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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第28回「一帝二后」】
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帝も認めてしまう
彰子は己というのものがない――帝はそう行成に漏らします。
しかし、それがかえって女院の言いなりであった帝の過去を思い出させ、彰子に対する同情心をかきたてました。
朕にとって愛しき女子は定子だけだと断言。
そのうえで、彰子を形の上だけでも后にしてもよいと言います。帝も、道長とは争いたくないのだと。
道長が兼家のような性格ならば、帝もかえって反発できたのかもしれない。
しかし、そういかないところが道長のおそろしいところです。
柄本佑さんのあの器の大きい演技が、そんな道長に最適だと思えます。
道長、行成の腕の中に倒れる
行成は道長に対し「彰子様を中宮にしてもよいとはっきり仰せになった」と報告しています。
しかし、行成はどうにも人が好すぎるせいか、相手の望む答えのほうへ引き寄せて語るのですよね。
実資あたりとは真逆に思えます。
しかも受け取る道長は猜疑心がないので、案の定、帝の気持ちを動かしてくれたと礼を言います。
行成が感激していると、道長はさらに、行成の心を掴む言葉を続けます。
四条の宮で学んでいたころより、行成はいつも道長に、さりげなく力を貸してくれたと。
「今日までの恩は決して忘れぬ」
そう言われ、うっとりとしてしまう行成。心がとても優しいのですね。
しかし、ここで道長が続ける言葉に、平安貴族らしい生々しさがある。
「其方の立身はもちろん、其方の子らの立身は俺の子らが請け負う」
父の夭折で、出世しにくい行成にとっては、これが一番欲しいものだとは思います。あとは唐物や越前紙を含めた文房四宝でも贈ればきっと行成は喜びますね。
と、ここで道長は行成の腕の中に倒れ込んでしまいます。心労がたたったのか体調が優れないようです。
「道長様!」
「誰も呼ぶな、大事ない……」
そう強がる道長ですが、はたして。
まひろの個性あふれる育児方針
「王戎簡要、裴楷清通。孔明臥龍、呂望非熊……」
まひろが子ども向けの漢籍である『蒙求』を読み聞かせています。偉人のエピソードをまとめ、それを手本にするように指導するものです。
これには乳母のあさも困惑しています。
子守唄代わりに聴かせれば覚えてしまうとまひろは語りますが、あさにしてみれば、なぜ女児に漢籍を?という思いなのでしょう。
「姫様ですが……」と困惑していると、まひろは学問好きな姫になって欲しいとのことです。
学問より、そろそろ名前が欲しいとあさが言うと、殿に名付けをしてもらうようで。
この一連のやりとりは、当時の事情を知ればなかなか笑える場面でしょう。
紫式部自身、宮中で「女のくせに漢籍知ってるとかありえなくない?」と言われ、『源氏物語』でも漢籍教養を自慢する痛い女エピソードを盛り込み、中々わけのわからん女ぶりが出ているエピソードだと思います。
教養溢れる堅物、例えば実資あたりが事情を知ったら、
「そんなに教養と見識があるのに、抱いているのは不義の子かよ!」
と、ツッコミそうではありますね。
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