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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第19回「お手付きしてどうする!」】
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どうする衣装
このドラマ、衣装のセンスがどんどん悪くなっています。
勝頼のスカジャン陣羽織にも絶望しましたが、それ以外も酷くて、和服の伝統をまるで踏まえていないと思います。
やたらと薄い色が多く、それだと要するに「染料も使えないほど貧乏です」になってしまう。
逆に「汚れたら捨てるほどリッチです」というエコロジー精神に反するアピールになるかも。
色の薄い服は汚れ易いから、倹約精神があって、かつ体を動かす身分だと濃い色を身につけることもあるわけですが、そのどちらでもないのが本作です。
お万の衣装は、なんなんでしょうね……もう、色合いからして下劣で気持ち悪い。
そして妙なことに、本作の衣装はまず模様がない。あったとしても、伝統的な模様ではない。
和装の模様をどうするか?
これは武者絵を描く絵師以来、ずっとクリエイターの頭を悩ませてきた問題です。
『麒麟がくる』を例にあげましょう。『どうする家康』ではついに出てこなかった朝倉義景です。
彼は梅のような薄紅色の衣装でした。東洋の伝統では、この手の配色も女性特有のものではありません。
むしろ男性がこういう色を着こなしていると、東洋時代劇らしさが出てきて素敵です。そして雅な模様も入っていると。
そして、そうした色合いを選ぶのも、乱世を生きるには柔弱で、いざという時の判断を誤る義景の個性に見合っていました。
『どうする家康』はどうか?
そうですね、たとえば信康のミントグリーンの衣装は「俺、チョコミン党!」とでも主張しているみたい♪
そう思ってしまったら、どういつもこいつもアイスクリームの好きなフレーバーをアピールしているように見えてきました。
抹茶味とか、チョコレートとか。そう考えるとかわいい……ってなりますかね? いやいやいや。
和服の構造や、魅力を理解していないと思われることもあり、信玄のモコモコ陣羽織はじめ、ラインがピシッとしていない衣装も目立ちます。
シルエットの美しさが、あのモコモコで台無し。
信長の陣羽織もゴミ袋のような質感で、これまた台無し。
せめて和服の構造を踏まえた上で作れないのでしょうか。
NHK大河スタッフが和服の構造を知らないなんてこと、あってはならないけれども……。
そんな本作の衣装でよいところといえば、他の大河で使い回しをしないところだろうとは思います。
なまじデザイナーの個性が強いとそうなりますが、これは強みを一つ捨てることでもあります。
ストック衣装の使い回しは大河や朝ドラの強みで、ファンはそれを把握していたりする。
そういう伝統よりも作家性を重んじた結果、本作は迷走している。
大河の衣装センスの悪さが際立っている一因として、朝ドラ『らんまん』の影響もあるかもしれません。
青年が身につける藍染の股引き。新橋芸者の粋な着物。そしてヒロインが来ている朝顔柄の浴衣。和装の魅力を思う存分引き出していて、朝から圧倒されます。
そういうものがNHKの強みだと思いますが、朝ドラがあれだけ完璧なのに、大河では一体何が起きているのでしょう。
どうする聴覚
本作はBGMもチグハグしていて入り込めない。
三方ヶ原で出陣する時はまるで遠足。
夏目の死への旅立ちもウキウキワクワク。
お万とのイチャイチャは、女刺客が企んでいるよう。
そして発声もどうにかなりませんか。
声を顰めている場面で、滑舌が悪すぎて全く聞き取れません。字幕がないと理解できないレベルです。
本作は、誰かが何かを話している最中に、その言葉を遮る場面が多くて、かなり不愉快になってきます。
同じ脚本家の『レジェンド&バタフライ』もそうだったので、クセなのかもしれません。
回想シーンでわざとらしく流れる合戦のサウンドエフェクトもウンザリ。何もかもが耳に悪いドラマです。
どうする漢籍
家康の部屋の漢籍の積み方にリアリティがまるでありません。
ともかく冊数が少ない。
昔の漢籍は巻数が非常に多いため、あの程度の冊数で「勉強してますぅ」アピールをされても薄ら寒いだけなのです。
映る範囲だけに置けばいい、そんなSNSの背景か何かと勘違いしていませんか?
それにしても、嫌な予感が的中しました。
前回出てきた「空城の計」が、諸葛亮の得意技にされていたら嫌だなぁと。『三国志演義』でしか使っていないのに……と思ったら、案の定、こんなニュースが出ていて、誤解が広がりそうでいたたまれません。
どうするすべてが無駄遣い
半蔵の仕事が、お万の妊娠報告ですか……。
お万がらみのすべてが無駄で、もう何もかもが虚しい。
『鎌倉殿の13人』の亀は、北条視点から見ればそれなりに重要なんですけどね。
お葉も、お万も、家康の妻の中では重要度が低い女にばかり、どうして時間をかけるのでしょう。
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