べらぼう感想あらすじレビュー

背景は葛飾応為『吉原格子先之図』/wikipediaより引用

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第6回鱗剥がれた『節用集』うがちで脳が捻じ切れる

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第6回鱗剥がれた『節用集』
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鱗形屋は経営が苦しかった

蔦重が、藤八と共に擦り損ないの紙を切って揉む作業をしております。

紙屑売りに売らないのか?

そう蔦重が聞くと、古紙回収よりもトイレットペーパーにする方が得だと旦那様が判断したそうで。

『光る君へ』の平安時代よりもずっと手軽になったとはいえ、江戸時代も紙は貴重です。リサイクル業者に渡すことが常識でした。

この紙の使い回しが、なかなか日本史としては重要です。

後世になって、思わぬところで意外な書状が見つかることがあるのも、リサイクルをされた結果だったりします。

蔦重は、鱗形屋の経営が苦しいのか?と、それとなく探りを入れます。藤八がいうには、なんとメイワク火事で蔵までやられたそうです。

いったい「蔵までやられる」とは?

火災が頻発する江戸では、大切なものは火が回りにくい蔵に入れておきました。

火災後、すぐに開けると熱が籠っていて、引火するからまずい。冷えるまで数日待ってから開けて取り出す。そういう手筈になっておりました。

その蔵まで燃えたら、そりゃもう大打撃です。

中身はなくなる。かといって、防火機能のある蔵を再建しないわけにもいかない。蔵まで燃えたらそりゃもう、大惨事ってなもんですよ。

これを聞いて蔦重は、次男坊はおとっつあんを助けたいからこそ書物問屋を目指しているのかとあたりをつけます。

 


今も昔も、人は貧すれば犯罪に手を出す

そのころ、尾張・熱田では、血相を変えた柏原屋がこの『節用集』を売ったのは誰か?と聞いている。

なんでもお武家さまだそうで……これは妙な話だ。武家が一枚噛んでいるのかね。

柏原屋が奥付を確認すると最後の頁の奥付に「書林」と「本屋 丸山源六」の文字があります。

この時代の本ともなると、崩し字でなく活字なので、目にした瞬間に読めてスカッとします。現存数が多いことと大河効果で見る機会も増えております。是非とも皆様もご覧いただければと。

鱗形屋の長男・長兵衛が父を呼んでいたのは、どうやら大名家に用事があったようです。

父と子で青本二冊を恭しく差し出しております。さらに鱗形屋は懐から一冊の本を差し出します。

小島松平家家老・斎藤茂右衛門が「おお!」と言いつつ受け取ったのは、鈴木春信の『真似ゑもん』です。

春本=エロ本じゃねえか!

『真似ゑもん』は、小人の主人公・真似ゑもんが、誰かがいたしているところを覗き見るという話です。ここでも、その絵がチラッと映りました。

気取っておいて受け取っているのがエロ本かよ!

そう言いたくなるかもしれませんが、このころの春本は読むのが当然。よほどお堅くなければ恥ずかしがるほうが野暮だぜ。

しかし、そうはいっても、殿のために家老がエロ本を調達ってなァ。それだけのわけもないだろうよ。

すると家老は声を顰め「例のあれ」を更に倍頼むと言い出しました。

驚く鱗形屋。なんでも金になるような名産品のない、小身の大名にはまことありがたい実入りなんだそうで、鱗形屋は近いうちに持ってくると承っております。

さて、この父と子が去ったあと、「例のあれの件」で家老に報告がきます。

それにしても……なぜ、コソコソと小銭稼ぎをしなければならないのか?

江戸の各藩の財政について見ておきましょう。

それなりにちゃんとした大きな藩ともなれば、こんなことはしないで済みます。時間のある藩士も動員できる。それなりに特産品もある。

例えば、今週末に企画されていたものの豪雪で中止された「会津絵ろうそく祭り」があります。

この絵ろうそくも、藩の特産品として開発された一面があります。

2013年大河ドラマ『八重の桜』では八重はじめ、女性たちが会津木綿の着物を身につけておりました。武家の妻に木綿を織らせることで、特産品にしていたのですね。

日本各地の特産品は、こういう藩財政の再建策として生み出されたものがたくさんあります。

江戸時代以降の伝統名産品を調べていくと、だいたいが江戸中期から後期にかけて、優れた家老の名前が出てくるものです。名家老の顕彰碑や、名前がつけられた銘酒などもあります。

しかし、これができるのもある程度、人間を動員できればの話。

小藩や旗本御家人には無理です。では、どうするのか?

以前、旗本御家人にコンサルタントが財政再建案を出している資料を見たことがあります。

倹約、倹約、倹約……であり、私は疑念を覚えました。何か特産品を作るなりして、収入アップを目指すことはできないのかと。

無理でした。なまじ人員を動かす力のない武士は倹約しかない。その中でも才能がある連中がクリエイターになった。それが江戸中期の時代背景です。

天下に出回る金が少ない!そうなれば倹約か、工夫か、犯罪をするしかない――そんなギスギスした事情が見えてきます。

そんな世の中に、金を増やそうとしているのが田沼政治です。

 


「本嫌いな野郎」こそ、ブルーオーシャンでは?

半次郎の「つるべ蕎麦」で、蔦重は情報収集中。

留四郎という、吉原の若い衆も字幕で表示されています。相関図にも加わりましたので、今後何か見どころがあるのでしょう。

蔦重は、よりにもよって読書と無縁そうな次郎兵衛にアイデアを求めています。

すると半次郎は「絵でいいんだよ、絵は好きでしょ」と提案。

となると、次郎兵衛は「じゃあ女郎の枕絵とか?」と返します。

で、半次郎が「横っちょに好みの技が書いてあってよ」というと、次郎兵衛は「得意の技じゃねえ?」と返します。

これは現代風にすっとこうだからな。

「本は読まねえし」

「じゃあ絵でいいんだよ、二次元好きでしょ」

みたいな話よ。

でも「枕絵=ポルノ」も供給過多なんで、新たなアイデアが求められますけどね。そのうち北斎なんかは海女とタコ(→link)なんて新機軸に突き進むわけです。

しかし、これ以上エロを探究されてもまずいので、蔦重が「義兄さんはいつから本を読まなくなったのか?」と問いかけます。小せえ頃は赤本が好きだったそうで。

赤本は絵が豊富だけど、大人向けの本は字ばかりになると返す次郎兵衛。

蔦重は青本は赤本みたいに絵が豊富だと水を向けます。

赤本=児童書

青本=ジュブナイル、ライトノベル

そんな分類が見えてきましたね。

次郎兵衛は言い切ります。

「青本はつまんねぇんだよね」

「じゃあ、つまんなくなかったら青本を読むってことですか?」

「まぁ、そうかもしんないねぇ」

フォーマットのせいじゃねえ、中身のせいだ――そう気づいた蔦重の脳裏に江戸のアホ男どもが浮かんできます。

「これ、つまんなくねえよ」

「おう、つまんなくねえ」

これだ!

万次郎少年のような奴はあくまで少数派。次郎兵衛くらいの連中がなんだかんだで絶対数としては多い。層が厚い。ここを狙い撃ちにすりゃいいわけよ!

そして、腹が減ってはいくさはできぬとばかりに、ズズッと蕎麦をすする蔦重です。

横浜流星さんはこの蕎麦の食べ方がすっかり江戸っ子だねぇ、いいねぇ。

そのころ鱗形屋では万次郎が寝静まった夜中でも、何かの印刷に精を出しているのでした。

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