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真田丸レビュー

『真田丸』感想レビュー第35回「犬伏」 兄・信幸が旗を振り、船頭となるとき

更新日:

 

こんばんは。
前回は裏番組にくわれて、視聴率が最低記録となりました。今週は見せ場ですので、盛り返して欲しいところです。

◆〈速報〉NHK「真田丸」24時間テレビで自己最低13・2%

 

 

上杉討伐のため会津へ向かう徳川家康一行。この機に石田三成は挙兵しました。さて真田はどう出るのでしょうか。

真田は上杉につく、昌幸の言葉を借りれば「徳川を裏切るのではなく表返る」道を選びます。昌幸たちは、妻子たちが徳川方の人質になることをおそれて、上田と沼田へ戻るように伝えます。
ここで女同士のバトルが勃発。
薫を守ると張り切るきりに、春が対抗心を燃やします。きりは細川屋敷の仕事はサボると堂々と宣言。私も「きりだから仕方ない」とこの手の発言をすっかりスルーできるようになりました。

稲は、父の本多忠勝から届いた「真田が徳川を裏切る気配を見せたら伝えよ」という内容の書状を昌幸に見せ、自分は真田信幸の妻であるから徳川に内通などしない、と断言します。あの嫁いだばかりのツンツンした態度から、よくぞここまで変わったものです。そしてここで伏線となるのは、舅や家そのものではなく、あくまで「信幸の」妻として忠誠を誓っている点でしょう。

信繁は上田に出立する前日、大坂城の片桐且元の元へ向かいます。且元は石田三成が豊臣秀頼に贈った桃の木を世話しているのでした。

そこで寧に出会った信繁は、世の中が落ち着いたら気立てのよいきりと一緒に顔を出しなさい、と言います。視聴者からはブーイングを受けるきりですが、職場での人あたりはよかったようですね。
信繁は大坂城の壮麗な天守閣を見上げ、秀吉が健在だったころや、茶々がまだ秀吉の側室となる前だったころを思い出します。信繁は、あと何度こうしてこの城を見上げるのでしょうか。

今作における秀吉の妻たちは、関ヶ原では重要な役回りを果たさないようです。女同士の対立という視点から展開されることも多い関ヶ原ですが、寧は戦そのものに心をいため、茶々は無関心というわけです。
寧のような戦を嫌うヒロインは大河のテンプレではあります。が、今作の寧の場合は、夫である秀吉が築いた「戦のない世」を守ることこそ正しいと彼女が考えているとわかるため、あまり違和感はありません。

 

 

会津では、上杉景勝と直江兼続が戦の支度をしております。
領内から身分を問わず男子を取り立てるべきと進言する兼続ですが、景勝は「嫌がる者は見逃せ」と甘い言葉を言います。ここで兼続、渋い顔。
この調子ですと、主君を裏切って心苦しいとは思いつつ、容赦なく兵を集めるように見えます。

江戸城の家康は、出陣する嫡子・秀忠に本多正信を後見役としてつけることに。
秀忠は自室に戻ると、「父に信じられていないんだ、気持ちが萎えるわ」と愚痴ります。それを励ますのが目を爛々と輝かせた妻・江です。

男キャラの暑苦しさナンバーワンが宇喜多秀家なら、女キャラではこの人が暑苦しさ筆頭にあげられそうです。
僅かな出番ながら、江からは推しの強さと気の強さがみなぎっています。秀忠がのほほんとしていてクールであるのに対して、この妻はそうではない様子。長姉である茶々とも、かなり性格が違いそうですね。

この短い出番でここまでキャラクターの方向性がわかるのは、かなりの名演だと思います。
江も過去作で曰く言いがたいイメージがついた人物なので、今作で上書きした欲しいところです。

 

 

その頃、上方では、会津へ向かう大谷吉継の陣に石田三成が訪れます。

勝算はあるのかと尋ねる吉継。三成は「わかりませぬ。やらねばやらぬのです。お命、私に預けてはいただけぬか」と決意を語るのですが、吉継は複雑そうな顔で挙兵の誘いには返事をしません。ただ、三成に今夜は泊まってゆけ、と言うのみです。

