徳川家康像/wikipediaより引用

どうする家康感想あらすじ

2023年大河ドラマ直前予想『どうする家康』はどうなる?消せない懸念

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民放トレンディドラマ路線の踏襲

大河ドラマそのものに限界が見えてきている。

ならば……と、2022年『鎌倉殿の13人』制作チームはGoT路線を目指し、一定の成果を上げました。

一方で2023年から感じるのは、2000年代路線です。

わかりやすく言えば【民放トレンディドラマ路線】ですね。

トレンディドラマは1980年代から1990年代にかけて流行したものであり、大河における典型例は2002年『利家とまつ』。

世間から一歩遅れて取り入れたせいか。

この路線は迷走し、その特徴をまとめると……。

・「民放ドラマでも大人気のあの豪華キャスト!」とキャストの豪華さをアピールする。美形揃いともいう

大河はよほどのことがなければ例年豪華です。

なのに、そこをプッシュするということは、他に材料が無いことか?という懸念が湧いてくる。

・「民放ドラマでも大人気のあの脚本家を起用!」

ここまで時代劇が減った現在、時代劇経験がない脚本家はむしろリスク要因に思えます。

過去の体験でプラスとなるのは時代劇か、あるいはNHKもう一枚の看板である朝の連続テレビ小説でしょう。

長丁場を経験しておくのは当人の持久力に影響するはずです。

・親近感アピール「こんな冴えない俺がいつの間にか大変なことに巻き込まれて……」

昭和の高度経済成長期では野生をギラつかせたタイプが受けましたが、平成はのほほんとした面が押し出されます。

しかし、乱世を生きる人物がそれでよいのかどうか。

・中高生や大学生サークルみたいなノリで、ラブコメやモテを強調する

言うまでもなく異性愛のみ。アロマンティック・アセクシャルなんて思いもよりません。

大河で同性愛要素を減らす傾向が強いことは散々指摘されています。今年は徳川家康井伊直政をどうするんでしょうね。

『花燃ゆ』はヒロインが松下村塾のおにぎりを握るマネージャー路線でアピール。

『西郷どん』は主人公のモテを強調。

『青天を衝け』は栄一が「胸がぐるぐるする!」と千代に告白する場面があった一方、明治権力者の下半身事情はぼかしていましたね。

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この要素が全部当てはまっているのが『どうする家康』。

以下の記事が、非常にわかりやすい典型例となっていますね。

◆「どうする家康」キャスト・あらすじ【まとめ】 ありえない豪華キャスト!(→link

・キャストの豪華さをアピールする。美形揃いともいう

記事タイトル:「どうする家康」キャスト・あらすじ【まとめ】 ありえない豪華キャスト!

・「民放ドラマでも大人気のあの脚本家を起用!」

徳川家康の生涯を「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどの脚本家・古沢良太が新たな視点で描く物語。

・親近感アピール「こんな冴えない俺がいつの間にか大変なことに巻き込まれて……」

家康:後の江戸幕府初代将軍。今川家につかえたのち岡崎城城主として独立し、三河統一を目指す。ナイーブで臆病で優柔不断。思いやりがあり相手の意見をよく聞くが、頑固なところも。理想と現実の間で悩みながら重責を背負い右往左往する。

・中高生や大学生サークルみたいなノリ、ラブコメやモテを強調する

瀬名:家康の正室。今川家家臣・関口氏純の娘。明るく朗らかな性格。家康の初恋の人で、仲睦まじい夫婦となる。

於愛(おあい)の方:家康に希望をもたらす愛されキャラ。

お万:神秘的で妖艶な魅力が漂い、武田信玄との激戦で疲れた家康の心の隙間に入り込む。

本多忠勝:女性には奥手。

井伊直政:頭の回転が速く女性にモテるが、プライドが高くトラブルを起こしがち。

大久保忠世:身なりにこだわる自称、色男。

「初恋」とか「愛され」とか「奥手」とか「色男」とか。

三河武士団の屈強なイメージからは程遠い、ラブコメじみた人物紹介に困惑します。昭和から平成にかけての漫画みたいなノリですね。

家康は側室が多いとされます。

といっても彼は美形にこだわらぬ後家好みでもあり、こういうギャルゲーみたいな個性付けをされても違和感しかない。

 


謎の“オリキャラセクシー女”

素材画像がきっちり提供されているこちらの記事は、NHK側のPRを元に書かれています。

つまり作り手の意識が表れている。

だからこそ拭えない、こちらの巨大な不安要素。

千代:素性はわからない。家康とは不思議な縁で結ばれる。

謎のくノ一枠が来てしまった!

