べらぼう感想あらすじレビュー

背景は喜多川歌麿『ポッピンを吹く娘』/wikipediaより引用

べらぼう感想あらすじ べらぼう

『べらぼう』感想あらすじレビュー第26回三人の女 つよ・てい・喜多川千代女とは?

こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
『べらぼう』感想あらすじレビュー第25回三人の女
をクリックお願いします。

 


つやの髪結床ついでの書店営業手段

蔦重が耕書堂に戻ると、つよが客を捕まえ、部屋で髪を結っていました。

地方出身者のように思える客ですね。

すかさず蔦重も入っていくと、つよを捕まえ「勝手に商売するな」と言い渡す。しかし、お代はもらってねえそうで……ていが何かを持ってきます。

髪結の間に絵を見せています。

思わず蔦重も「なるへそ」と納得。地方出身者にとって浮世絵はたまらない品であり、土産の定番でした。

すると蔦重も丁寧に向き直って挨拶をして、作品の解説を始めます。

黄表紙に往来物、売り物を立板に水で解説してゆく。と、客は江戸の流行は把握していないものの、見ているだけで楽しいと喜んでいます。

客は庄内出身者でした。江戸時代有数の経済を誇る場所ですね。こりゃいい得意先ができそうだ。

そして夕食の場面へ。

つやが考えた売り込み髪結床には蔦重も納得せざるを得ません。長旅のあとで髪が乱れている商売人が多いんだと。

ていは一緒に食事をせず、後で食べるそうです。日本橋のきちんとした店はこうだと蔦重が説明すると、「じゃあ私がちゃんとしてないみたいじゃないか」と言い返すつよ。

するとていが「品の系図」を作りたいと言い出しました。

蔦重の説明が面白いので感心したのだとか。みの吉も、蔦重のセールストークに驚いたそうですよ。

奉公人の皆があのセールストークを展開できれば売上に繋がる。そのためのマニュアルを作りたいようで、蔦重はその制作をていに頼みこみます。

すると、つよが自分に感謝するようにとか言い出す。

なんでも賢い嫁がいて、働き者に囲まれているのも、自分が捨てたおかげだってよ。

「人間万事塞翁が馬と申しますものね」

ていが漢籍でまとめてきやがったぜ。ていとつよ、正反対なようで、なんだかいいコンビになりつつあるぜ。

 


歌麿は居場所がない

「出てくってなんでだよ?」

蔦重がそう歌麿に告げています。自分がいなくても店が回ると気づいてしまったようで……どこにいくつもりか?と蔦重が詰問すると、長屋でも借りるとそっけない。

なにも米が高い時に出て行かなくていいじゃねぇかと蔦重が言うと、歌麿はむしろその方が店が助かると言います。

「おかしな遠慮すんじゃねえ! お前は俺の義弟なんだから黙ってここにいりゃいいんだ」

そうキッパリ否定し、肩を叩く蔦重。それでも納得できそうにない歌麿に、出ていくなんて許さないと言い切ります。

唐丸がいなくなったこと。その後の再会をふまえれば納得はできます。

しかし、歌麿の気持ちはわかっているのやら?

蔦重は人の心にスッと入り込んでいく割に、鈍感なんですね。そこも母親譲りなのかもしれません。

ていがその会話を聞きつつ布団を敷いていると、つよがやってきてこう言いました。

「あのさ、歌はあの子のあれ……念者(衆道において兄貴分の者)なのかい?」

義兄をそう解釈しちまったのかい。ていはあくまで義兄弟だと伺っていると返答しますが、義兄弟はそういうことだとつよは早合点している。

すると蔦重が部屋に入ってきて、駿河の親父様に拾われたのだと、親に捨てられた恨みを滲ませつつ否定し、母を罵倒すると寝るように言いました。

まぁ、確かにイラッとするのはわかんぜ。しかも妻を相手にそう言ってますからねえ。

ていにじっと見つめられ、焦る蔦重にこう言います。

「もしそういうことなら、どうぞご遠慮なく。歌さんと、その……」

ていも理解が早すぎねえか! いや、これも漢籍教養かもしれねえ。

三国志』の最終盤、魏から晋へかわるころ、「竹林の七賢」に嵆康と阮籍という二人がいました。同じく七賢の一人である山濤も、この二人と仲良くしていました。

山濤の妻である韓氏はこのことを聞き「ただの関係ではないようだ」と察知します。

そこで彼女は確認すべく、自宅に嵆康と阮籍を招き、おいしいお酒と肉料理をたくさん準備して泊まっていくよう促しました。

韓氏は「同じ部屋で二人が、服を脱いで一晩過ごす様を確認せねば判断できない」と考えたのです。

そして部屋に穴を開けて観察しました。

翌朝、夫の山濤から感想を聞かれた韓氏は「あの二人の関係はとても特別で、あなたは及ぶものではありません。あんな人たちと交際できるあなたは運が良い!」と大満足していました。