その晩、吉継は三成を呼び出すと突如ハッパをかけました。
「勝てるかどうかわからぬと申したな。そのような男に命を預けるわけにはいかぬ。そのような弱音を吐くな、兵を起こすならば必ず勝つ! その気概がなくしてどうする!」
三成は目を潤ませ、吉継の言葉に聞き入ります。事務裏方には向いていてもいまひとつ戦略を練れない三成に、吉継は「秀頼を味方につけ、家康弾劾状を書く」と策を授けます。

上田城で昌幸は、高梨内記とともに乱世をめざして野心をギラつかせます。しかし、刀狩り以来武装解除されていた与八ら兵士たちの心境は複雑なようです。

大坂の真田屋敷では、薫が大量の衣装を前にああだこうだ言いながら荷造りをしております。薫の行動はばかばかしくも思えますが、一枚一枚の衣装に夫との思い出が詰まっていて、あとで泣かせる伏線かもしれません。もしかして、ですが。

そこへ佐助が、大坂城に石田三成・大谷吉継が入ったと報告しに現れます。佐助は忍術がレベルアップしたのか、高速移動すると「風の音」SEが入るようになりました。

 

 

三成の西軍、いよいよ始動です。諸大名に家康弾劾状を突きつけ、諸大名の妻子を人質にとり、宇喜多秀家・小早川秀秋に伏見城攻めを命令。

しかし小早川秀秋は、どうにもやる気がない様子。秀秋のこのやる気のない演技がいい。秀秋の態度は腹立たしくもあるのですが、彼は秀次らの破滅を目にしてきたわけです。同情の余地はあります。
秀秋は、腹心の板部岡江雪斎にやる気がないと憤懣をぶちまけます。すると江雪斎は徳川のスパイだという自らの正体を明かすのでした。
えっ、もう!?

春は父・吉継を訪れ、元気を回復した姿に喜びます。春たちは吉継の庇護があるからとりあえず安心であるということになります。家康の側室である阿茶局は、混乱に乗じて城を脱出。さすが抜け目がありません。

真田屋敷で薫やきりが荷造りをしていると、細川屋敷の方角から煙があがっています。
職務放棄をしていたきりは、慌てて細川屋敷へ。すると玉が、ロザリオを手にして恍惚とした表情で祈りを捧げていました。玉は夫の細川忠興から、人質に取られるくらいなら自害するように命じられていたのです。

きりは「ならさっさと自害すればいいじゃん!」ととんでもない発言。しかし玉は「切支丹は自害できないから」と答えます。きりは困惑し「切支丹、わけわからない!」と本音を言います。

きりは玉の言葉には構わず、ひきずり救出しようとします。「結構重たい!」と更なるとんでもない発言つきで。
ここで玉はハッとして、洗脳がとけたように生きる望みを顔に出します。そこへタイミング悪く、玉の家臣が駆けつけます。もう少しきりが早ければ、玉は助かったかもしれません。
玉はまた笑みを浮かべ、元居た場所に戻ってしまいます。すると家臣の槍先が障子越しに玉の胸を貫き通し、絶命します。

この場面、きりがドタバタしていて、ちょっと変なんですよ。ただ、悪い意味ばかりではなく、なかなか興味深いとは思います。
玉の死は本当に自害だったのか? 実は夫の忠興による強制殺害ではないか、という説もあるそうです。確かに「自害は駄目だけど、誰かに命じて殺されるならセーフ」とは妙な気がしませんか。それはどのみち本人の意志で死ぬことには変わりがないのではないでしょうか。その説の折衷案を本作は採用しているように思えました。

この場面で一番辛いのは、玉がきりに助けられようとして一瞬生きる気力を取り戻したことです。従容として死に向かったわけではなく、一瞬でも生きる意志を取り戻したわけです。本当に一瞬ですが……これがとても残酷に思えました。玉が洗脳されていたように見えてしまったわけです。

きりが玉の死に唖然としていると、三成配下の兵士が乗り込んできます。きりは、助けに来た佐助とともに祭壇の下に隠れます。

 

 

