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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第23回「瀬名、覚醒」】
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つまり女性とは萌え要素でしかないのでしょう。
こういうドラマの作り手にとって、女性とは何なのでしょう?
意思や心がある存在ですか?
ただのコンテンツではありませんか?
身近に女性はいなかったんですかね。親きょうだい、同級生、同僚……そういう大事な人でも、おちょくり倒してヘラヘラ笑って生きていられませんよね。
仮に、架空の人物を描くなら、そういう萌えてんこ盛りをしてもいいでしょうよ。
しかし、実在の人物を用いる大河ドラマでこんなことをするとはどういうことなのか。
といっても、ケチをつけるばかりではよくないですね。前向きな提案でもしてみましょう。
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そうだ徳川家斉だ!
本作の作り手は、同じ徳川将軍でも第11代徳川家斉で大河を作ればよかったのではないでしょうか。
家斉――そう、子供を55人も作った、あのオットセイ将軍です(子の数は諸説あり)。
これならめんどくさい戦もないし、側室大勢いるし、子作りし放題です。
ただひたすら、家斉は癒しを求めていればいいんですよ。誰もがハッピーになれる最高のアイデアじゃないですか。
なんせ家斉主役の映画タイトルは、ここで書けるものでもこうですからね。
『エロ将軍と二十一人の愛妾』
あとはお下劣すぎますので、各自で調べてください。
本作製作者のインタビューを読んでみると、ウクライナのことがあるのに戦争は描けないとか、新しいものにするとか、時代劇も斬新性を求めているとか、そういう類のことが言われています。
だったら、あの鈴木則文監督のように、エロだの萌えだの、二次創作要素だの、ひたすら追い求めてみればよかったんじゃないですか。
◆大河ドラマ『どうする家康』が若者世代を繋ぎ止める?ドラマ評論家・木俣冬が教えるNHKの仕掛け「二次創作化の世界に入ってきている」(→link)
識者曰く、この脚本家とジャニーズ主演ならヒットの方程式があるのでしょう?
側室に美女を大量投入すれば、ムフフ需要で大ヒット待ったなしでしたよね。
◆松潤主演NHK『どうする家康』は「シン・大河」になる? 大ヒット大河ドラマ“勝利の方程式”とは | 2023年の論点(→link)
家斉大河でリベンジをどうぞ。
私としては、ドラマ10『大奥』シーズン2の家斉で間に合っています。
小人の過(あやま)つや必ず文(かざ)る
小人の過(あやま)つや必ず文(かざ)る。『論語』
ダメな奴ってミスっても、綺麗事並べて誤魔化そうとするワケ。
どうしてこんなドラマなのに盛り上がっているふりをするのか?
叩き記事も増える一方、相変わらず提灯記事を書くメディアは減らず、毎週キラキラと輝いています。
◆低迷する「どうする家康」一転して盛り上がる必然(→link)
BBCのジャニーズ特番を見ていると、その理由もわかるのではないでしょうか。
BBCが今年3月に報道して以来、大きな話題を呼んできたこのドキュメンタリー、オンライン用に日本語字幕をあらためてつけて、こちらで公開しました。
BBCドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」【日本語字幕つき】https://t.co/w8B1H0h1GN
— BBC News Japan (@bbcnewsjapan) June 18, 2023
結局のところ、大河ドラマにはビジネスモデルがあります。
むろん毎年同じとは限らないけれど、NHK・メディア・書き手の間で一定のパターンがある。
「この大河を褒めあってください。頑張れば仕事が増えます。役者や脚本家に取材できて、NHK公式本にも書けるかも!? ノベライズだって夢じゃない!」
依頼しあって、褒め合って、失敗してもそうでないように言い続ければ、狭い世界の中では問題ないのでしょう。
オリンピック絡みの不正が噴出して、視聴率が低迷し、舞台地はイベント集客できずむしろ困った――そんな大失敗作である『いだてん』は、なぜかいまだにドラマ通界隈では「最低だけど最高じゃんね!」と褒め合う機運が渦巻いています。
メディアとそれに敏感なドラマ通周辺が「ドラマ通ならこれがわかる!w」とイメージ付けに成功すると、批判するだけで「ダッサwwバカじゃないのww」となったりする。
私にも経験があります。
いかにもドラマ通ぽい人が滔々と雄弁に『いだてん』を褒めていたので、問題点を説明したところ、あとで罵詈雑言がメールで送られてきて、絶縁されました。
業界人のセンスに乗れるか乗れないか、そこが問題なのでしょう。
私はドラマ批判で人を傷つけてしまう。特にドラマ通を自認する層には蛇蝎の如く嫌われている。
けれども自分に正直に生きたいのです。
湿を悪(にく)みて下(ひく)きに居る
湿(しつ)を悪(にく)みて下(ひく)きに居る。『孟子』
湿っぽいのが嫌だと言いながら、わざと低いところにいる奴はなんなの。
さて、この間6月なのに石田三成すら発表されないと指摘したところ、発表されましたね。
豪華なキャスティングのようで、もはや負けは確実になったと思いました。