これは当時のおもしろエピソード集『世説新語』「賢媛編」に収録されています。賢い女性の逸話ということですね。

てなわけで、ていならそうした話を思い出して腑に落ちるものもあることでしょうし、「私もここは賢媛であらねばならぬ」と義務感すら生じてもおかしくはありません。

むしろ色に溺れることは恥ずかしいと考えていそうです。

ちなみに中国史の男性同士は、他の文化圏からみるとどう考えてもカップルではないかと思われる仲良し描写が多い。

手を繋いだり、腕を組んで街を歩く。

同じ車に乗って移動する。

同じベッドで並んで眠る。その枕を抱きしめつつ相手を思い出し、涙をこぼしたりする。

結局こいつらどうなんだい? と、なりますが、専門の研究者でも諸説あり、結論は出ないものです。

近年は華流ブロマンスドラマも大流行しております。大河がそこを見逃せるわけもなく、日本代表ブロマンス時代劇を、そろそろ打ち出さねばならない頃合いでしょうか。

果敢な挑戦であり、かつ中国史ブロマンスを理解にも役立つていの賢媛ぶりですな。

「俺……私と歌は、そんなんじゃねえですよ」

蔦重はキッパリと否定してきました。

「けれど先ほどの、まるで痴話喧嘩のような」

じっくり喧嘩を聞いていた者としては納得できないのでしょう。蔦重は遠慮しているだけだと説明します。店の仕事をしてないから居づらいのだろうと分析しています。

「もっと図々しくしていてくれりゃいいんですけどね。俺は当代一の絵師になんだからって」

ていは、歌麿の才能を見出す蔦重に驚いています。まだパッとしないけど、あいつの才はとびきりだと言い切ります。

そして謝りながらこう続けます。

「出てくぞって言いたくなんのはおていさんですよね。ババアに部屋取られて。俺の……あ〜私の部屋で寝ることになっちまって」

「そこは……わざわざ別の部屋で寝るのもつよさんに勘ぐられそうですし、そのようなことで騒ぎになるのは店にとってもよくありませんし」

「そう言ってもらえると助かりまさ。んじゃ、お休みなせえ」

なんとも不思議な会話ですぜ。

そもそも新婚夫婦が寝室が別々というのが異常っちゃそう。で、つよがそれを嗅ぎつけて言いふらされたらたまらねえ。ていの心の扉はなし崩し的に開いちまったといえるわけでさ。

ていは極端に無表情で無愛想ですが、だからといって愛がないわけでもないでしょう。

内に熱い思いが篭っちまうタイプ。心を開かせるまでが面倒ですが、最近、フィクションでもこうした心を閉ざしている人物が増えていると思います。

 


米価上昇、それぞれの対処

そのころ吉原では、あの雲助こと田沼意知の美男ぶりに女たちが浮かれています。

それをジッと聞いている松前廣年

意知は当分来られないと誰袖に断っています。なんでも米価対策に追われているそうで、大文字屋も同席しながらこれない理由を聞いてきます。

米価が下がるまでは遊興も控えるように言われたそうで。

誰袖は紅唇を動かしながら言います。

「仮の名で月に一度のお越し。ばれるとも思えせんが」

「近々、若年寄になることもあってな」

思わず大文字屋も驚いています。誰袖の身請け先としてますます価値が上がる。

意知としては、だからこそ風当たりが強くなると懸念しているのですね。誰袖が首を傾げつつ身請けのことを確認すると、大文字屋は蝦夷地との兼ね合いもあると釘を刺すのでした。

蝦夷地には平秩東作が潜入し、抜荷の件で協力しそうな商人も見つけたそうで。

湊源左衛門が善吉という男に、何か密命を託すようです。

場面変わって、蔦重が大引赤蔵という大商人をもてなしています。

引き出物として渡したのは、四方赤良直筆の狂歌扇。赤蔵が扇に一礼しながら、赤良の見ている前で開く。

江戸時代にはこうしたファンが喜ぶグッズ展開が庶民にまで展開されまして、お金を払うとサイン入りグッズがもらえるクラウドファウンディングのような催しもありました。

今の推し活の原型はだいたいこの時代にはできていたんですね。

つまり、推し活は純粋な気持ちだけのものでもないとわかってきます。要するに、金が動くからこその活動であり、そこは冷静になりたいところですな。

蔦重はお宝グッズを喜ぶファンを前に、米を安く手に入れたいと持ちかけました。赤良も米を食いに来るという決定打を持ち出しつつ、昨年の基準で買いたいと持ちかける蔦重。

赤蔵はおととしの米ならもっと安くできると言い出しました。

グッズ戦略が効いてるぜ!

※続きは【次のページへ】をclick!


次のページへ >



-べらぼう感想あらすじ, べらぼう
-