ちょっとここで、きりについて。おそらく玉の死を邪魔して鬱陶しいと言われそうなので、擁護しておきます。

そもそもなぜ、きりは切支丹にあこがれたのでしょうか。これが結構唐突に思われているようです。
殉教の覚悟があるわけでもなく、信仰心もありそうでもなく、ミーハーなだけに思えますが、話の流れを追っていくとわかる気がします。きりが初めて切支丹の教えに接したのは秀次の形見の聖母子像を見たからです(第二十八回)。

はじめは、なぜこれを秀次が残したか知るために、玉に話を聞いたわけです。そしてきりは、玉との問答でこう教えられます。

「あなたに思う心があれば、既にゼウスによって救われるのです」

それこそがもっとも気に入った点だと、きりは信繁に言いました(第三十四回)。実のところきりは、切支丹の教えをあまり知りません。ただ、

「私が思えば、相手にも届いて両思いになれる!」

という点が気に入ったのだと考えれば、納得できるのではないでしょうか。
いつまでも相手を思っているのに、通じないきり。そんな彼女にとって、「片思い=両思い」であるという切支丹の教えはきっと救いであり、魅力的なのでしょう。そんなふうに無邪気に思っていたのに、玉から自害は駄目だのなんだの聞いて、「えっ、意味わかんないし、切支丹怖すぎ」と引いてしまったわけです。

そんなきりがあの場にいたことは、ちょっとした救いだったと思います。
きりは「もっと教えて欲しいことがあるんです」と玉に言いました。そのとき、玉は、死をさだめられた忠興の不幸な妻としてだけではなく、一瞬でも玉は博識で優しい、生きるべき女性として存在できた気がします。

それと、これはあまり気遣う人がいない気がするので書いておきますが。こう何度も何度も、身近な人をトラウマになりそうな亡くし方をするきりの精神が心配です。図太いので乗り越えられるのでしょうけれども。
きりは無神経だの何だの言われるアンチヒロインですが、そのくらいでないと精神的地雷を何度も踏み抜いても笑顔でいることなんてできないと思います。

 

 

細川屋敷の異変を見た稲は、徳川に近い自らの立場をあやぶみ、沼田へ逃げることを決意。こうと子供たちを連れて脱出することにします。

稲の見せ場は来週あるかと思いますが、関ヶ原での彼女はどこにいたのかは、考証担当者の間でも意見が異なるようです。人質として大坂にとどまったか、信幸の配慮によって脱出していたか。本作では脱出説を採用しています。

玉の死は、三成にとっても手痛い失敗でした。
捕縛したきりと佐助から玉の死を聞いた三成と吉継は、作戦が裏目に出たことを瞬時で悟ります。吉継は佐助に密書を託し、真田に送ることにします。いつも密書を送る際に締め切りを縮められる佐助ですが、吉継はそうしませんでした。優しいですね。

この頃、江戸にいる家康の元まで、三成挙兵の知らせが届いています。

吉継はもはや病が進み、戦場では采配を振るえないと悟っていました。人前に出る時は頭巾で顔を覆うようにもなっています。
彼は筆と頭脳で三成を支えると決意を固め、まだどちらへつくかわからぬ諸大名を西軍につけるため、書状を書くことにします。三成は吉継を気遣い祐筆を使わないかと聞きますが、吉継の決意は堅いのです。
しかし流石に筆すらとれぬため、吉継の言葉を三成が書き留めてゆきます。夜通し書状を書き続けた二人。夜が明けたとき、吉継の体力は限界でした。倒れ込む吉継を三成が支えます。

ちなみにこのとき書状を一斉に書いていたのは、彼らだけではありません。家康も書状を大量に発給し、諸大名にこまめに送っています。このとき、日本中は大量の書状が行き交っていたことでしょう。

それにしても吉継は、本当に自らの筆で三成を勝たせることができると思っていたのでしょうか?
三成よりも彼の方が、むしろ確信がなく動いていたのかもしれません。ただ彼には、どのみち後はありません。見えぬ目と衰えゆく肉体を、最期に完全燃焼するため、奮闘しているのかもしれません。

 

 

