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【斉昭と慶喜の女性スキャンダル】
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老中首座の阿部に取り入り
しかし、そんな斉昭に、幕政に復帰する転機が訪れます。
老中首座に就いた阿部正弘です。
良く言えば人当たりがよい。悪く言えば八方美人。
誰の好意でも受け止める阿部正弘をターゲットにした斉昭は、せっせと阿部に取り入り、周囲からは「提灯持ち」とまで陰口を言われるほどでした。斉昭も阿部を「チョウチンナマズ」だなんて呼んでいたというからゲスいというか……。
確かに阿部は開明的で、幕府屈指の力量ではありましたが、とてつもないミスをしました。
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外国人排斥主義の天皇にリップサービスしたばかりか、斉昭に甘い態度をとったことです。
斉昭は幕政に入り込むと「異人を皆殺しにすれば解決でござる!」とことあるごとに言い募り、混沌の元凶となりました。
彼には掌中の珠があったのです。それが一橋家に養子入りさせていた慶喜でした。
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他の御三家に連なる子息は若すぎる。
その点、年齢でも器量でも、慶喜はうってつけである。しかし……。
「あの方は父親がオンブオバケだからなぁ」
斉昭が父であることが大きなマイナスに働いたのです。
これは松平春嶽も後に痛恨とともに振り返っています。
「慶喜を推す斉昭の強さ、親バカぶりにすっかり騙されてしまったのではないか?」と……。
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春嶽だけでなく、慶喜を将軍にするため動いた者の多くは同様の感慨を抱いたことでしょう。むろん、その前に世を去ってしまった島津斉彬は違うでしょうが。
慶喜は京都で側室相手に羽を伸ばす
女性の尊厳を平気で踏みにじり、大奥に嫌われていた斉昭。しかも「倹約しろ」とせっつくものだから、ますます人気は下がります。
ゆえに息子の慶喜が将軍を目指すにしても「あの父親の子では……」という時点で非常に不利でした。
斉昭と慶喜の味方である島津家出身の篤姫が奮闘したところで、どうにもならないほど。
というか慶喜自身にも、お世辞にも品行方正とは言えない一面がありました。
慶喜の妻となったのが京都から来た美賀君です。
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大河ドラマ『青天を衝け』でも描かれましたが、精神不安定でゴシップをばらまき、一橋派の顔を曇らせた彼女。
そんな美賀君から逃げるようにして、京都に滞在したときの慶喜は自由を謳歌しました。
これまた当時のゴシップネタとして残されています。
「京都の一橋邸に婦人が入り、後宮ができるそうですよ」
「平岡円四郎が禁裏のお局からいただきたいと申し入れて断られたとか。それでもなんとか、公家に根回しして頼んだとか、慶喜公直々に頼んだとか、止められたとか……」
「なんでも慶喜公はお妾をホトガラ(写真)で選んだそうですよ」
こんなゴシップ情報が京都に残されています。
京都滞在の志士たちが派手な女遊びをした時代ですし、慶喜にスキャンダルの一つや二つあってもおかしくはないでしょう。
雑事をこなす側近の平岡円四郎が不憫ではありますが。
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ともかく上方では、慶喜が愛した中でも一番知名度の高い女性が登場します。
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このお芳がいかにして慶喜の妾となったのか?
新門の親分は、禁裏の防火を担うため、子分二百名を率いて堂々と上洛してきました。江戸の誇りを京都に見せつけるべく乗り込んだようなものです。
果たしてこれは、美人の娘が慶喜のお手つきだったからそうなったのか?
それとも側役が「あの親分の娘、なかなか器量よしでして」と吹き込んだのか?
彼女との関係が後か先か、因果関係が特定できません。
この身分違いの恋=シンデレラストーリーに皆は興味津々。
お召しになったお芳が慶喜と寝室に入ると、御中臈と、御坊主(剃髪した女中)が侍ったと言います。寝物語で政治工作を封じ、暗殺を防ぐため、大奥なりの工夫なのです。
しかし、お芳からすればとんでもない話。
「なんでえ、おまえさんたち、これからすることを覗こうってえのかい? 冗談じゃねえ、いやらしいんだよ!」
そうお芳から怒鳴られて、二人は逃げ出しました。
かようにキャラクター性十分な浅草娘を相手に、慶喜は羽を伸ばしていたのですが、後に彼女を連れていたことが、大問題へと発展してしまいます。
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