鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第39回「穏やかな一日」

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鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第39回「穏やかな一日」
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策士策に溺れた義村

北条時房が実朝を蹴鞠に誘いだし、北条義時が義盛に釘を刺しています。

・上総介の件は忘れること

・鎌倉殿と直に交渉することは禁止

・ウリンと呼ぶことも禁止

頼朝のことを「武衛」と呼んでいた件を義盛が引き合いに出しますが、あのころとは違うとそっけない義時。

「変わっちまったよなぁ、鎌倉も、お前も……」

義盛がそう嘆くのも無理ありません。

思えば序盤において、彼らの娯楽は狩猟でした。誰も和歌なんて詠まない。蹴鞠も未知のものでした。

広元はその話を聞き、絵に描いたような坂東武者だと感想を漏らします。

義時が随分少なくなったと相槌を打つと、広元から

「そしていずれはいなくなる……」

なんて不気味な予言じみたことも加えられます。

これは実におそろしい。坂東武者がいなくなったら、何がどうなるのか?

広元のような文士も飲み込んで吸収し、まったく新しい武士ができあがり、それが日本を支配することを誰も知らないようで、でも、実は義時は知っているようで、ゾッとする場面です。

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現在放映されている朝の連続テレビ小説で、長崎五島列島の「ばらもん凧」が出て来ました。

その図柄は、武士が魔物に立ち向かうというもの。武士の世が終わっても、日本では子供の生育を祈る際に武士を掲げます。

それだけ根深く精神性が根付いてしまった。

そういう根源を、この義時という怪物が吐き出そうとしているようで、あまりに深い。

義盛は消えゆくさだめ――そんな風に悟り切ったような義時ですが、和田義盛御家人の間で人気があり、そう簡単に排除できるようなものでもありません。

「和田には三浦がついています」

そう広元が言うと……。

「俺の噂をしていたな。まあいい、お連れしたぞ」

三浦義村つつじと善哉を連れて来ました。

義村はまるで曹操のようだ。中国に「曹操の噂をすると曹操がやってくる(=噂をすれば影)」ということわざがあります。

つつじと善哉は、実朝の回復祝いを述べにきたのでした。

そんな善哉に、政子は何やら見せたいものがあるようで、手の空いた義村と義時が話し始めます。

「一時は善哉を鎌倉殿に……という話もあった。その気にさせて申し訳ない」

義時が詫びると、義村は元気になられたのならそれでいいと素っ気ない。

「平六、私はこの鎌倉を変えるぞ」

「いい心意気だ」

義時は、守護を二年で交代し、御家人の力を削ぐと宣言します。

「言っておくが、俺も相模の守護だぜ」

「だからこそ真っ先に賛成して欲しいんだ。他の御家人たちは何も言えなくなる」

「いいだろう」

「政所へ戻る。ゆっくりしてけ」

そう言い残して義時が去っていくと、義村は手にした扇を腰にさそうとし……床に叩きつけます。

何かとわかりにくいと評される義村ですが、個人的には読みやすい人物に思えます。

この瞬間、義村は策に足を取られた策士に成り果てました。

義村は幼いころから義時を見てきて、智謀は自分に及ばないと思っていた。いつでも操ることができると思っていた。何かあれば話を聞きにくるし、すがる犬のような目でこちらをみてきたこともある。

だから手を貸してやった。

頼朝より近いし、操ることはできるはず。自分が真っ先に泥を被りたくないから、汚い仕事は分けあって、持ちつ持たれつやって行こうと思っていた。

それなのに、いつの間にやら、義時の番犬になってしまっている。これほどの屈辱はない。

おまけに義時は義村の策を先回りして、いたぶってきた。

善哉を鎌倉殿にしたかっただろう? そうならなくて残念だったな。

そうくすぐるように言い、嘲笑った。からかった!

義時はこの盟友までもこうして翻弄し、誰が主人かを見せつけたようなものです。

なまじ策士だと自覚ある義村にとって、これほどの屈辱はないでしょう。ゆえに、苛立ちから思わず扇を床にぶつけてしまう。

憎いのは義時か? いや、己の迂闊さに腹が立つ! では、どうすればよい?

策士の腹の底がぐるぐる渦巻いています。

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それにしても、なんという三浦義村か。

策が当たってほくそ笑んでいる時よりも、この己の策が外れて悔しがる姿の方が魅力があふれ切っている気がする。

三度大河に起用し、山本耕史さんの魅力ならばなんでも出せるという、そんな三谷幸喜さんの自信までも伝わってきます。

最高の食材の、いちばん味を出し切る術を知っている――そんな極みを見た。

山本耕史さんの魅力を全部絞り切ったような何かがある。

凄まじい場面でした。

このドラマはプライドがへし折れる様を、音が出るのではないかと錯覚するほどに見せてきます。

悔しがる後鳥羽院も素晴らしかった。一体、あと何回、こういう場面が見られるのか。

最終回で義時がそうなったらよいなぁ……とすら思ってしまいます。

 


弓争い勝負の局面で平盛綱が!

