ドラマ大奥レビュー

ドラマ『大奥』公式サイトより引用

ドラマ10大奥感想あらすじ

ドラマ大奥感想レビュー第9回 家重の本質を見抜き跡を継がせた吉宗

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ドラマ大奥感想レビュー第9回
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東西の医学レベル

東西で文明進化の差がついたのが、中世から近代の間とされています。

清朝、朝鮮王朝、江戸時代の間です。

実は、戦国時代あたりまではそこまで差がなく、ヨーロッパだって医者はハーブ頼りでした。

それが西洋では「17世紀科学革命」が起き、東洋を大きくリードしていきます。海禁政策をとっていた東アジアはここで遅れを取ってしまった。

といっても完全に塞いでいたわけではなく、外を見る穴は空いていて、吉宗が大きく穴を開けていくのです。

吉宗は杉下に、男への蘭学解禁を打ち明けます。

女に解禁しないのは、「男がいないこと」を外国に知らせぬため。

杉下は、その進吉の大奥への出入りを許可してはどうかと提案します。右筆部屋にも蘭学書があるのだとか。

かくして裃をつけ、出世したとわかる杉下が進吉を迎えます。風間俊介さんは和装でもきっちりした武士や学者の服装がお似合いですね。

相手の進吉が、死んだはずの祐之進であるとわかり、感激する杉下。眉間に皺がより、顔がくしゃくしゃとして、感極まって抱き合い泣き出します。

その様子を久通から聞き、「それは重畳」と喜ぶ吉宗。

こうして蘭学を取り入れ、医学が発展したとのナレーションが入ります。

日本の「漢方」とは、蘭学も取り入れられています。だからこそ杉田玄白の『解体新書』もある。

幕末には進歩的な藩は、種痘を取り入れ、天然痘予防をしておりました。本作のシーズン2では、そうした医療の進歩も描かれることでしょう。

さすが『JIN-仁-』のドラマ化を成功させた森下佳子さんの脚本です。

東洋医学描写が素晴らしい。徹底して調べ、プロットに入れ込む。そういうこだわりと誠意があふれた脚本です。

NHKは東洋医療考証くらいできます。してもらわねば困ります。 といっても、やる気がなければそれまで。

このドラマは本気も本気なので、隙がなく、実に素晴らしい。

なぜ、赤面との戦が敗れたのか?

東洋医学は患者の抵抗力や体力を回復し、持っている力で治すことを重視します。生活習慣病や回復には有効です。

しかし、病気の根本的な原因の除去はできません。

そこに壁がある。

東洋医学最高の手段でも、どうしても越えられない。できる範囲で最善は尽くしました。

この先は、未来に託しましょう。

 


吉宗には三人の姫がいた

そして7年後――吉宗には三人の娘がいました。

長女:家重
二女:宗武
三女:小夜姫

かわいらしく聡明そうな妹に比べて、長女はぎこちない。

毅然として「面をあげよ」と声を掛けた吉宗の顔に、かすかに動揺が走ります。

家臣の松平乗邑が、二女である宗武こそ後継に相応しいと推挙してきました。

家重が将軍となっては混乱が生じると諫言しているのです。諸事混乱がある中だからこそ、英明な宗武を勧めている。

しかし、吉宗は長生きすると返し、「はい」とも「いいえ」とも答えません。政治的駆け引きが実にうまい。

そして加納久通が入ってきて、このやりとりを腹に収め、横目で見ています。何か秘めた顔です。

久通が手にしているのは、大岡忠相が調べた市中の物価でした。顔こそ見せない彼女ですが、史実準拠で素晴らしい才能を発揮しているようです。

その本題が終わると、声音に不機嫌そうなものを滲ませつつ、乗邑の提案を切り出す久通。

世継ぎについて吉宗から話を振られ、家臣が口を挟むものではないと返しています。

彼女が苛立っている理由も見えてきます。

家臣如きが世継ぎを決められると思うなぞ笑止千万――このあたりでしょう。

そんな美学があるからか、世継ぎは誰にすべきかと問われ、口を挟むべきではないと突っぱねる久通でした。

加納久通
加納久通~NHKドラマ『大奥』で注目された吉宗の側近~史実ではどんな人物だった?

