ドラマ大奥レビュー

ドラマ『大奥』公式サイトより引用

ドラマ10大奥感想あらすじ

ドラマ『大奥』感想レビュー第3回 白猫に若紫と名付けた意味深さよ

春日局は、徳川家光の心を開くべく、万里小路有功を強引に大奥に入れました。

しかし家光は有功をあざけり、ひねくれた態度をとるばかり。

それでも誠意あふれる振る舞いを崩さない有功。

家光はある夜、有功に白猫を与えたのでした。

 


白猫に「若紫」と名付けよう

なぜ家光は有功に白猫を与えたのか?

有功はどう感じたのか?

それを解き明かすうえで『源氏物語』が重要な役割を果たします。

有功が「若紫」と名付け、その由来を説明すると、家光は手なづけるつもりかと苛立ちながらも『源氏物語』に興味を持ち、読むようになります。

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の時代、坂東武者で『源氏物語』を読みこなす者はそこまで多くありませんでした。

源平合戦の時、坂東武者は「平家の連中は歌なんて役に立たないものを詠んでいる」と語ったと伝えられるほどではあります。

それも時代がくだるにつれ文明化されてゆく様子は、劇中の源実朝を見ていればよく理解できたかと思います。

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『大奥』の江戸時代初期の場合、きちんとした武士ならば教養として『源氏物語』くらいは把握しています。

しかし、この時点で家光は理解があまりできていない。

これは彼女の生育環境へのヒントになります。

そして春日局はじめ、周囲はこの猫のやりとりを肯定的に評価し、一方で大奥の御中臈たちは嫉妬する。

たかが猫、されど猫。

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猫に含まれた意味も『源氏物語』で紐解けます。

その世界を少々見てみましょう。

 


猫は縁を結ぶ

光源氏が迎えた若妻・女三宮に心惹かれることになる柏木。

女三宮が画題となると、大抵猫が描かれています。

ある春の日のことでした。

柏木は六条院の庭で、親友である光源氏の息子・夕霧たちと蹴鞠をしていました。室内の女房たちも御簾越しに見物しています。

すると猫が御簾の裾から走り出て、首につけていた長い紐が御簾を巻き上げてしまったのです。

そしてあらわになったのが、女三宮の可憐な姿でした。

柏木はそんな彼女に心惹かれてしまう――この場面を表現するため、女三宮の絵には巻き上げられた御簾と猫が描かれるわけでして。

すっかり女三宮の虜となった柏木は悶々としながら、なんとかしてこの猫を手に入れ、可愛がります。

そしてニャーニャーという鳴き声を聞いてこう解釈するのです。

「ネヨウネヨウだって? 大胆だなぁ、もう!」

恋する柏木の痛さ全開ですが、なんでも色恋沙汰に結びつけてしまう「色好み」の感性こそ都らしいものとされます。

有功は決して性欲でムンムンした暑苦しい男ではありません。むしろ清らかで涼しげ。にもかかわらず、花のように儚く美しい、雅な色香がある。

そして狙ったのか、そうでないのかわからないけれども、『源氏物語』という最高の教材にまで家光を到達させました。

『源氏物語』の成立は、一説によれば藤原道長が娘に恋愛を教えるために、紫式部に書かせたとも言われています。

まさに最高の恋愛マニュアルですね。

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春日局からすれば「これだ! これでこそ西の男を苦労して手に入れた甲斐があった!」となりましょう。

一方で、ライバルの御中臈からすれば、さっぱりわけのわからないことをされてひたすら不愉快。雅さで有功に勝てるわけがありませんからね。

そんな淡い恋の芽生えが縦糸だとすれば、別の黒い横糸があります。

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