政子が、善哉に頼家の字を見せています。

ここでよく蹴鞠をしたとも教えている。

実朝もやってきて、善哉にやさしく声をかけました。

鎌倉殿と返す善哉に、義父上と呼ぶようにつつじは言います。無理をしないようにと優しい実朝。

時房が、そんな善哉を蹴鞠に誘うと、政子が頼家の分も善哉を幸せにしたいと語ります。

罪滅ぼしだと認めつつ、御所へ誘い、ここなら遊び相手はいくらでもいると情けをかけ、

「善哉のためでしたら……」

と、つつじも同意。

しかし、やはり政子は甘い気がします。もっと突き放してもよいかもしれない。こういう対応をしていると、頼家は罪なくして死んでしまった人のように見えてくる。

御所にも愛着が湧く。

なぜ御所の一番高い座に自分がいないのか?

将来、そう思ってしまうかもしれない。

頼家は罪ゆえに死んだ。

お前も罪人の子であり、実朝とは違う。

厳しくとも、その辺をハッキリと認識させた方が良いかもしれません。

本作の政子は優しが魅力ではありますが、あまりに優しすぎるかもしれません。もちろん、それでいいと思います。逆に厳しくしたら我が子を守れたのかどうか? 誰にもわからないのです。

イベントが始まりました。

鶴丸こと平盛綱を御家人に推挙できるかどうか。

それがかかった大一番【弓争い】が行われ、知家がセクシーに的を射抜きます。

特に意味はないのに、出てくるだけでセクシーってのは昭和時代劇のくノ一を思い出しますが、2022年にはこういうのもありということかもしれませんね。

なんといっても市原隼人さんなので、下品にならず踏みとどまっている。彼でないと、こうはできないでしょう。

弓争いは、左右に分かれて的を射抜いていく勝負で、次の泰時(右)が成功させると、(左)の長沼宗政は的を外してしまった。

この場面で平盛綱が登場!

右の射手として出てくると、かなり緊張しながら弓を引き、矢を放つと……的中です。

「うわぁー! おっしゃ!」

よく当てた! 我らの勝ちだ!

そうはしゃぎ、抱き合う北条泰時と平盛綱。

しかし、その瞬間のことでした。それまで楽しそうに見ていた実朝の顔が暗くなり、戸惑い始めます……。

イベントが終わり、室内へ戻る実朝と義時。

弓争いで活躍した平盛綱を北条家の家人だと説明した上で、御家人にしてはどうか?と提案します。義時としては、却下されるとは露ほども思っていなかったことでしょう。しかし……。

「それはならん」

実朝が断ってきました。身分不相応な取り立ては災いを呼ぶ、一介の郎党を御家人に取り立てるなどあり得ないというのです。

そして和田義盛の上総介就任を止め、守護の任期を定めたのは義時だとダメ押ししてきます。

義時はいったん引きます。

「鎌倉殿の言う通りにございます。忘れてください」

「すまぬ。言葉が強くなってしまった」

しかし終わりではありませんでした。

むしろ揺さぶりの始まりで、義時は、私はもう要らぬようだ、あとは鎌倉殿の好きなようにすればよい、伊豆へ引き下がると、追い込んでゆきます。

義時は学んでいます。

亀の前騒動のとき、時政が伊豆へ引っ込んでしまった。すると頼朝は露骨に狼狽。義時が鎌倉に残ったことをことのほか喜んでいましたた。あのときの経験を活用したのでしょう。

実朝はすぐに折れ、自分が間違えていたといい、その者を御家人にするように返します。

それでも義時は許さない。

鎌倉殿が一度口にしたことを撤回したら、政の大本が揺らぐ。そう脅しつつ、今後は自分のやることに口を挟まないようにと脅します。鎌倉殿は見守っていればよいと。

「どうすればよいのだ?」

そう問われると、改めて自分の褒美を与えるように言います。その褒美を義時から盛綱に渡すと。

実朝は北条時政の企みを防いだ褒美を取らすと言います。

「……ありがたき幸せ」

頭を下げながら、そう返す義時。

この瞬間、鎌倉殿もこの男の飼い犬になりました。

 


ようやく心が通じた実朝と千世

蹴鞠をしていると頼家のことを思い出してしまう――北条時房が、源実朝にそう話しかけています。

その頼家とは、兄でありながら話したことがない実朝。

時房がこんな風に説明します。

「寂しいお方でした。あのお方のお心を知ることは誰にもできなかった。悔やまれてならないのです。お側にいながら何の支えにもなってさしあげられなかった。いらっしゃいますか。心を開くことのできるお方が」

実朝には誰かいるのでしょうか?