七月二十一日、いよいよ江戸からは家康の三万が北上し、宇喜多・小早川が伏見攻めへと向かいます。

同日、真田昌幸・信幸・信繁は犬伏に着陣しました。そこへ佐助が吉継からの密書を届けに来ます。昌幸は三成の挙兵を知り、怒ります。上杉攻めで昌幸が家康の首を取った後、三成が挙兵すべきだったと、昌幸は判断していたからです。

父子三人は堂に籠もり、今後について語り合います。
昌幸は、これから上田に戻り籠城すると宣言。誰にも加勢せず、守りを固め、攻めて来た敵を撃破すると豪語します。というのも彼は、このあと乱世に戻ると読んでいたからです。あと十年で世が乱れる。その間に旧武田領を復する――という策です。

この言葉を聞いて、昌幸にあきれた人もいるかと思います。ただ彼を擁護しますと、昌幸の考えていることはそこまで無茶苦茶ではありません。むしろ当時としては主流派といえるのではないでしょうか。

関ヶ原の戦いといえば東軍西軍と分類するわけですが、どちらかの姻戚であるとか、あるいは強烈な思い入れがあるわけでもなければ、割とどっちつかずなんですね。
「この戦いが長引いたらまた乱世に逆戻りしそうだから、今のうちに領土を拡大しておこう」
そう思った勢力が、むしろ主流ではないかと思います。一昨年の軍師官兵衛でも描かれておりましたが、官兵衛は九州でいきいきと暴れておりました。

本作において目立った勢力の中では、伊達政宗もこの「乱世に期待派」です。
奥羽の大名は家康がUターンしたあと、上杉勢と対峙することとなります。この時の政宗の行動は、実に描写が難しいのです。自領が直江兼続に侵攻された最上義光に消極的な援軍を送る一方、一揆を煽動させていたりするのです。
政宗の行動は一応「東軍」といえるものではありますが、長引くと思われる戦乱の合間に奥羽をできるだけひっかき回し、火事場泥棒的に領土拡張を狙っていたと思われます。

 

 

しかし昌幸の乱世期待発言に対し、信繁は大反対!
今や敵味方の力が大きくなり、一度の合戦で一気に世が動きます。つまり、乱世は到来しない、夢物語はもう終わりにしてくれ、というわけです。父に対して珍しく声を荒げる信繁。長期戦略において、信繁は父を完全に上回りました。

外では家臣たちが中で何を話しているのか気にしています。河原綱家が気になってのぞき見すると、怒った信幸が何か(竹筒?)を投げつけ、綱家は歯が欠けてしまいました。史実では彼は大坂に居留守役として滞在していますが、この後世の創作逸話はあまりに有名であるため、付け加えたそうです。ちなみに元の逸話では、昌幸が下駄を投げたことになっています。

信繁はもはや乱世は訪れない、今後は豊臣の勝ちとなると読みました。しかし信幸は、徳川家康の力は強大で侮れないと言い出します。

ここで昌幸は、こよりを作り、どちらにつくかくじ引きで選ぼうと言い出します。信幸はさっとくじを引き抜き「こういうことはもうやめましょう」と父の意見を一蹴します。
このくじは両方とも朱=豊臣に塗られていました。昌幸は徳川につく気はないということです。

「私は決めました……私は決めた!」
突如、信幸は叫びます。
くじ引きからこの台詞への流れは、第二回の昌幸と同じです。変わったのは、武田滅亡時には真田の命運を決したのが昌幸であったのに、ここでは信幸になっていることです。

信幸の策はこうでした。
昌幸と信繁は豊臣につき、信幸自身は徳川につく。
敵味方に分かれると驚く信繁に、信幸はそうではないと言い返します。もし豊臣が勝ったら、信繁がどんな手を使ってでも兄を助ける。徳川が勝ったら、信幸がどんな手を使ってでも、父と弟を助ける。この策こそ、三人がまだ集まって手を取るための策だと。たとえ豊臣と徳川に別れても、真田は一つだと宣言する信幸。彼こそが、真田精神の継承者となった瞬間でした。

兄弟で二人きりになったとき、信繁は「兄上には迷惑をかけっぱなしです」とつぶやきます。信幸は「我ら三人でもう一度、徳川の大軍相手に大暴れしたかったがなあ」と言います。

