お好きな項目に飛べる目次
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事前に草履を並べてしまう正信 実際、その通りに……
万千代は同年代の小姓たちが、武田との戦に向かうと聞いて文字通り歯ぎしりしています。
万福が宥めても聞く耳を持ちません。
そんなあるとき、正信は勝手に草履を並び始めました。
「何をするか」と万千代は苛立つのですが、正信が並べた通りの順番で人がやって来ます。
はじめは半信半疑であった万千代ですが、正信の見通しはズバリ的中。
正信流の草履番に驚く二人。
ところが、大久保忠世だけは予想が外れます。
家康に残業を命じられ、会議をしているようです。つまり、大久保に話を聞けば殿の悩みがわかるのではないかと気づく万千代。聞き出してみましょうか、と言い出す正信です。
大久保が出てきたところで、正信が話しかけます。
「殿に信頼されていますなあ~」とおだてながら、愚痴を引き出します。
聞けば、無理難題を出されていた大久保。こういう聞き出し方、相手へのへりくだり方が大事なんだぞ、万千代。
「おぬし、腕の立つ木こりは知らなんだ?」
大久保曰く、大量の材木募集中とのこと。万千代はこれだ、と顔を輝かせます。
草履の鼻緒をコッソリ切って、家康へ接近
その夜、万千代と万福のコンビはある作戦を実行に移します。
万福が捜し物をするふりをして注意を引く間に、万千代は草履の鼻緒を切断しました。
翌朝、家康が草履を履こうとすると鼻緒が切れています。
そこに万千代が草履を投げて、草履の修理を買って出ます。家康への接近に成功した万千代です。
しかし家康には、万千代の策はお見通しです。
おろしたての草履の鼻緒を万千代が切ったと見抜く家康。
誤魔化そうとする万千代ですが、無理と悟って平謝り。策を弄して側に寄ったと打ち明けます。
万千代は家康のチクリと嫌味を言われつつも、武田攻めのために材木を調達したいと申し出ます。
井伊谷になら、いい腕の木こりがいると切りだす万千代。おおっ、龍雲党の技が万千代の役に立っている!
万千代は、材木を調達できたら初陣を飾らせて欲しいと頼みます。
家康はこれを承知します。
万千代への贔屓が過ぎると他の小姓に妬まれるのでは?
龍潭寺で、おとわは万千代の書状を手にしています。
南渓に「戦に行かせるのは嫌か?」と問われるおとわ。
「武家としての出世を考えるのであれば、そこに是が非もございますまい」
いいですねえ。大河ヒロインとしては模範解答ですね。
「戦はいやでございます!」「あの子には人を殺して喜ぶような者にはなって欲しくありません!」は嫌われる回答ですぞ。
本音は嫌でもこう回答するのが正解です。
おとわが気にするのは、別のことです。
もはや井伊谷は近藤の領地なのに、勝手に材木を伐採するわけにもいかないでしょう。
思えば井伊と近藤がこじれたきっかけも、材木でした(第19回)。
そこへ方久とあやめ夫妻が行商から帰ってきました。おとわは何かを頼んでいます。
これで初陣だぜ、ヒャッハーと浮かれる万千代を見つめる康政。
康政は家康に苦言を呈します。あまりに万千代をえこひいきすると、周囲の小姓に妬まれると言うのです。
康政にもそんな経験があるのでしょう。彼が万千代を見守る目線は複雑です。
おとわ「材木については近藤に依頼を出して欲しい」
そんな折、方久が徳川を尋ねてやって来ました。
家康は、堀川城のことで方久に後ろめたい気持ちがあります(第34回感想レビュー)。
『おんな城主 直虎』感想レビュー第34回「隠し港の龍雲丸」
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方久は家康に覚えていられたことを喜び、いつもより気合いの入った犬の真似をしてみせるのでした。
方久が商品見本の刺繍を差しだすと、中からおとわの書状が出てきました。
おとわは、家康の後ろめたい気持ちを見抜き、彼を選んだのでしょう。
おとわの頼みとは、材木については近藤に依頼を出して欲しいとのことでした。
井伊谷は近藤領ですから、当然です。そこをスッ飛ばして策を立てる万千代が調子こいてごめんなさい、甘やかされないでください、とも釘を刺します。
それならば、近藤との間に角は立ちません。
小野政次の死と井伊家取り潰しいう大きな損失を経て、近藤と井伊が共存する井伊谷になったのです。そのへんを万千代はすっとばしている、ということですね。
家康はおとわの願いを快諾します。
武功を挙げる六左衛門 ブチキレる万千代
近藤はおとわに、丸太五百本の調達を頼まれた、誰か材木の伐採が得意なものはいないか、と依頼してきます。
そこで
「奥山六左衛門が得意です」
と推薦すると、あの役に立たない男にそんな特技が、と驚く近藤。
六左衛門は張り切って、材木の伐採に向かいます。
一方で万千代は、家康から「今回のことはなかったことにな。初陣はまだ先でいいぞ」と言われてしまいます。
なんでもう十五なのに初陣を飾れないのかと焦る万千代。
家康は、自分は十七で初陣だったと笑い飛ばし、留守居を頼むのでした。
その場ではぐっとこらえた万千代ですが、万福と二人きりになるとブチ切れて「邪魔する奴らは全員ブチ殺す!」と暴れます。
「十五の健気な息子が頼んでいるのに握りつぶすなど、情がないにもほどがあるではないか!」
まだまだジタバタと暴れる万千代でした。
一方で六左衛門は、材木伐採というかたちで「武功」を発揮。
これぞ適材適所なのでした。
六左衛門たちが伐採した木材は、あの「長篠の戦い」で有効活用することに。
決戦は次回!