箇条書きにしてみます。
・親族枠:出演者の親族を入れる。いわば家族愛による出演であり、よい作品にしたいという動機とは思えない
・役者以外枠:大河ドラマに出ることを記念イベントにしてしまう、本業以外の役。シンガーソングライター、アナウンサーなど
・スタッフとの人情枠:脚本家やプロデューサーといったスタッフと、つながりがあると思える枠
・大河ファンにアピール枠:過去の大河ドラマで受けた役者
こういう諸事情が透けて見えていて、適材適所とは到底思えない。
いくら高級食材だろうと、ビーガンに肉を勧めることはマナー違反。その手のズレを感じます。
すでに決まったキャストのコメントでも「脚本次第」と釘を刺す不穏なものも見かけました。嫌な予感がしますね。
『鎌倉殿の13人』と、『麒麟がくる』と重なるキャストがいることに、私は決定的敗北の要素を嗅ぎ取ります。
むろん、作り手は逆。これ以上負けられないからそうしたのでしょう。
ゆえにメディアはますます提灯を掲げる。どういう記事が書かれるのか? 文体まで含めて想像できます。
『****』に続く大河ドラマ出演となる****。『****』で見せた……(と、以前のドラマでの演技をネットの声を踏まえて長々と褒める)であろう。
『どうする家康』では……(つけたしのような褒め言葉をネットの声を踏まえつつ)、新たな魅力を開花させた。
こういう記事をお上品なドラマ通文体で書くと、ミッションはクリアできます。
ただ、そこが危うい。だからこそ危うい。
比較されるということは、むしろ「なんであんないい役者を本作では台無しにするのか!」と怒りをかきたてる可能性は常にある。
高級食材を黒コゲにされてしまうような、そんな怒りと悲しみが混じり合いかねないのです。
それに本作は「シン・大河」だのなんだのぶちあげて、従来の大河ファンになど頼らないと言いたげな宣伝戦略を使ってきた。
それがここにきて大河ファンに媚びを売り出すとはどういうことでしょうか。
あれだけ湿っぽいのが嫌いだの、あんなことする奴はダサいwと笑っておきながら、ヘラヘラ笑いつつサウナに入り込んでくる。
大河とそのファンをバカにしながら、媚びを売るとはそういうことです。
喜んで受け入れる者ばかりとは限りますまい。
そして前述の通り、「脚本次第」とコメントで釘を刺している役者もいます。
確かに、どれだけ役者が素晴らしかろうと、脚本がダメなら、厳しいものがある。
過去の大河でも「あの脚本はなんなのか」と声をあげていた役者はいると聞いております。
それをこっそりと愚痴るだけならまだしも、堂々と言われたらどうなるのか。
若手新人はまだ空気を読まざるを得ないにせよ、ベテランはどうか。
以下の記事では朝ドラがあげられていますが、大河でも同じことが起きないとは言えません。
◆「国民をちょっとばかにしている」NHK連続テレビ小説を引き合いに田中泯が映画・ドラマ作り手に苦言(→link)
『鎌倉殿の13人』で奥州の藤原秀衡を演じた田中泯さん。
さすが鋭い言葉です。
映画やドラマに出演を続ける田中は「一般というか、国民というか、多くの人たちを、作る側はちょっとばかにしているんじゃないかって思う。映画にしてもテレビのドラマにしても、見る人をもっと引き上げるべく作る必要がある。現在に合わせて作っているものばっかり」と語気を強めた。
さらに自身が出演したNHKの連続テレビ小説を例に挙げ、「どうしてこんなに笑わせなきゃいけないんですか(って聞いたら)、国民もそうだからって……冗談じゃないでしょ」と当時のやりとりを思い出し「泣かしたって怒らしたっていいはず。反応がある方が面白い」と力説した。
こういうことを言われたら『どうする家康?』といったスリルがありますね。
追加キャストはプラスどころか、どでかいマイナスになる可能性がある。
忘れないでおきたいのは、それはキャストのせいではなく、ふざけた態度を改めず、ごまかすばかりの制作陣にあります。
花は桜木、人は武士。散る様をどうするのか考えてみるのもまた、乙なものでしょう。
そもそも、歴史が嫌いで興味がない脚本家が、なぜ大河を書いているのか。
先日NHKで制作した歴史番組『合戦将棋』を見ました。
役者はすぐに大河と交換してくれと懇願したくなるほど素晴らしく、衣装やメイクもまっとう。
何より脚本がいい。歴史好きが書いたと伝わってきました。千田嘉博先生もうれしそうにコメントをしていました。
この番組の脚本家は『花燃ゆ』の脚本家一人目だった方です。
思えば惜しいことをしました。彼女は歴史が好きです。そういう誠意は伝わってきます。
『合戦将棋』もお見事! 願わくば別の大河に再登板して欲しいと私は強く思います。
『いだてん』だって、メインテーマが落語や下町の暮らしならば、もっと生き生きと描けたでしょう。
実力や名声があろうと、歴史に情熱があろうと、条件が全て揃わねば失敗するのが大河の大変なところです。
しかし、今年は歴史への興味すら感じられない。
我々は一体何を見せられているのか。
広告戦略とドラマ通へのアピールさえすればどうにかなると考えていたんですかね。
このドラマの決定的敗因はただひとつ――歴史と大河ドラマを馬鹿にして舐めた態度をとったこと。
私に言われたくないでしょうが、これに尽きると思います。もう、危急存亡がかかっとりますよ。
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【参考】
どうする家康/公式サイト