兄弟は、これが最後の戦いになると悟っています。
この先どうなるのか。これからは我等が真田を背負っていかねばならないと決意を新たにします。二人は父の大きな背を超えました。

信幸は、死を前にした祖母・とりの言葉(第26回)を思い出します。

「我等はこのときのためにうまれてきたのかもしれない、いずれまた三人で飲める日が来ることを祈ろう」

そう語る信幸。二人でひとつという言葉は、別れることによって実現されようとしています。
ただ、信幸はもう一人でも家を守ることはできるくらい成長しているんですよね。それと比べると信繁は感極まって泣き出してしまっていて、その様子が子供返りしたように幼く見えたのです。

嫡男とそうでない者の差が見えた気がしました。よい兄弟です。彼らのように真田の兄弟たちは、これまでも協力して家を守ってきたわけです。

三人は再度堂に籠もり、酒盛りをします。
信幸は名将である韓信は父に似ていると語り出します。「背水の陣」や戦について父子は語り合います。この三人の雑談は随分と久しぶりの気がします。信幸は父への敬愛をにじませ、「父上は日の本の韓信だと思っている」と語ります。心の底から愉快そうに笑う三人。これを最後にして、三者は別れてゆきます。

 

MVP:真田信幸

今週は絶対に迷うと思っていました。が、蓋を開けてみると全く迷うことなく、信幸だと思いました。台詞も彼がおそらく一番長かったですね。

考えてみれば、「真田丸」というタイトルですから、その名の船が沈んだらおしまいであるわけです。そしてこの浮沈を決する場において、信幸が舵取りをしたわけですから、彼こそ作品全体のMVPであったとしても過言ではないでしょう。
死者への恩義にひきずられて「生存」という判断力が鈍った父と弟に対して、信念を貫き生き延びるための決断をした信幸。今週こそ、彼のひとつの到達点であり、ドラマとしてもまさに頂点でした。

信幸も振り返ってみれば、父の突拍子もない策に翻弄され、弟には劣等感を味わい、ずっとどこか冴えない日々が続いていました。それが今、父と弟を超え、心の底から笑うようになりました。父の才知に戸惑っていた頃は、父を韓信にたとえて笑顔で称えるということはできなかったでしょう。

今週は真田信幸の才能が花開き、父を超えた回でした。

 

総評

すべては「犬伏」を計算して、八ヶ月間ドラマを紡いできたのだとわかった回でした。これは紛れもなく、今まで放送した中でもベストの回でしょう。そして様々な人々が叡智を絞りうごめく中で、真田の三人が最も輝いている回でもありました。

本作にはいくつもの大きな「先代の背中」が出てきました。偉大な父を超えることができず、あるいは超えようとしている途中で、力尽きる者たちがたくさん出てきました。武田勝頼、織田信忠、春日信達、北条氏直、豊臣秀次……しかし真田兄弟は、見事に昌幸を超えて花開きました。

そしてこの父と兄弟は、笑顔で腹を割って話し合っています。もし同じように、氏直や秀次ができていたならば。自分の意見を素直に相手に伝え、それを認められていたなら。道はもっと違ったものになったかもしれません。

真田の父子は幸せです。

彼らが幸せになった秘訣は、シンプルで力強い「信頼」です。真田一族は天下を取るわけではありません。ただ、力強く、この乱世を渡りきるだけです。その姿がなんと幸福で、なんと力強いことか。

信頼すること、生きること、そんな小さいようで、とても大切なことを大事にする。本作は時に珍妙で、時に思い切り意地が悪いのですが、根底にそんな熱い血潮が流れていることを感じます。今回はまさにそんな「互いを信じて生き抜く」熱さが頂点に達した回でした。

本作序盤の謀略を見て「どこが愛と勇気の旗を掲げているんだ?」と思った方も多いでしょう。しかし今回でわかったのではないでしょうか。本作はちゃんと、家族への愛と、信じる勇気の旗を掲げていますよ。

著:武者震之助
絵:霜月けい

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関ヶ原合戦屏風/wikipediaより

関ヶ原合戦屏風/wikipediaより

 

 

 




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