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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー総論まとめ第49回「是か非か」】
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多様性
源実朝に後継ができないことは、政治問題として重要な伏線となります。
『鎌倉殿の13人』では、北条泰時への淡い恋心としてこれを表現しました。
ごくさりげなく、繊細な表現であり、男性が男性を愛することは普遍的なのだという描き方でした。
歩き巫女の、「実朝と同じ悩みを持つものはこれまでもいたし、これからもいる」という台詞とあわせて、よい描き方でした。
GoTにも同性愛者は出てきますが、スキャンダラスでどぎつい描き方でした。
この点においては『鎌倉殿の13人』の方が配慮が行き届いています。
VFXはじめとする技術
今回はVFXも相当進歩しています。
VFXというと、未だに白馬がお堂から飛ぶような、そんなプレステ2レベルのものを想像してしまう方もいるようですが、現在の緻密なVFXはすぐにそれとは判別できません。
2021年はともかく、2022年はそうです。
ドローンの空撮。そしてVFX。技術面でも大河は進歩しました。
大河のVFXは、2013年『八重の桜』で足ぶみしていたように思えたほど。
なんせ幕末のNHK番組では、あのドラマの映像が今も使われるほどです。
『八重の桜』以降に作られた『花燃ゆ』『西郷どん』のお粗末な戦争や、ろくに揺れもしない『青天を衝け』の船などは古いスマホゲーム以下に見えて、辛いものがありました。
ジェンダー観の更新:トウの場合
GoTはジェンダー観においても進歩したドラマとされます。
その代表格がアリア・スタークという女性。
アリアは少女時代に人を殺す場面があり、これが大きな話題となりました。
なぜならアメリカのテレビドラマにおいて、未成年女性の殺人描写はアリアが初めてだったのです。
といっても、アリアは愉快犯でもなく、逃亡の際やむなく人を害する自己防衛が初めての殺人となりました。
彼女は成長するにつれ刺客となり、親や大事な人の仇を討つために戦うことになります。
男女平等を論ずる上で、お約束の問題提起があります。
「男女平等というのならば、男性的な加害行為や従軍も平等とすべきなのか?」
これについては議論はまだ進んでいる段階であり、簡単な答えが出る問題でもありません。
ましてやテレビドラマが解決する問題でもない。
一石投じることが重要です。
アリアにせよ、トウにせよ、女性でありながら良妻賢母以外、しかも殺し屋である人物が登場しただけでも、重要な問題提起となります。
立体感のある愛すべき悪女たち
『鎌倉殿の13人』には、悪女が何人も登場します。
牧の方。
実衣。
比企能員の妻・道。
北条義時三人目の妻・のえ。
ただ、彼女たちにも言い分はあるし、憎めない。そこが納得できるように描かれていました。
ステレオタイプでもなく、かといって良妻賢母だけでもない。
悪女枠には入らない本作の政子や、八重、初も言動にはきついところがあります。
あの八重ですら、義時にどんぐりをぶつけ、一度はキッパリと求婚を断っています。
こうした立体感のある女性像は、三谷さんと女性スタッフとのやりとりが反映されていると思えます。
演じる側も戸惑うことはあったものの、むしろいいキャラだと褒められることが多かったと振り返っています。
男は籠絡される
こうした賢い悪女と対照的であったのが、妻に引きずられているような男性たちです。
比企能員は、義母である比企尼と道に引き摺られていく。比企の陰謀を主に決定的にするのは、妻の方でした。
そしてなんといっても北条時政。陰謀家で、権力を欲するとされる時政を、本作では愛が深すぎるために贔屓する田舎のおじさんのように描きました。
都会から来た若い妻に籠絡され、しょうもない陰謀を企む姿は、憎らしいだけでなく愛嬌がある。
情けないと言えばその通りなのですが、そこをうまくまとめてきた。何が男は感情に流されない、だ! そんな描き方でしたね。
嫉妬にドロドロしている男たち
女同士はドロドロだろ――そんな『大奥』の世界観をひきずり、女子校出身者や女性の多い職場に偏見を投げかける人は未だに後を絶ちません。
そんな時は
「『鎌倉殿の13人』の御家人同士も、男性同士で嫉妬し合ってドロドロだったじゃないですか」
と返せるかもしれません。
最終回で、三浦義村はぶちまけました。
俺より大したことのないお前が執権で俺が御家人なんてムカつく!
あまりにせこい嫉妬心であり、私は悪役令嬢を思い出しましたね。
三浦義村のセコさはドラマの描写ですが、実際に鎌倉時代の武士たちも、かなり嫉妬深いドロドロした世界を繰り広げていたと思えます。
先行するフィクションでも、梶原景時は源義経に嫉妬していじめる“お局“キャラといえるし。
史実ではその梶原景時の才能に、他の御家人が嫉妬するし。
美化しないで男同士にドロドロをおもしろくまとめてきた『鎌倉殿の13人』は画期的で容赦がありません。
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