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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第39回「穏やかな一日」】
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肩を落とし寂しげな康信
実朝が、和歌を詠んでいます。
今朝見れば
山もかすみて
久方の
天の原より
春はきにけり
【意訳】今朝見てみれば、山も霞んでいる。天の原から春は来ていたのだな。
隣にいるのは指南役である三善康信。
「今朝見れば」と「久方の」を入れ替えたらどうかと提案すると、実朝が笑いながら、「いつも語順を逆にするように言うものだ」と返します。
そう指摘され、照れてしまう康信。
そこへ仲章がやってきて、京の藤原定家から送られてきた添削結果を伝えます。
最後を逆にするように――。
なんでも「今ぞ栄えむ鎌倉の里」とした方がおさまりがよいとのことですが、実は実朝は、初めから詠んでいました。康信の助言で引っくり返していたのです。
宮柱
ふとしきたてて
よろづ世に
今ぞ栄えむ
鎌倉の里
【意訳】神殿に太い柱を立てよう。これから長い間、鎌倉が栄えていきますように。
康信はため息をついてしまいます。
もう教えることが何一つない。寂しそうに肩を落とす康信に対し、それでも実朝は、歌を読む面白さを教えてくれたのはそなただと労い、こう言います。
「これからも私を助けてくれ」
感極まって泣き出す康信ですが、こういう優しい人がそばにいるだけで心が安らぎますね。
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実朝が戻ると、千世が貝合わせをしようと誘ってきました。
稽古と政で疲れているから体を休めたい。
実朝がそう断ると、それでも千世は引かず、一回だけ付き合うこととします。
しかしそこへ和田義盛がズカズカと登場。
馴れ馴れしく「ウリン!」と大声を出しながら、あばたが残っているか?と聞いています。すぐに消えると実朝が返すと、あったほうが様になるとも……。
ひどいと言いつつも、気心知れた相手に楽しげな様子。
これでは千世の立場がありませんが……。
御家人皆が北条を憎んでいる
八田知家が胸元をはだけながら、何かを組み立ていますした。
政子の依頼のようです。
なぜ大工仕事でそんなにセクシーなのか、知家の実年齢のことはこの際忘れておきましょう。
暗い顔をして廊下を歩いていく千世の姿を政子が見かけます。
和田義盛の用件は「上総介になりたい」とのことでした。なんでも上総介になって御家人の柱になるべきだと周りがうるさいんだとか。
「わかった。なんとかしよう」
実朝が折れると喜ぶ義盛。
「上総介」とは国司のことです。義時が守護とは別扱いにしようとした職ですね。
そこへ実衣が入ってきて、席を外すよう義盛に強く言います。
実衣の用件は、身の回りの雑事を取り付ける女房のことでした。実朝が断っても、「身だしなみが必要だ、烏帽子がゆがんでいては鎌倉殿の威厳に関わる」と彼女は一歩も引きません。
烏帽子を直す実朝、珍しい場面です。
どんな女性がよいか?と、畳み掛けるように実衣が詰問していると、帰りかけていた義盛が「声の大きな女子がいい!」と乱入してきます。
なんでも情けが深いんだそうで。それは巴御前の特徴というだけの気がしますが。
「聞いてません! 帰って帰って!」
追い払う実衣に対し、「では声の大きい人を」と実朝がそっけなく答えます。まるで女子なんてどうでもいいというような言い方です。
そのころ泰時はまだ悶々と悩んでいました。
和歌など作ったことがないと正直に告げれば良いのに、なぜそうしないのか。鶴丸の心配も、もっともな話ですね。
そんなこと露とも知らない実朝は、和田義盛を上総介にすることを母の政子に相談していました。
政子も義盛は好きだけど、政は身内だとか、仲がいいとか、そんなこととは無縁の厳かなものだと嗜めます。
実朝は素直に反省しますが、それができなかった北条時政は結局身を滅ぼしたものです。
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八田知家の作業が完了し、組み立てた机を政子に見せています。
さすが仕事が早いと喜ぶ政子。
できる男だけれども、そこまでやるのかと驚かされる、それが知家です。
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言いにくいことをはっきりと政子に伝えるのも彼の仕事。
北条の方々を、はっきりと言えば御家人皆が憎んでいる――
北条ばかりで、なぜ他の者は国司になれないのか?
