『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』/wikipediaより引用

西郷どん感想あらすじ

『西郷どん』感想あらすじ視聴率 第42回「両雄激突」

どうせ体調不良をやるなら他にも色々あるでしょ

大久保が、西郷どんの長屋に来ました。

病気で倒れたときに土佐・肥前の連中にアッサリ無視されていた西郷隆盛。
そして、それに頼る大久保までもが無能に見えてきた。辛い……。

それに、ですよ。
どうせ西郷どんの体調不良をやるなら、史実ベースでやったらどうですか?

神経衰弱、下痢、睾丸肥大。
ドラマのように、過労でなんとなく倒れました、じゃないんだってば。

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大久保の愚痴もバカなのかと言いたくなるレベルです。

要するに、西洋スゲエ、追いつけないもん、ってさ。
あーあー。
幕府が外国の強大さを見に染みて実感していたころ、明治政府を立てた薩摩や長州の人々は何をしていました?

福沢諭吉が見たら、ハイテンションでどぎつい嫌味を言ってくれそうだな〜〜!

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ビジョンを語るならもっともっと具体的に!

外国ショックを受けた大久保。
ともかく政敵をやめさせるんだぁーと言い張っていて、もう、辛さしかない。

だから!
もっと具体的に!
明治政府をどちらに持っていくかのビジョンを語れよ!

これじゃただの、
「だってあいつらムカつくんだもん!」
で終わりじゃないですか。

あと、本作は非常に大きな問題点があります。

大久保は、西洋に追いつけ追い越せという一派とはちょっと違うんですよね。
むしろ西郷も大久保も、それに木戸孝允も、西洋の技術と東洋の徳の融合タイプです。

彼らが一気に、しかもほぼ同時期に抜けたから、明治政府の動きが変わってくるんでしょ。

西郷と大久保の対立の理由を、あのデスおにぎりのあたりで嫌な予感しましたけれども、史実から逸脱させるってもうわけがわからない。

日本史の知識を捨てなければ、見ていて脳みそがとろけそうになる、酷いドラマだ。

 

明治初期の領土問題があまりにお粗末

ここで、朝鮮の問題が出てきました。
このへんも、もう指摘するのも疲れてきました。

朝鮮だけではなく、樺太や台湾の問題も並行しているんですけど。
明治初期の領土問題をまともにやりましょうよ。

本作だと、
「なんか朝鮮態度悪いしぃ!!」
という、朝鮮がともかく悪いという路線に持っていくようです。

あーあーあー!!
どこまでゲスなんでしょ。

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樺太のスルーは、知っておりました。
薩摩がべったりだったパークスも絡んで来ていますからね。

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ちなみにこの樺太問題が、『ゴールデンカムイ』の根底にかなり絡んでおります。
もう、あの作品の方がよほど歴史の勉強になりますね。

 

またかよ、あの絶望的な、お菓子プッシュorz

はい、いつの間にやら西郷どんが朝鮮に派遣されることになっておりました。

このへんの背景もスカスカのまま、カステラを大久保の子供が食べる場面に。
犬と子役しか頼るもののない、虚しいドラマです。こういうお菓子プッシュはあの作品を思い出すなあ。

「せわぁない」
ああ〜、『姫たちの戦国』、『花燃ゆ』もお菓子路線が好きだったなぁ。

真田幸村と井伊直虎という、2年連続の力作大河を見た視聴者。幸せの味を知ってしまった視聴者。
そんな彼らが、
【壁を乗り越えてきた巨人に出会ったような顔】
になったのは、まさしくこれかもしれません。

「その日、大河視聴者は思い出した…… 奴らに支配されていた恐怖を。 お菓子推し大河ドラマに囚われていた屈辱を……」

我々は克服できていなかった!

そして岩倉使節団帰ってきます。
もう、岩倉が出てくるだけで『家族に乾杯』と言いたくなるので、なるべく出番は削ったほうがよいのではないでしょうか。

 

キャバクラで描く明治政府

明治天皇も登場します。

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本作の不敬ぶりが止まるところを知りません。
露骨な時間稼ぎ要員じゃないですか。

そしてこのあと、岩倉と伊藤はキャバクラへ。
ただのキャバクラではなく、木戸孝允、山県有朋、井上馨らもいました。

明示政府の偉大さを、キャバクラ入り浸りという暗黒面で描く。
まさにゲスの極み!

磯田屋といい、本作は歴史やキャバクラで始まっているとでも言いたいのでしょうか?
なんでそんなメッセージを送るの?

