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【大河ドラマの時代考証】
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”若者ウケ狙い“の弊害か?
フィクションだからなんでもあり。
心象風景なら許される。
ならば、女大鼠が網タイツでもOKかもしれない。
往年の時代劇では実際にあったし、SNSもきっと盛り上がることでしょう。
『どうする家康』では、既にアクションシーンでプロレス技が組み込まれ、話題となっていました。
そんなスタンスならば、網タイツくノ一もありっしょ!
というのは、もちろん本気ではありません。
『どうする家康』では、若者を惹きつけるため、こうしたウケ狙いをしていると擁護されることもありますが、それが大きなマイナスになってはいませんか?
大河ドラマは歴史が舞台です。
プロレス技とか、忍者のピタゴラスイッチとか、ドS信長の「白兎」とか。ドラマの格や信憑性を落とすだけで、効果が上がってるようにはとても見えません。
若者ウケ狙いをしながら若者が脱落していく、最悪の結果になっています。
若者ウケを狙った結果、大失敗をすることはよくあります。
こちらの例を見てみましょう。
誰しも一度は口にしたことがおありでしょう。
M&M's(エムアンドエムズ)チョコでお馴染みの同社が「おまえら、こんな多様性が好きなんやろ?」という広告のスタンスを消費者から見透かされ、冷ややかな目で見られているというものです。
それを同記事ではこう表現しています。
例えるなら、マース社の一連のD&Iは、若い人たちの流行りに無理に付いていこうとし、最後の最後で外してしまった結果、余計にジェネレーションギャップを際立たせてしまう「痛いおじさん」のようなものだった。
この「痛いおじさん」現象が炸裂しているのが、今の『どうする家康』だと思えます。
大河を視聴する若者は、イケメンや美女が目当てなのか?
それとも純粋に歴史に興味があるのか?
若いというだけで前者と決めつけ、後者を軽んじるようなことをしていると、事態は悪化するばかりでしょう。
ハロー効果に気をつけよう
社会心理学に「ハロー効果」という言葉があります。
ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる(認知バイアス)現象のこと。
例えば、ある分野の専門家が専門外のことについても権威があると感じてしまうことや、外見のいい人が信頼できると感じてしまうことが挙げられる。
Wikipediaより
これはテレビが得意とする手法で、例えばこんな話があります。
ある歴史研究者が、自説と正反対のシナリオを語るようTV番組のスタッフから依頼された。
「そんなことはできない」と出演を断り、後日、該当の番組を見てみると、肩書きは立派だけれどもその分野とは関係ない研究者が出演し、番組のシナリオに基づいてコメントをしていた。
実際、ワイドショーなどはその連発でしょう。
医者、学者、弁護士など。一般的に信頼度の高い方たちが、ご自身の分野とは関係ないことについてもコメントをしている。
視聴者は肩書きばかりを見て、中身はさして吟味しない。
「偉い先生が言っているなら、そうなんだろうな」と信じてしまう。
大河ドラマも、すでに63回も作られている超長寿番組だけあって、ハロー効果を発揮している。
いくらフィクションだと言っても、大河だから間違いない、史実だと思う視聴者が一定数出てきます。
一例を挙げると名作『独眼竜政宗』が大きな誤解を生じさせました。
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『どうする家康』は、そうした重厚な大河ブランドの一つであるのに、描写に説得力やパワーがないから、時代考証へ非難が向かうという嘆かわしい出来事が起きたのではないでしょうか。
個人的には、
・制作体制そのものに何か不備があるのではないか?
・根本的なところで何かがずれてしまっているのでは?
とNHK制作サイドへの疑念が募っています。
現場が盤石でないゆえにキャストやスタッフが本領発揮できないのであれば非常に悲しいこと。
繰り返しになりますが、ネットで誰かに攻撃的な言葉を投げかけるのは、マナー違反を超え、訴訟沙汰になってもおかしくありません。
言いたいことがあるならば、正々堂々とNHKへ送りましょう。
◆NHK みなさまの声にお応えします(→link)
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【参考文献】
大石学『時代劇の見方・楽しみ方』(→amazon)
鈴木嘉一『大河ドラマの50年』(→amazon)
他