彰子サロンで働く紫式部の同僚女房たち

画像はイメージです(『源氏物語絵巻』/wikipediaより引用)

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彰子サロンに出仕する紫式部の同僚女房たちはガチで意地悪だった?考察光る君へ

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宰相の君

「宰相の君」だけでなく、「弁の宰相の君」とか「讃岐の宰相の君」とか「美作三位」など呼び名が多数ある彼女。

本名は藤原豊子といい、藤原道長の異母兄・藤原道綱(劇中では上地雄輔さん)の娘でした。

つまりは道長の姪であり、彰子とはいとこ同士という身分の高い女房です。

藤原実資いわく

「(道綱は)40歳になっても自分の名前の漢字しか読めないヤツ」

だったそうですが、宰相の君はどちらかというと聡明な雰囲気。

母似だったのか、あるいは祖母である藤原道綱母(蜻蛉日記の作者)似だったのか。

女房名は、道綱が宰相(参議の唐名)を務めていた頃についたと思われます。

その時期は彰子の入内前であり、実家にいた頃からの女房だったようです。

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彼女は、倫子と彰子の二人に仕えた赤染衛門との親交もありました。

夫の大江清道は定子がいた頃、中宮亮(ちゅうぐうのすけ)を務めていましたが、その後は道長に仕えており、夫婦で道長方となっています。

身分や能力を買われ、彰子の長男・敦成親王の乳母を任されました。

そして敦成親王が後一条天皇として即位した後、従三位と典侍官職を受けています。

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宰相の君は上品で可愛らしいタイプの女性だったようで。

紫式部日記』の序盤で、宰相の君が昼寝しているところに紫式部がやってきて「物語の女君のようね」と話しかけて起こすシーンがあります。

宰相の君は「寝ている人を起こすなんてひどいわね」と少し機嫌を悪くしますが、軽口を叩けるような間柄だったのでしょう。

ちなみにその後、紫式部は「いつも素晴らしい方の魅力がさらに増して見えました」とベタ褒め。

というか紫式部は、宰相の君が登場するたびに美しさや衣装センスの良さを褒めたたえているので、同僚というより芸能人とファンのようです。

宰相の君は才色兼備といって差し支えない人だったのでしょうね。

敦成親王の誕生五十日のお祝いでは、来客たちが酔って大騒ぎしていたため、宰相の君と紫式部は二人でこっそり彰子の御帳台の後ろに隠れるという、初々しい少女のようなことをしています。

結局、道長に見つかり、和歌を詠めと振られてしまうのですが。

ちなみに「宰相の君」と呼ばれた女房はもう一人いました。

藤原遠度(とおのり)の娘で、道長のいとこにあたる女性です。

『紫式部日記』でも登場しますが、こちらは「北野の三位の」と注釈が付けられています。

日記には一度しか登場しないので、「宰相の君」といえば藤原豊子の方を指す場合が多いでしょう。

※ドラマでの配役:瀬戸さおりさん

 

紫式部は「ねちっこくてイヤな女」なのか?

紫式部が書いた『源氏物語』と『紫式部日記』では、貴族社会の非常に細かな描写が頻出し、現代人の脳裏にも平安貴族の姿が浮かび上がってきます。

ただし、清少納言への批評や愚痴っぽい記述など、マイナスな印象の内容までも詳細に書されているため、彼女のことを

「ねちっこくてイヤな女」

という印象の方も少なくないでしょう。

しかし、紫式部が嫌味なだけの人間でないことはわかっているはずです。

特に同僚の女房たちについては、振る舞いや服装を褒め称えたり、冗談を言い合ったり、姉妹のように寝起きしていた相手がいたりと、明るさをうかがわせる面もありました。

紫式部の出仕した年齢が遅かったこともあってか。

公卿たちとの恋愛より、彼女たちとの友情を選んだようです。

そういえば、百人一首に採られている彼女の歌も、昔なじみの女性との予期せぬ再会と別れを詠んだものでしたね。

『光る君へ』においては、貴族社会独特の意地悪な話はもちろん、女同士の美しい友情が描かれたら面白そうですね。

なお、赤染衛門や和泉式部につきましては以下に一本ずつ関連記事がございますので、よろしければご覧ください。

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長月 七紀・記

【参考】
日本人名大辞典
『新訂版 紫式部と和歌の世界―一冊で読む紫式部家集 訳注付』(→amazon
ほか

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