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【日蓮】
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御家人に地元を追い出され
そんなことでヘコたれる日蓮ではありません。
地元を追い出された後は、鎌倉付近の名越(なごえ)に移って布教活動を継続。
御家人とケンカして締め出されたのに、その大本である幕府のお膝元に行くあたりが実にいい度胸というか、なんというか……。
上記の通り、日蓮はこれ以前にも鎌倉付近にいたことがあるので、ただ単に馴染みがある&他の寺院や人口が比較的多い土地を選んだだけなのかもしれませんが。
しばらくの間は静かに布教を続けていた日蓮。
数年すると、本人とは直接関係ないところで、世間は穏やかではない雰囲気になってきました。
正嘉元年(1257年)から文応元年(1260年)あたりに自然災害や流行病が頻発し、死傷者や飢えに苦しむ人々が続出したのです。
日蓮はこれらの原因を「幕府が正しい行いをしていないから」と考え、代表的著作として有名な『立正安国論』などを執筆、法華経を重んじるよう幕府に訴えました。
宗教家らしいといえばらしいですが、突然の申し出に幕府もビックリしたでしょうね。
当時の北条氏得宗は北条時頼です。
五代執権でもあますが、この頃には執権職から退いていました。といっても実権は手放していなかったので、日蓮も時頼宛てに文書を送ったようです。
時頼は禅宗を重んじていたので、即座に日蓮の言葉を受け入れることはありません。
立正安国論の中で日蓮は
「浄土宗は邪教であり、今からでも正しい法華経を信じなければならない。でなければ自然災害や他国からの侵略が起きるだろう」(意訳)
としています。
他にも「四箇格言(しかかくげん)」といって、浄土宗の他に真言宗・禅宗全体・律宗(平安時代に鑑真が伝えた宗派)もメッタメタに批判!
おそらく、時頼にはその辺も気に障ったと思われます。
この流れでなんで天台宗だけ含まれてないのかがちょっと不思議ですが、天台宗でも法華経を重んじていたからでしょうか。
後世には天台宗vs日蓮宗の争いも起きていますけれども……まあ、その辺の話は以下の記事でどうぞ。
戦国最大クラスの宗教戦争は天文法華の乱だった? 延暦寺vs法華宗で都は大炎上
続きを見る
伊豆国伊東への流罪
そんなわけで、日蓮のやっていたことをざっくりいうと、「仏教における原理主義」みたいな感じです。
衆生を救おうとする目的は間違っていないのですが、いかんせんやり方が過激すぎる。
当然、他の宗派の真面目な僧侶たちは激怒しました。
特に浄土宗徒の怒りは深く、問答で対決した人もいれば、日蓮をブッコロすべく襲撃をかける者もまでいました。
騒動を起こされては為政者としても放っておけなくなります。
弘長元年(1261年)、幕府は、日蓮を伊豆国伊東への流罪としました。
といっても、二年後に赦免されているのですが。
「ちょっと鎌倉から離れてくれない? そうすりゃ浄土宗のほうも落ち着くから」みたいな感じだったんですかね。
鎌倉ではなかなか受け入れられないと悟ったのか、今度は文永元年(1264年)に安房へ帰り、布教を再開。
東条松原大路で未だ恨み冷めやらぬ東条景信らに襲撃され、長居はできませんでした。
そしてまたしても鎌倉へ移っています。反復横跳びかっ!
法華経は正しい! 他宗派は滅殺!
そんな中、元(モンゴル)から幕府に対し
「ウチに従え! さもないとブッ潰すぞ!!」(超訳)
という書状がたびたび届くようになりました。
元寇前の脅しですね。
ときは執権・北条時宗の治世。
幕府も朝廷もガン無視することに決めますが、この話が一般に知られるようになると、社会不安から日蓮の教えに帰依する者が増えていきます。
人の心に平穏をもたらすのが宗教の本分ですから、そこまではいいのですが……それと同時に、日蓮は
「やっぱり私の考えと法華経は正しい! 他の宗派は滅殺!!」(超訳)
と信じ、ますます他宗派への批判を強めてしまうのです。
トップがそんな感じなので、日蓮に帰依した人々もまた先鋭化していってしまいまして。この流れはどんどんヒートアップし、文永八年(1271年)、日蓮は再び幕府からお咎めを受けることになります。
これには、日蓮に関係ない事情もありました。
この頃は「いよいよ元が攻め込んできそうだ」という空気になってきておりました。
九州に領地を持つ御家人は現地で防備を固めるよう命じられていた状況。
御家人の中には領地ではなく、鎌倉に定住している者もいました。彼らが九州に行ってしまえば、鎌倉の武士が減ることになりますよね。
その混乱に乗じて反乱を企てていた者がおり、日蓮やその門下たちも「反乱を起こそうとしている一団だ」と疑われてしまったのだとか。
後の宗教の団結力を考えれば、疑われても仕方のないところではありますが……ううむ。
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