来週は選挙の影響で放映時間が変更になります。お気を付けて。
MVP:奥村六左衛門&本多正信の中年転職コンビ
万千代の出世話と思わせて、実は中年サラリーマンの悲哀のような回でもありました。
中途採用で若者に怒鳴り散らされたり、体力がついていかなかったり。そういう辛さが身に染みます。
しかし昨年のブラック企業豊臣組と違うのは、ハッピーエンドになるところです。
本多正信は結局何をしても如才がない。賢い。
まさに嚢中の錐で、草履番のようなつまらない仕事でも、その才知をまるで魔法のように使い始めます。
一方の奥村六左衛門は、過去の蓄積と人の良さしかないわけです。
そこには、本作で繰り返し描かれて来た「持てる者」と「持たざる者」の姿があります。
それでも本作は「持たざる者」を見捨てない。優しい目線で見守ります。
常人の奮闘も報われるとちゃんと見せてくれます。
本当に優しい作品です。
地味だの知名度が低いだの言われていますが、本作はそこに寄り添っています。
ともかく凄くて偉い人が、電撃出世する物語のほうが華やかに決まっています。
記録も多いし、それをたどるほうが作るほうとしても楽かもしれません。
しかし、本作の脚本家の森下さんはそうではありません。
「戦国時代にも武家として適性がない人、敢えて武家を捨てた人もいたはず。彼らは何を考えて、どう生きたのだろう?」
そんな風に視点を下げて、想像して描くからこそ、血の通った物語ができあがります。
血が通っているからこそ、現代人にも伝わって、感動させる物語になります。
本当にこういうところが好きなんです。
総評
先週に引き続き「直政が出たら直虎の存在意義はないのでは?」という問いにキッチリと回答しました。
万千代は若く、未熟で、周囲の大人が気遣わねば暴走して空回りするだけ。
お釈迦様の掌で彷徨う孫悟空状態なのです。
万千代の暴走を、おとわが尻拭いしている。尻拭いする側が、存在意義がないはずがないのです。
今回はロングパスをきっちりと回収している快感がありまして。
龍雲党から続く木材伐採が、まさか長篠の戦いで有効利用されるとは気づきませんでしたよ。
他にも堀川城のこと等、いくつも過去の因縁を回収していました。
何よりおとわが「井伊家さえよければいい」と近藤をないがしろにした因果が巡った結果をふまえているのが心地よいのです。
見事といえば徳川家臣団の描き方も素晴らしいのです。
脇役である以上、断片的にしか彼らは描かれないわけですが、それでも彼らなりの歩んできた蓄積が垣間見えるのが素晴らしい。
このままこのキャストスタッフで家康を描いてもいいんじゃないかな、と思えてきます。
魅力的ですねえ。康政も忠勝も数正も正信も忠世も、全員素晴らしい!
「老成」の意味を描いていたのも好きですね。
万千代のキラキラした輝きがどうしても目立つわけですけれども、そのキラキラした輝きよりも、横で老成を見せる正信の方が光るんですよね。
正信だけではなく、おとわもそうです。
若さというのはある意味最強であって、その強い輝きを描くだけでもうそれは素晴らしいものになるわけです。
難しいのはむしろ老成の輝きです。
経験を積んだからこそ出てくる良さです。今週は出ていましたねえ。見続けた喜びというのは、まさにこのためにあります。
キラキラと輝く、井伊を再生させる若芽の横でひっそりと輝く前世代。
これぞOPから強調されている本作のテーマです。
残すところ十回以下。
寂しくもあるのですが、これからずっと面白いと保証されているのは嬉しい限りです。噛みしめて楽しんでいきたいと思います。
武者震之助・記
霜月けい・絵
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著:武者震之助
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【参考】
おんな城主直虎感想あらすじ
NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』公式サイト(→link)