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家重の小姓たち

小姓頭・大岡忠光がやってきました。

彼女は小姓のお仕着せを身につけています。

男女逆転となると、史実上の制定はされていない。それを時代考証しつつ作り上げるところに、本作の巧みさがあります。

忠光は、家重付きの小姓が気鬱になり、代わりの者が欲しいと訴え出てきました。

真面目な忠光は、己の監督不足を詫び、吉宗も「誰がよいか……」と悩んでいると、久通が龍(たつ)を推挙します。

久通はかつて大岡忠相も推挙しました。

こういう強い推挙ルートを持つ家臣となると、便宜を図って欲しいと賄賂を贈るような不届者もいます。そういう物を受け取らない清廉潔白さゆえに久通は信頼されているのでしょう。

そして田沼龍が新たな小姓となります。

田沼家はさほど名門でもない。それを推挙する久通は、彼女の気質を見抜いているはず。

では、ここで龍が見たものは……?

若い男にしなだれかかり、酒を飲み、口を吸う――まさしくバカ殿としか言いようがない家重の乱れ切った姿です。

驚きつつも、じっと目の前の景色を掴もうとしている。彼女なりに何か推察しているように見えます。

龍は将棋を指している家重に呼ばれました。

「ひばい」を持ってくるようにおうせつかるのですが、それは「火鉢」のこと。龍が理解できずにいると、「たあげ!(たわけ)」と叫び、将棋の駒をひっくり返して家重はさってゆきます。

家重はこのあと、金平糖を食べたいと言います。

龍があわてて持っていくと、無造作にひっくり返す。

ちなみに、江戸城では甘いものをたくさん食べます。

この時代は、多くの国や文化圏で「砂糖=財産」という認識。ゆえに権力者は甘いものが大好きです。

そりゃもう食べるので、日本各地にお殿様が絶賛したお菓子が残りました。

そうした事情を踏まえると、金平糖バッシャーン!は勿体無いを超えている。今なら高級酒を瓶ごとぶち割るような暴挙ですね。

小姓も、そりゃ気鬱になりますわ。

龍が金平糖を拾っていると、通りかかった家重の妹・宗武が手伝ってくれた上に、姉上のことで苦労をかけると労ってくれる。宗武を推す声もあがるわけです。

このあと、家重と将棋を指していた大岡忠光が、龍に替わるよう頼み、席を立ちます。

龍はあまりに奇想天外な家重の一手に、圧倒されてしまう。

それにしても、所作指導や考証が素晴らしいです。

本作では、打掛を身につけ、和装特有の足捌きで畳や廊下を歩く場面が多い。これがスムーズにできている。

将棋を指す場面は、ちゃんと指導をしないと、ああもピシッとできません。

しかも徳川家重役の三浦透子さんは、所作を踏まえたうえで崩すという超絶技巧をせねばならないのです。素晴らしい!

龍は家重の聡明さを、将棋から悟りました。

大岡忠光はそのために将棋の相手をさせたのです。龍なら理解できるだろうと。

龍は泣いてしまいます。あれほど賢いお方が、愚かと思われていることの苦しみを想像しているのです。まるで閉じ込められているかのようだと、そこまで理解を示したのでした。

大岡忠光が吉宗にこのことを報告すると、吉宗も感心します。

我慢強く聡明だと龍を褒め、上様にとっての加納様のようになって欲しいと語る大岡忠光。

するとその吉宗と久通は目を見交わします。あわてる大岡忠光に、吉宗は「家重が跡を継ぐことを理解しているのか?」と聞きます。

「賢いお方ゆえにわかっているはずです」

龍は家重の将棋の腕前に感心し、政治を行えば何手先でも見通せると言います。

しかし家重は、自分には政治など無理だとすっかり諦めた様子。

将軍など務まらぬ。そう甘いものではないのだ、と。

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