源俊賢

『前賢故実 源俊賢』菊池容斎/wikipediaより引用

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源俊賢(明子の兄)と道長は実際どんな関係だった?四納言に数えられる実力者の生涯

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温情をかけた藤原行成と親友に

【長徳の変】で花山院に矢を放った藤原伊周藤原隆家の兄弟は、事件が表沙汰になると失脚。

いよいよ道長が政界の中央に進んでくると、源俊賢は、サッと道を譲るように一歩退がります。

政権交代の最中、どちらにつくわけでもなく、バランスよく振る舞っていた俊賢は、一見、ただの風見鶏のようにも見えてしまいますが、当時はまだ「忠臣は二君に事(つか)えず」という概念が定着しているわけでもありません。

要は、世渡り上手で、気持ちをすぐに入れ替えられるタイプだったのでしょう。

しかも俊賢には、没落した側の恩義に報いる情もありました。

長徳元年(995年)参議に昇進の際、後任の蔵人頭をどうするか一条天皇に問われて、藤原行成を推しました。役人としてはいまひとつ芽が出ない行成に手を差し伸べた形です。

これに恩義を感じた行成は俊賢を慕い、以降、二人は親友となった。

俊賢の嫡子・顕基は、行成の娘を妻に迎えています。

日本書道史において大きな足跡を残す行成が、心を落ち着けて書に向き合うことができたのも、俊賢の優しさあってのことかもしれませんね。

『光る君へ』では今後もドロドロした政治劇が描かれることでしょう。

そんな中、貴公子同士が助け合う場面は、一服の清涼剤になるかもしれません。

 


道長時代も、ますます順調に出世

源俊賢は、藤原道長にも気に入られ、その後も無事に出世を遂げてゆきます。

長徳3年(997年)従四位上

長保2年(1000年)正四位下

長保3年(1001年)従三位

長保5年(1003年)正三位

寛弘元年(1004年)権中納言

寛弘5年(1008年)従二位

寛弘7年(1010年)正二位

俊賢は、道長の娘である中宮藤原彰子とも近い距離にありました。

中宮権大夫(のち大夫)を務めたのです。

俊賢の出世は、彰子が皇太后・太皇太后へと進むにつれ、比例して引き上げられてゆきます。

そして実に二十余年の間、宮大夫を勤め上げたのです。

俊賢の歩みには、道長の姉である藤原詮子、道長の妻である源明子、そして藤原彰子という、女性に近いルートがみてとれます。

女系も重視する当時の【双系制】らしい出世ルートだったんですね。

 


正二位まで上り詰めた栄光の生涯

ただし、居並ぶライバルを圧倒した出世街道でも、いざ三条天皇の御代となると翳りが出ます。

出世が止まったのです。

三条天皇/wikipediaより引用

後一条天皇の御代となった寛仁元年(1017年)、俊賢は権大納言に昇進しました。

彼の政治家としての務めも、もう終わりが見えてきます。

このころ三度に渡り辞表を提出し、寛仁3年(1019年)、ようやく権大納言としての致仕を許されました。

万寿3年(1026年)に全ての職から致仕。

万寿4年(1027年)6月12日、病が重篤であることから出家し、その翌日に世を去りました。

奇しくも享年69は父・高明と一致しますが、正二位まで出世した上級貴族の中でも立派な、輝かしい人生と言えるでしょう。

父の悲劇からここまで上り詰めた才覚だけでなく、温厚な人柄を持つ好人物でした。


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文:小檜山青
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【参考文献】
倉本一宏『皇子たちの悲劇 皇位継承の日本古代史』(→amazon
倉本一宏『敗者たちの平安王朝 皇位継承の闇』(→amazon
橋本義彦『平安貴族』(→amazon
倉本一宏『ビギナーズクラシック 小右記』(→amazon

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