ドラマ大奥レビュー

ドラマ『大奥』公式サイトより引用

ドラマ10大奥感想あらすじ

ドラマ大奥感想レビュー第9回 家重の本質を見抜き跡を継がせた吉宗

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ドラマ大奥感想レビュー第9回
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儒教倫理が定着する時代

主君は器量で選んではいけない。これが泰平の世の証といえます。

戦国乱世ならば、器量で選んでこそ当然です。そういう例はいくらでもある。

しかし、平和な時代にそういうことをすると火種になって世の中が定まらないから、どうにかしなければなりません。

そこで東洋で出てくるのが、儒教倫理になります。

長幼の序を固め、年長者が跡を継ぐことを絶対視するようにするのです。

綱吉は儒教倫理を教養として学んでいました。『論語』をよく引用していましたね。

実学を好む吉宗の場合、暗唱はせずに浸透に尽くします。親孝行のものを表彰し、親不孝者は処罰することで、儒教倫理を民にまで浸透させたのです。

それなのに、自分の後継者を定めるうえでルールを破ってはなりません。将軍家こそ手本を示すべく、家重を世継ぎに定めたという見方もできます。

もちろん、吉宗は我が子を愛してはいたことでしょう。

しかしそれだけでもありません。

この見方を突き詰めてゆくと、それを素知らぬ顔で破っていそうな人物も見えてきます。

加納久通です。

儒教倫理が極まると、家臣が主君の力量だのなんだの、吟味するというのは不遜の極みです。

久通が乗邑をチクチクと責めた倫理がこれにあたります。主は主だ、黙って忠義を尽くせと。

それなのに、久通は吉宗の器量を絶賛している。

自分こそが人の上に立つ者を見抜けるのだと、確信をこめて語っています。

久通は奥深い。名君の隣には名臣がいる。我こそは無双の名臣だという自負が、彼女を光らせていて凄まじいものがある。

貫地谷しほりさんの魅力を全て引き出す圧巻の展開でした。

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幕末編の予習もできる

家臣が主君の器量を吟味するとは何事か!――そんな倫理が幕末には崩れてゆきます。

13代徳川家定の後、次の将軍は誰にするのかと幕府は揉めました(将軍継嗣問題)。

慶喜を推した「一橋派」は、その後の明治維新で勝者になった者がいることから、高く評価されます。

しかし、そういう先見の明は、実は乏しい。

一橋派の松平春嶽は慶喜に振り回され、推したことを悔やんでおります。

結果的に、一橋派の中心にいた水戸徳川家が幕府終焉の引き金を引いたと、幕臣たちは嘆いたものでした。

そしてもう一点。

徳川慶福(家茂)よりも、慶喜を推した方が大名は意見を通し易いという利点もありました。

乗邑は「私利私欲のために後継を推すわけではない」と弁明しておりました。このことを頭の隅にでも入れておきましょう。

一橋派には、自分たちの意見を通したいという思惑もあったのです。それがどこまでこの作品で描かれるかはわかりませんが、楽しみにしています。

 


多様性を認めてこそ、成熟した泰平の世

泰平の世とは、多様性を尊重することもできます。

乱世に家重のような者がいれば、即座に権力のポジションから排除されてしまうことは想像に難くないでしょう。

合理性を求めて、貧しい者や不自由な者を排除する社会というのは、結局のところ成熟した泰平の世とは言えません。

前回、小川笙船の言葉で貧乏人の切り捨てを反省した吉宗。

そして今度は多様性を認めることに向き合います。

家重はただの問題がある人ではなく、理解されないのだとこの作品は丁寧に描きます。

そのことが本人にとってどれほど悲しく辛いのか。

龍の言葉と涙で語りました。

本作は、見る側にも問いかけてきます。

あなたが理解できずに嘲笑っている相手は、理解できないだけで、実は聡明なのではないか? その苦しみを理解しているのか?

そう投げかけてくるのです。

大奥』吉宗編は、豊かな世界を目指すことへの問いかけにあふれています。

多様性を受容してこそ世界はよりよいものとなるのではないか?

そう真摯に問いかけてくるのです。

そんな吉宗編も次で最終回。結末を見届けたいと思います。

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文:武者震之助
※著者の関連noteはこちらから!(→link

【参考】
ドラマ『大奥』/公式サイト(→link

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