ドラマ大奥幕末編 感想レビュー第19回

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ドラマ大奥幕末編 感想レビュー第19回 天授の君が和宮を救い帝の心を

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慶喜が将軍後見職になってしまった

慶喜が将軍後見職になってしまった一連の出来事を家茂から聞かされる天璋院。

小手先であることは理解している家茂は、微かな希望も持っています。慶喜は朝廷や薩摩の覚えがめでたい、と。

しかし天璋院は複雑な顔をしています。

脳裏には、家定が断固として慶喜だけは拒んでいた思いがあるのかもしれません。

実際、慶喜が表舞台に出てくることは、数多の悲劇を生みます。

その理由は、このあと出てきた徳川慶喜の顔が映った瞬間に、私の胸の中にこみあげてきました。

カーッと嫌な思いが湧いてきたぞ!

和宮のおつきの者である江島たちも、オホホホと大笑い。幕府にはもう力がないとはしゃいでいます。

そんな者たちを静かに見ている和宮。母の観行院は、それなら公武合体はもういらない、京都に戻れるのではないかと期待を見せます。

即座にそれを否定するのが土御門。どう気張ってもこんなお手当もらえまへんし、貧乏暮らしに逆戻り……と生々しい本音が出てきた。

さらには“志士”という輩がうろつき回って、えらい物騒なことになっているとも付け加えます。

あまり大きく取り上げられませんが、実際、公家の中にも斬られた者がいます。しかも志士の連中は遺体損壊上等でやる者がいる。

生首を晒す。女は生き晒しにする。切った人体の一部を嫌いな人物の家屋敷に投げ込む。

幕末は、そこまで遠い昔でもない時代です。ご先祖が斬られた指がポロポロ落ちているのを見た、などという証言があるのが京都です。

それだけに、この短い台詞は実に秀逸でした。

幕末作品の京都は「青春の街のようなノリ」すらうっすらありますが、実際はテロリストがうろつき危険だと端的に示してくれました。

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彼女たちの話は観行院にとって不安でしかありません。すっかり混乱し、そんなところに居て本物の和宮は大丈夫か?と声を上げてしまいます。

大慌てで窘めれ たしなめられてしまうのでした。

観行院は偽和宮に、あの子はあんたみたいな胆の据わった子とは違うと訴えかけます。

とにかく帰りたい! 優しく細やかなあの子を守りたいと訴えます。

偽和宮は、これは政だから気持ちだけではどうにもならへんと静かに諭します。袖を握る娘の手を振りほどき、立ち上がって去ってゆく観行院でした。

 

花びら餅の味に思いだすことなど

和宮は思い出しています。

左手が欠損した娘が生まれたとき、母である仁孝帝典侍・橋本経子は帝にはいなかったことにすると決意を固めました。

それを聞いた兄は、そんなことをしたら帝からの養い金も頂けんようになると慌てるばかり。

幕末の皇室公卿は金がありません。

なにせあの明治天皇が生まれるとき、出産費用が足りず、仕えていた田中河内介が自腹を切って出したほど。

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左手が欠損した女児として生まれ、隠し通されたこと。養育費すら帝からもらえない。

母はもう一人の宮を産むと張り切りました。そして待望の弟が生まれると、母の愛は全てそちらに注がれました。

「ほんに宮さんはええ子、この家の光やわ」

そう喜ばれ、母の腕に抱かれる弟を、姉はじっと見ていました。

辛い生い立ちを思い出し、暗い気持ちへと沈んでゆく和宮。そこへ家茂がやってきて花びら餅を差し出します。なんでも御膳所に作らせてみたのだとか。

和宮は呆れつつも口に運びます。

「そうそう、この味」

懐かしい味に郷愁を誘われた和宮を見て、家茂は京都に戻りたいのなら何か手立てを考えると切り出します。先ほども夢に見ていたのではないかと気遣う。

咄嗟にそれを否定する和宮。それほど戻りたいわけではない。気を回すなと止め、それでいてお願いはあると切り出します。

母の観行院に金魚の琉金を贈ることでした。

金魚鉢を嬉しそうに眺める観行院。家茂は和宮様から承ったものだと言い、和宮は言わんでもよいと言いつつ嬉しそうな表情を浮かべます。

そこへ天璋院がお詫びにやってくる。連れてきたのはかわいらしい白猫……さと姫です!

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自信満々の笑顔だったのに、最悪のタイミングでした。金魚を見た途端、猫は早速飛びかかってしまう。

慌てて猫を捕まえ、出直してくると告げる天璋院。

観行院はこらえきれず笑ってしまい、和宮も嬉しそうにしています。

 

勝海舟は提言する

そんな時、恐るべき事件が――生麦事件です。

色々と不幸な行き違いがあり、イギリス人4名が殺傷された事件はあっという間に江戸に広まりました。

素朴な攘夷に喜ぶ庶民もいれば、そうでない者もいる。忙しく早足で歩く勝海舟その人だ。

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この勝が素晴らしい。江戸っ子らしい大股の歩き方。自然なようで、和装に慣れていないとなかなか大変ですし、袴をつけていない着流し姿がなんとも粋だ。

事件の重大性を理解すると、考えをめぐらし、即座に走り出す。着流しなので裾がまくれて脛がでるのがこれまたいい。

そして着替えて千代田まで登城し、べらんめぇ口調混じりで「これは恐ろしい話だ」と家茂に報告しています。

この声だけでもずっと聞いていたいくらい、いい江戸っ子口調、見事です。この声で読み上げる『氷川清話』のオーディオブックが欲しくなりますね。

軽快な口調で、大量の賠償金、あるいは開戦の危険性をズバリ言い出す勝。

これは当時の幕府も警戒しており、江戸っ子にも伝わりました。今後、治安が悪化し酷いことになってゆくと。

天璋院は、薩摩とイギリスが戦になる可能性を心配しつつも、それにより開国派になるのではないかと言います。

「現」(うつし)により考えを変える、薩摩の特長を知る天璋院らしい懸念です。

勝はいくらなんでもそんなはずはないと否定しかけ……この前会った坂本のことを話します。

攘夷論者として勝のことを斬りに来たのに、西洋の話を聞かせたら開国派になって帰っていった。

坂本龍馬のことですね。

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これは何も坂本龍馬個人の開明性のあらわれだけでもないと見た方がよいでしょう。

土佐藩には、吉田東洋という開明的な逸材がいて、山内容堂も全幅の信頼を抱いておりました。

しかし、この吉田東洋は、攘夷派の土佐勤王党に殺されてしまいます。

若い龍馬は、こうした情勢の中で揺れ動いてはいた。武市瑞山のような土佐勤王党の熱意もわかる。しかしどうにも血腥い。

そう揺らいでいるところに勝海舟の話がスッと入ってきて、迷いが吹っ切れたとすれば?

そんな土佐藩の一青年のことが語られることで、幕末史が説得力をもって見えてきます。

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