だって岩倉ですら、西郷隆盛大久保利通の対立を、このお店で知るんですよ。

長屋の立ち話。
キャバクラ。
そんなところでしか情報を得られない明治政府首脳部についていけません。

そして大久保もやって来ます。

指摘するのも野暮ってもんですけど、こいつらのキャバクラ飲み代って、税金ですよね?

明治維新を達成したおかげで、税金で子弟を留学させられるし、キャバクラ入り浸りで最高!
そう言いたいようにも見えてきた。

 

咳き込むだけが体調不良なのか?

このあと、三条のアホ麻呂っぷりを挟み、閣議の場面へ。

岩倉はここで西郷どんの朝鮮使節派遣が決まるかと思っていたのですが、大久保がちゃぶ台返しします。
同時に咳き込む西郷どん。
体調不良アピールでしょうけど、本作はどうして呼吸器系以外でも咳き込むのかという疑問が湧いて来ます。

西郷どんは、咳が出る症状じゃないっつうの。
まぁ、遺体確認にも使われたという睾丸のことはやらんでしょうなァ。

それにしても。
大久保がなんかいきなりおかしくなった、みたいな描き方ですけど、この件、西郷側にもかなり問題がありましたからね。どうせやらないでしょうけど。

もう最終回まで、
「どうせこの史実やらんでしょ」
だらけだった――そんなオチになりそう。

 

総評

先週と今週、こんなにも辛いのはナゼか?

それはきっと、『八重の桜』総集編鑑賞後であるからなのです。出来が違い過ぎる……。

この違いは、観光にも影響がありそうでして。

◆「西郷どん大河ドラマ館」苦戦…50万人目指し集客作戦(→link

鹿児島・旧薩摩藩を舞台にした2008年の大河「篤姫」のドラマ館は観光・商業施設の中にあり、目標を上回る年間57万人を集め開館時期も延長された。過去2年のドラマ館は「真田丸」(長野県上田市)が103万人、「おんな城主 直虎」(浜松市)が78万人の集客実績がある。

2016年 真田丸(103万人)
2017年 おんな城主 直虎(78万人)

アッサリ惨敗ですが、この2年間は戦国でしたので、比較は難しいかな?
ならば近年の幕末大河とも比べてみましょう。

◆『八重の桜』の場合、放映後1月、60万人を達成しました(会津若松市公式サイト→link)。

『花燃ゆ』の場合は……。

◆花燃ゆ大河ドラマ館 客少なく目標30万人「ちょっと厳しい」(→link

◆防府市がNHKに抗議 「花燃ゆ」台本変更で1億円以上かけた施設が注目されず(→link

いやはや、大河ドラマ館動員数でも、「薩長同盟」でごわすなあ。
自治体や観光当事者のみなさまにとっては笑い事じゃありません。

大河ドラマの出来は、どうしても視聴率だけで判断されるものですが、現在は録画率も高いわけで。
観光効果も大事なんです。

近年では高視聴率の『真田丸』ですら、往年の視聴率のみならず、戦国ブームに後押しされた『天地人』にも及びません。
『おんな城主 直虎』は、視聴率が伸び悩んだため、失敗作という評価すらありました。

しかし、この二作は脚本はじめ作品評価、番組に寄せられた好評意見の多さ、そして観光効果をみますと、成功作であったと言えるでしょう。

『八重の桜』の場合、東日本大震災による観光への打撃を払拭しました。
5年連続「会津まつり」に綾瀬はるかさんが参加して、これまた大賑わいですからバッチリですね。

国際エミー賞にノミネートは、他の大河では達成できなかった高い評価の証です。

そこで『西郷どん』です。

視聴率は一桁達成。
観光効果もイマイチ。
評価は最低。

こんな大コケは『花燃ゆ』と本作くらいです。
これぞまさに、明治維新150周年を祝う熱〜い「幕末最低最悪大河薩長同盟」でしょう。

きっちり反省して欲しいところで、奇妙なほど持ち上げ記事が多かった本作も、ようやく潮目が変わったようです。

◆NHK大河ドラマ『西郷どん』の低迷続く 『ドクターX』中園ミホ氏が脚本務める(→link

ただ、残念ながらこういう記事は本質を突くことが少なく、隔靴掻痒感があります。

根底にある歴史観の酷さ。
そこを見ていきましょう。

ナポレオンの伝記を読んだから西郷は革命家だの。
幕府が薩摩をフランスに売り渡そうとしただの。

そんなデタラメかつ歪みまくった、70年以上前の価値観すら入った歴史観が根底にあっては、どんな脚本家だろうと名作なんて書けるはずがありません。

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著:武者震之助
絵:小久ヒロ

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【参考】
西郷どん感想あらすじ
NHK西郷どん公式サイト(→link)等

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