夜、千世が実朝に迫ります。

世継ぎができないことを皆が心配している。自分にその役目が無理であるなら、ぜひ側室を……と勧めています。

しかし実朝は戸惑うばかり。千世は後鳥羽院のいとこであり、それを差し置くようにして側室は置けないとのこと。しかし、それが余計に辛いと千世も訴える。

「あなたが嫌いなわけではない」

「ではどうして私からお逃げになるのですか? 私の何が気に入らないのですか!」

彼女にしてみれば、屈辱であり怒りでもありましょう。

そんな妻の姿を見て、もう黙っていられないと悟ったのか、実朝が秘密を明かし始めます。

「初めて人に打ち明ける。私には世継ぎを作ることができないのだ。あなたのせいではない。私はどうしてもそういう気持ちになれない。もっと早く言うべきだった。済まなく思うから一緒にもいづらかった」

「ずっとひとりで悩んでいらっしゃったのですね。話してくださり、うれしゅうございました」

泣く実朝に寄り添う千世。

ぎこちなく抱き返す実朝。

「私には応えてやることができない」

「それでも構いませぬ」

そう抱き合う夫妻――源実朝は心を開ける相手を見つけました。

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一方、その実朝へ返歌を作らねばならない泰時は、相変わらず頭を抱えています。

と、そこへやってきたのが源仲章

泰時が、実朝からもらった歌を目にします。

春霞
たつたの山の
さくら花
おぼつかなきを
知る人のなさ

【意訳】立ち込める春の霞。龍田の山の桜花よ。おぼつかないことがもどかしい。私はこの心を持て余している。

実朝から泰時へ送られた歌は、そもそもどんな内容だったのか?

「これは恋の気持ちだ」と仲章が言います。

春の霞のせいではっきりと姿を見せない桜の花のように、病でやつれた己の身を見せたくない。されでも恋しいあなたに会いたい。そんな切なき恋心であると。

「どなたの作で?」

「御免」

動揺した泰時は、その場を去るので精一杯。

実朝のもとへ行き、こう告げます。

「鎌倉殿は間違えておられます。これは恋の歌ではないのですか?」

「そうであった。間違えて渡してしまったようだ」

「これを」

「ありがとうございました」

大海の
磯もとどろに
よする波
われて砕けて
裂けて散るかも

実朝は、波のように恋が砕けた歌を渡すのでした。

比奈(姫の前)と義時の息子にして、ゲス男である北条朝時が、微笑みつつ父の前にいます。

「どういうことだ」

御所に仕える女房に手を出したってよ。冷たく突き放す義時に対し、朝時は鎌倉殿に取りなして欲しいと言います。

こいつ……通りすがりに干した果物を掴むように女房を落としたことをようやく認めたか。狭い範囲でとことんつまらん奴。なんなんだこいつは!

「ふっ。軽々と私に頼りおって……お前には父を超えようという気概はないのか」

「あ……あるわけないです。そんな大それたこと」

「もう行け」

猫が鼠で遊び飽きたように我が子を解放する義時。

もう、この人はどうなってしまったのか。我が子が自分を超えようとしてこないか見極め、安全となったらつまらなくなっているんでは?

家族間で本気の殺し合いを想定しているんだとしたら、そりゃあ、のえだって辛気臭いと思うでしょうよ。

八重や比奈のように、腹を割って愛し合うことができなくなっているのは、誰のせいなのか。

もはや義時の人生そのものが地獄のようで、おそろしいことになってきました。

そして、あの男の我慢が限界です。

和田義盛だ。

義時は、親父を追放して以来やりたい放題だ!

俺たち古株御家人をないがしろにしたら痛い目に遭うって思い知らせてやろうぜ!

そう怪気炎をあげています。

和田義盛は坂東武者のカリスマだ!なのになぜ滅亡へ追い込まれてしまったのか?

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その場には三浦義村もいる。義時への逆襲を企てているのは、こちらにも見えてくる。

しかし、一方で義村は、義時に寝返ることで自分は使えるアピールすることもできるわけで、最終的には「義時vs義盛」でどちらが勝つか? 決め手はそこになってきます。

泰時が、彼には珍しく、やけ酒をあおっています。

それを遠くから見つめる初。

建暦元年(1211年)9月22日。

出家して公暁(こうぎょう)と名を変えた善哉は京都へ行くことに。

政子に別れを告げ、出立してゆきます。

そして、戻ってきたとき、

鎌倉最大の悲劇が幕を上げることになる。それはこの時から六年後――。

そう語られ、穏やかな一日は終わりました。

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