大河に「オリキャラ」はありだと思います。この「オリキャラ」というのも近年の呼び方で、歴史劇にはつきものです。定番の技法ではあります。

『麒麟がくる』の駒や伊呂波太夫は素敵でした。『鎌倉殿の13人』の善児とトウも素晴らしかった。

しかし、謎のロマンス相手となると途端に地雷感が増すのです。

具体例を挙げると『天地人』の初音。

『天地人』の主役である直江兼続は、格上の家である直江家のお船に婿入りする形で入りました。遠慮もあってか、側室はおりません。

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フィクションでは側室がいないのは夫婦愛ゆえとされがちです。『天地人』はサービスが足りないとなったのか、お色気オリキャラとのロマンスが投入されました。

しかも真田幸村と絡ませたせいで、こんなトラブルまで起こします。

◆大河ドラマ『天地人』で長澤まさみ演じる役設定が急遽変更(→link

初音は、妻夫木聡演じる主人公・直江兼続にとって、肉体関係を結ぶ“初めての女性”。

当初は俳優・城田優演じる真田幸村の妹役という設定だったが、それでは兼続と幸村の年齢差から、初音が10歳以下で肉体関係を結んだことになってしまうという視聴者からの問合せにより、NHK側が対応。

番組公式ホームページに掲載されている登場人物関係図も、28日(水)より初音の設定が“妹”から“姉”に変更された。

これに対しNHK広報は「年齢設定の部分で混乱や誤解を招く恐れがあるので原作通りに戻しました」とコメントしている。

こういう謎の女って、昭和の名残なんですよ。

昭和の頃は今よりもっと男女差別が激烈でしたので、こんな偏見と商売のコツがまかり通るほど。

「女はバカだから歴史を理解できない。歴史小説は実質的に男だけが読む。なので、お色気展開もありだ!」

何を根拠とした三段論法なのか。

あまりに杜撰な話で笑ってしまいそうになりますが、実際に歴史作家が「編集者から無理に濡れ場を入れさせられ、うんざりした」と語り残していることもありました。

真面目な歴史小説だと思って借りてきたら、ずっと側室とのイチャイチャ展開――そんな苦い経験は私にもあります。

これが大河ドラマも同じというのはさすがに辛い。

大河はお勉強になるから鑑賞が許されていたとノスタルジックに語り出す方がおります。

その中には、ドラマで美人女優の肌が見えてムフフ……とニヤける層もいて、大河でお色気要素が出ると閲覧数(PV)狙いでこんな記事も出現する。

◆大河ドラマ『麒麟がくる』の遊女シーンが話題に「おっぱい祭りだ」(→link

GoTなどで、はるかに過激なシーンを目の当たりにしている層からすると、全く意味がわからない。

中学生男子がワイワイしているのと何が違うのか。いや、飲み会でセクハラする上司ですか。

ともかく、記事をクリックしてしまう層は一定数いるのは確かです。

しかし、記事でエロな雰囲気を煽るのと、大河の中に謎のお色気枠を入れるのは別の話で、不安しかありません。

女性が視聴者にいることを忘れていませんか?

一言で言えば、センスが古い。

往年の居酒屋に貼られていた、ビールジョッキを持った水着美女が微笑む、そんなポスターのようです。

小池栄子さんを強い女性として描き上げた2022年は偉大だったなぁ。

 


大河には二つの道があった

結論を申し上げます。

紆余曲折を経て、ついに行き詰まったここ数年の大河ドラマには、二つの道があった。

①海外に出しても恥ずかしくない日本版GoTを作るか?

②無難に民放路線の焼き直しに向かうか?

2022年は前者を取った。リスクはあるが、そこまで考えて選んだ。

2023年は後者を取った。リスクはない。出演者のファンに訴えて、宣伝もすれば大丈夫。題材は一番無難な三英傑だし、どうにかなる。失敗する要因はないはずだ!……と、それはどうでしょう。

2022年は画期的でした。見る側の意識がガラリと変わりました。

本当は大河のことなどどうでもよかった海外ドラマファン層もやってきた。

GoT視聴者のような見方が染み付いてしまった視聴層がいる。

前者は“not foe me(私好みじゃない)”、2022年が例外だったな……と判断し、序盤で去ることでしょう。

後者は疑念を感じ、苛立ちながら見守ります。

前者は数字を落とす。

視聴率はそこまで落とさないどころか、題材の知名度で2022年度を上回る可能性が高い。

しかしNHKプラスの視聴回数はかなり下がることでしょう。

後者は評価を落とす。「鎌倉殿ロス」だとぼやき、SNSに書き込みつつ鑑賞する。そうしたマイナス評価がネットニュースに上がる。紙媒体は売れそうにないから、夏以降取り上げることもなくなっていく。

視聴率についていえば、配信が増加し低下することは避けられません。

しかも話題性でも取り上げられないとなれば、地味な大河として埋没することでしょう。

と、悲観的な見通しを書きましたが、私は言いたい。

2022年が特別だった。特別過ぎた。

そして今年は、私のような悲観的な予測は外れ、「すみません、傑作でした!」と情熱的な気持ちでいたい。

私の仕事的にも、大河は盛り上がった方が絶対にプラス。

だからこそ、こんな予想は本当に外れて欲しい……そう願うばかりです。


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文:武者震之助note

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