世を風靡し、今は大御所扱いといえばタランティーノがおります。

彼の作風の特徴は、残酷な描写をコメディタッチにしたこと。

間違ってチンピラを自動車内で射殺したら掃除が大変だぜ、参ったなあ! そういうノリが斬新でした。

昼飯をうどんにするか、ラーメンにするか。どっちにする?

その程度の気安さで、始末した死体を海に捨てるか、山に埋めるか考える。そういう軽い残虐さが斬新とされたのです。

そこを踏まえると、そんなもんタランティーノ流なんてむしろ定番だということになってもおかしくはない。確かに大河でとなると、斬新かもしれないけれど。

そしてこのタッチが、坂東武者に適用されることに対して、私は圧倒的な信頼感があるんですね。

だいだいこのドラマと同時代のイングランドで、トマス・ベケットという聖職者がヘンリー2世の王命により暗殺されました。しかもカンタベリー大聖堂で。

理由も手段も野蛮な事件です。

しかも、当時の技術ゆえ仕方ないのでしょうが、暗殺場面を描いた絵が牧歌的でシュールなのです。

トマス・ベケットの暗殺/wikipediaより引用

勝手な思い込みではあるかもしれないけれど、12世紀の残虐性ってこういう明るさがあるのではないでしょうか。

もっと時代が降れば反省なり命の重みを感じるかもしれないけど、当時は「まあ死んじゃったし!」くらいのノリだったのかもしれないと。

このドラマの明るく生き生きとした殺しあいは、そんな思いに応えてくれるものです。

坂東武者と比較すれば、戦国武士は文明を知っている。それは人類進歩の証なのだ。

そう熱く主張したくなるドラマです。

 

頼朝と政子の恋が時代を作る

田舎娘を手玉に取ってやったぜ!

そう言いたげな頼朝が、政子という牝の魔獣に絡みとられるような構図がすごいと思いました。

三谷さんには土下座しないといけないと、私は反省することしきりです。こんなに色気がある脚本を書く方だったんですね。

頼朝と政子の関係性は、ともかく面白いし艶っぽい。雅さがあるから田舎娘なんてすぐさま手玉に取れると思っているようで、深みにはまる。

そんな頼朝が滑稽なような、哀れなような。

頼朝の大泉洋さん、ハッとするほど綺麗です。卑劣なくらいに美しい瞬間がある。これは田舎娘なんてイチコロです。

大泉さんが頼朝を演じてくれたことに感謝しかないというか。すごいことになりました。

政子役の小池栄子さん。女優は美貌が大事です。ゆえに花のような美貌の持ち主はいくらでもいる。

けれども、今年の干支つながりであげますが、虎のような美貌を持つ女優はそうそういない。

『麒麟がくる』の染谷将太さんで書いた記憶があるのですが、役者にも虎のような美しさを持つ人がいます。

檻の中にいて寝転がるところを見る分にはいいけど、檻の外に出ていたら逃げるしかない。

そういう、日本史版のサーセイ・ラニスター(『ゲーム・オブ・スローンズ』)が誕生したことを祝いたいと思います。

こんな恋が時代を作るなんて、だから歴史は面白い!

※著者の関連noteはこちらから!(→link


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◆鎌倉殿の13人キャスト

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文:武者震之助(note
絵:小久ヒロ

【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

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