政子は神妙に聞いています。
義時はそこを理解しているのか、計算づくなのか。
広元への口調では、そこも織り込み済みのようではありますが、気になった政子は義時に聞き出します。果たして彼は承知の上でした。
それでもやらねばならぬ。二度と北条には向かう者を出さぬため――
覚悟を決めた義時に対し、政子も引くわけにはいきません。
「小四郎……父上と義母上の命を救ったことを感謝します。でも……」
そう訴えようとすると、義時が「悔やんでいる」と政子の言葉を跳ね除ける。
父の時政を殺していれば、御家人たちは恐れ慄きひれ伏した。それができなかったのは自分の甘さである、と。
果たして本当にそうでしょうか?
これは義時ではなく、政子の甘さかもしれません。
彼女があのときキッパリと「時政とりくを殺せ! 逆らうものは始末する!」と義時を急かしていたら、その先どうなっていたか?
この姉はそこまでやる強敵なんだ、そんな凶暴な雌虎ならば、我が子を守るために牙を剥くかもしれぬ――義時がそう警戒したら、実朝に政治の実権を返したかもしれない。なんてことも考えてしまいます。
鶴丸「平盛綱」は泰時の良き番犬
実朝が、よもぎという女性に向かって「側室にする気はない」と断っています。
ならば、とキッパリ出て行こうとするよもぎ。
実朝がそんな彼女を引き留め、少し話でもしようかと笑顔を浮かべます。困っていることはないか?と聞いているのです。
何でも彼女は、酷い男に引っかかったんだとか。
妻にすると言っていたのにさんざん弄ばれ別の女子と……そう怒りを込めて語ります。
「この鎌倉にそんなひどい男がいるのか!」
驚く実朝ですが……まぁ、いるでしょうよ。あなたの父・頼朝も中々のものでしたよ。
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一方で「とんでもないおなごに引っかかった」とこぼす者もいました。
北条朝時です。兄である泰時に愚痴をこぼしている。
いやいや、干し果物を掴んで食べるように、女の袖を掴んだのは自分じゃないのか?
そう思えてきますが、泰時も弟の悪事を知っているのでしょう。「どうせ嫁にするとか言ったのだろう」と見抜いています。
それでもなお、兄上の力で鎌倉を追い出せないかと、ゲスいことを言い出す朝時。どうしようもないですね。
泰時も、人に頼るなと突き放し、鶴丸もうんざりしています。
そこへ義時がやって来て、疲れたと横になる。
父に戸惑う泰時に対し、義時が「伊豆へ行って父上になにか美味いものでも持っていってやれ」と命じます。
そして、ふと鶴丸に目をとめ、いつまでも鶴丸では具合が悪いとか言い出した。
「諱(いみな)をつけてやるか」
「諱!」
大感激の鶴丸、諱は「盛綱」になりました。
氏は「平にする」と勝手に決めてしまう義時。
平家一門は滅びたわけでもありません。
日本各地に落人伝説がありますが、そうではなく鎌倉に来ている者もいました。あえて平家のものを近くに置くことで、源平合戦ははるか昔のことだとアピールしたいのでしょう。
盛綱というのは、これからも泰時を守る綱であって欲しいからとのこと。
「平盛綱」
そう決まった名に、泰時も「よい!」と納得しています。さらに鶴丸改め平盛綱は「御家人になれないか?」と義時に訪ねました。
調子に乗るなと釘を刺す泰時ですが、義時は意外と乗り気になっています。
弓の技比べに紛れ込んで目立つ働きをして、それを弾みに鎌倉殿に掛け合ってみると言い出すのです。
美談に思えます。出自不明の平盛綱を鶴丸にするというのはよい工夫です。
八重の思いが詰まった、まるで千鶴丸の生まれ変わりのような人物が、こうして泰時を守るためにそばについて出世するのも素敵ですよね。
しかし、今の義時は、ただの美談を生み出すほど清らかではない。
これは綱をつけた番犬を作る過程でもある。
恩義を感じさせ、いつまでも我が子を守る番犬に育ったら美味しい。死ぬ気で命令を果たす忠実な番犬は何より有用ですし、義時はうまいやり方を思いつくものです。
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