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【青天を衝け第11回感想あらすじレビュー】
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「七つまでは神のうち」
今週は栄一と千代の子が亡くなりました。
江戸時代以前の乳幼児が、凄まじい死亡率であることは弊サイト・馬渕まり先生の記事がありますのでご参照ください。
江戸期以前の乳幼児死亡率は異常~将軍大名家でも大勢の子が亡くなる理由は?
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今回は出産について考えてみたいところがあります。
千代の出産後、栄一がドタドタと騒がしく産屋に入ってきました。
これはどうしたものでしょうか?
出産時、男性は役に立たないから付き添わないことが当然だという認識は、それこそ昭和まであった。
そういう認識が欠けていると言わざるを得ません。配慮もない。
出産後の負担は今も相当なものですが、当時となればさらに重い。それなのに、千代はわざとらしいメイクで結構元気そうでした。
しかも、出産直後から働いている。栄一も周囲もニコニコしている。
もちろん、渋沢家のように使用人がいない貧しい家であれば、パール・バックの『大地』のように、出産当日に働いていてもおかしくはありません。
しかし、あれほどの豪農の世継ぎが誕生して、ちょっとおかしいのではありませんか。
あえて辛辣に指摘させていただくと、栄一の無自覚すぎる行動を見ている限り、子供が夭折しても仕方ない環境だったのでは?と感じました。
確かに幕末のパンデミック(麻疹)についてのナレーションは入りましたが、それが関係ないと思わされるぐらいの雑配慮。
昨年の大河で医学考証スタッフが働きすぎたものだから、今年は休みをとっているの?とすら考えたほどです。
「産後の肥立ちが悪い」
今ではちょっと古い言い回しもあります。
当時は産後死亡率がそれだけ高かった。
それなのに、栄一は寝込んだ千代の元へドタドタと駆け込む。
しかも第一子の悲劇があったのに、第二子出産のあとがあの行動です。
思いやりが全くないとしか言いようがない。
「雌鶏歌えば家滅ぶ」
渋沢栄一の女性観がどう描かれるか?
これも気になるところです。
ただ、漢文教養豊かな彼が、妻だろうが女性の言うことで大志をまげないであろうことは指摘しておきたいところです。
◆『青天を衝け』勇ましくなってきた栄一、過激な思想にも触れ…千代が抑止力に(→link)
こちらのレビューによれば、要するに千代への愛が抑止力になっているということですが、今週の放送で呆気なくそうではないと示されてしました。
なぜこのような誤解が生じるのか。
というと、本作が当時の価値観に対する理解がなく、視聴者へのウケ狙い重視で、現代の価値観にストーリーを収めようとしているからではないでしょうか。
同じ脚本家の朝ドラ『あさが来た』でも、同様のテクニックが使われていました。史実から見るとかなり雑で、モデル(広岡浅子)への侮辱のような描写も多かったのですが、世間的にも話題となり、ヒット作として認識された。それを大河でも流用しているのでしょう。
あさが来たモデル・広岡浅子はドラマより史実の生涯69年の方が豪快だ
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しかし、当時の価値観からすれば、女の抑止力で行動が止められるなんて、相当恥ずかしいこと。
ジェンダーで歴史を見る難しさなのですが、女性の言いなりにならないという発想は、むしろ太平の世が続くと強固になります。
『麒麟がくる』での信長は、妻である帰蝶の助力を得ていました。ヒロインの駒が動きすぎるという根強い批判もあった。
しかし、戦国と幕末を比較すれば、むしろ前者の方が女性の発言権があっても不思議ではないということです。
信長の妻で道三の娘である帰蝶(濃姫)史実ではどんな女性だった?
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話が長くなりましたが、そういう幕末において、女が抑止力になるなんてまずないと考えた方がよいでしょう。
そんな時代でも意思を通したからこそ、篤姫なり和宮は特別で偉いといえる。
しかし、本作ではただのイチャイチャ要員です。気が強く、夫と不仲だった美賀君も、癒し系になった。
『花燃ゆ』ではできなかった高みを本作は目指しているようです。
ついでに言っておくと、こんな古臭い昭和の妄想じみたヒロイン像は、女性のエンパワメントに無関係どころか有害です。
今週の演出チェック
今週も演出がパワフルで、いろいろ不安になりました。
栄一はやたらと走る。妻が寝込んでいようが走る。口半開きで走って美貌が台無しだろうが走る。
しかし人には限界ってものがあります。
ずーっとあんな風に走るよりも、馬を探しに行けばよいでしょう。お金はあります。
さらに宿屋にもハァハァ息を切らしながら飛び込みますが、一体どういうことでしょう?
宿の中であんな物騒なことを大声で話していては、どれだけ危険なことか。
そんなわけで、今週も奇妙な動きを見ているだけでムズムズさせていただきました。
本作を見ていると、何か間違った楽しみ方を見出している自分がいます。出来の悪いゲームのバグで遊んでいると言いましょうか。
にしても、すごかったですよね。公家の「攘夷の日にちを決めなされ!」ムーブと、慶喜のヤレヤレ顔スマイル。慶喜が棒読みなのは、サイボーグじみた性格ゆえにそうされているのか。
そして円四郎がぼやきながらやってくる。
貧乏くじとか言いますけど、このドラマは幕末の価値観がよほど嫌いのようで、作り手が幼少期に読んだ漫画を再現したいらしい。
こんなラフで馬鹿げた君臣関係を描いて何がしたいのでしょう。
堤真一さんにも、しょうもねえスマイルをさせないでいただきたい。
他にも、美賀君の無茶苦茶ぎこちない背後からの抱きつきとか、藤田小四郎くんの煽られムーブとか、熱かったです。
やたらと叫び、掴みかかり、距離を縮めれば熱いと思っているらしい。
誰も迷惑を考えていなくて、あまりに自由ですね。
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