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【ドラマ大奥幕末編 感想レビュー第19回】
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ご機嫌取りのために上洛せよ
そんな家茂のもとに、一橋慶喜がなんとも慇懃無礼な態度でやってきます。
用件は家茂に対する上洛の要請でした。都に拝謁せよとのことで、自分の預かり知らぬところで事態が進む家茂は動揺し、その経緯を尋ねます。
なんでも帝からすれば、攘夷をさせるために和宮を嫁がせたのだから、それをしようとしない幕府に怒っているとか。
今さら攘夷なんてできないと苦悶の表情の家茂。
外国と違約などしたら、それこそ攻める口実を与えてしまいます。
そこで慶喜に対し、後見役としてそのことを帝に伝えて欲しいというと、あからさまに面倒そうな顔を浮かべます。
なんでも朝廷側の機嫌を損ねるわけにはいかないとのことで、いやらしさ満点の口調で、水戸、薩摩、そして朝廷側の攘夷の期待を背負って復権したと言いだす。
今ここで彼らの機嫌を損ねたら公武合体など消えてしまう。
だから華麗に上洛せよとせっついてきます。
上洛にどれほどの意味があるのか?と家茂から返されると、こうですよ。
「要するに、帝の御機嫌取りにございますよ。何より大事にございましょう? ご機嫌とぉり」
いやらしさを煮詰めたような慶喜のこの顔よ。
そしてこれがこの男の最低最悪のところです。
慶喜は、家定が喝破した通り、人を思う心がない。そのくせ彼自身が、人はご機嫌さえ取り繕えば、思うままに動くと理解している。
人の心を操って思うままに操作し、役に立たなくなったら捨てる――そんな人でなしとしか言いようのない奸悪ぶりが詰まった人物です。
そりゃ、幕臣が嘆き、会津藩士は怒り狂うってもんですよ。
あなたこそ、この世を照らす光
夜、褥で家茂から事の次第を聞き、和宮は慶喜に対して怒っています。
しかし家茂は、帝と話す良い機会になると、かえってプラスにとらえている。開国派にできないかと期待を込めるのですが……。
そんなことできるのかと不安そうな和宮。
わからないけれど、やってみる値打ちはあると家茂。
家茂はここで、和宮の本名を聞こうとします。帝に宮様のことを聞いてみたいのだとか。
なにせ、このままでは何かあったとき、ただの和宮の偽物とされてしまう。そうならないためにも、妹宮としての証拠をいただきたいというのです。
和宮は不思議がります。なぜ自分に対しそこまでしてくれるのか。
宮様が来てくれたからこそ、徳川は公武合体ができた、大事なかけがえのない人だと家茂が応えますが……和宮は戸惑っている。
今までずっと粗雑に扱われ、人の好意を受け取りにくいのかもしれない。
和宮が、徳川のために来たわけではないと返すと、それもわかっていると家茂。
すると何か吹っ切れたのか、本物の和宮は生きていると、偽和宮の彼女は思わずつぶやいてしまいます。存じて……と頭を下げようとして驚く家茂に、偽和宮は説明します。
彼女は母を独り占めしたかった。左手がないから生まれたことを隠され、人目につかないように育てられた。それでも小さいうちは母がかわいがってくれた。
けれどもそれは弟が生まれるまで。母は弟に夢中になってしまった。
その弟に徳川に嫁ぐ話がでた。和宮は嫌だと抵抗するものの、莫大な金がもらえる。観行院は男装してついていくと言い、なんとか宥めようとするも、和宮は自害しようとまでしています。
これを聞き、姉である偽和宮の彼女が身代わりになることを決意。
本物の弟には出家を促します。
女の身ですぐに知られると母の観行院は懸念するも、それでも破談にしたら徳川には大恥だから受け入れるしかない。和宮が死んだことにすれば、どうにもならない。
そう深慮遠謀をめぐらせ、弟だって死にたくないはずだと説得するのです。
かくして和宮となりかわった姉は、土御門だけでなく母にもついてきて欲しいと頼んだのでした。
和宮を守るためだと脅すように母を説得し、そのうえで母を独り占めにする。悲しい子の願いです。
「ほんでこういうことになったわけや」
家茂は涙を落とします。
そんな思いでここまできているなんて……と感動しています。
騙されてどうして感動するのかと困惑する和宮。
家茂の感激は確かなものでした。
母を独占するしょうもない企みのおかげで、本物の和宮は守られた。誰も死なせずに済んだと家持ちは喜んでいます。
そして「何か気づかないか?」と問いかける。
知らぬ間に多くを救っているのだと言われ、和宮は混乱しています。家茂は江戸への道中で気づいたことはないかと問い掛けます。
思っているよりもよい旅だったと振り返る和宮。
土地の者はよい料理を出してくれる。布団は綺麗でやわらかい。花まで生けてあった。
「それは、民にとっても宮様が光だからです。日々暮らす民にとっては傍迷惑でしかない戦。公武合体はこれを避けるためのものです。そのために住み慣れた京を離れ江戸へ下ってくださる勇気ある宮様。これが光でなくて何でしょう。そのお方がそこにいらっしゃる。ただそれだけで、図らずも救われる人間が山のようにいる。そのようなお方を世の光と呼ぶのだと、私は思います」
そう言われ、目が泳ぐ和宮。
いちいち真面目で肩が凝ると言い、「もうやめて」と布団を被ります。
欠けた左手に顔を埋め、涙を流すのでした。
あふれる誠意の光が、帝の御心を動かす
翌朝、鈴の廊下では男たちが「また上様一人の総触れだろ」と軽口を叩いています。
すると和宮が静かに歩いてやってきた。
続いて現れた天璋院も彼女を見て、無言で驚く。
鈴が鳴り、家茂が歩いてきます。
改めてこの場面を流すことで、希望が満ちた歳月はなぜ短いのかと悲しくなってきます。
瀧山もほっと一息ついたあと、家茂は上洛することになります。
天璋院は「人が心を寄せる天賦の才をお持ちだ」と期待を込めたように言う。相手の懐に深く潜り込む才で、帝の心も掴むかもしれないと。
和宮が家茂の黒髪を切り、文久3年(1863年)、3千を率いて上洛。
徳川家光以来、実に229年ぶりのことでした。
帝の御前にて、公卿たちが「十二単でも来てやってくるのでは」「将軍が来たらからかってやろう」と待ち受けています。
そこへ装束姿の家茂が現れた。
凛々しく気高いその姿に、公卿たちは黙り込むしかなく、御簾の奥で帝が目を見張っています。
女でありながら、帝を守るために男装してきたというその誠意に、帝は心動かされている。
江戸では、和宮が旅立った家茂のことを思い出していました。
と、そのとき、何かが砕ける音がします。
観行院が金魚鉢を割ってしまいました。
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