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『どうする家康』感想あらすじレビュー第44回「徳川幕府誕生」

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『どうする家康』感想あらすじレビュー第44回「徳川幕府誕生」
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どうしようもなかった家族観

千姫がわざとらしく走ってきて、江が追いかけてくる。

いったい乳母はどうしたんですか。こんな大事な存在を放置して、一体なんなんでしょうか。

家族関係の描き方がせいぜい昭和なんですよね。

乳幼児死亡率や危険性もふまえていない。本作の作り手は根本的に育児への関心がないのでしょう。

高齢者への敬意もないし、精神状態が中高生程度で止まった妄想ばかりにも思えてきます。

しかも、この江と千姫もおかしい。

千姫があそこまで怯えているのは、嫁ぎ先が嫌だからのようです。しかも、江が子どもの前でペラペラと語っていたようなんですね。

秀頼の母である茶々は、江の姉です。まだ幼い江を庇ったことだってあった、そんな大事な姉です。

その姉の悪口を我が子に吹き込むって、性格が歪んでいませんか?

思えばこのドラマはそんな家族ばかりでした。市も娘の前で「本当は家康さんが好きだったの」とかペラペラ喋っていた設定でしたもんね。

歴史人物への敬意が全く感じられないのです。

思えばあのマザーセナからして両親が死んだ後もケロッとしていましたし、そのマザーセナのことすら家康は忘却の彼方。

あれだけベタベタといちゃついておきながら、仏壇の前で手を合わせる場面すらありません。

打掛で走ってくる江の所作にしても、『大奥』と比較するとあまりに厳しい。

茶々の打掛の翻し方も、全く美しくないんですよね。輝元をひっぱたくし、メイクはギトギトだし、これのどこが貴婦人なのでしょう。

秀頼と千姫の婚礼描写も、『大奥』の家定・胤篤と比べたら、ただの手抜きにしか見えません。

時代劇ファンの皆様は『100カメ 大奥』もご覧になられたかもしれませんが、「神は細部に宿る」とはまさにこのことで、本作と比較して驚くばかりだったでしょう。

『大奥』にできて『どうする家康』にできない、そんな言い訳は通用しないはずです。

 


どうする演技の幅

家康って、他者への親切な接し方が女性相手だといつも同じ。

キザでスカしたイケメンプリンスしかありません。

年上の母親相手だと「ババアかw」となるし、茶々は悪役なので「このバカ女がw」と感じさせます。

年下かつ好感度を見せなければいけないとなると、「俺に惚れんなよ」スイッチが入る。

しかし、千姫相手にそのスイッチを入れてしまうと、とてつもなく恐ろしいことになります。

この二人の場面は、祖父と孫娘には見えない。不気味な下心のあるおじさんと少女に見えてしまいました。

怖すぎます。

 


BBC、またも圧勝す

関ヶ原本戦の描写は、どう逆立ちしたって本線がBBC『ウォリアーズ』の圧勝であることは予想通りでした。

まぁ覆せるわけもないし、そこは最初から諦めていました。

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しかし、親子の情愛の描き方まで完全敗北とはどうしたことでしょうか。

『ウォリアーズ』では、秀忠遅参のあと、家康は我が子・信康の死を思い出し、秀忠を助命する決意を固めます。そこには揺るぎない親子愛がありました。

一方でこちらはどうか。

秀忠をネチネチネチネチ責める家康は、圧倒的なパワハラ感があって胸が苦しくなりました。

老母にも冷たい。息子には横暴。孫には気持ち悪い。

一体この家康は何を表現したいのか。彼が日本の近世を構築するなんて、冗談でも止めて欲しい。

 

本当に衣装のセンスがどうしようもなかった

家康メインの水色羽織はなんなんですかね。

年齢を踏まえて欲しい。

しかも配色センスが濁っていて、東洋の伝統色とは異なり、とにかくセンスが感じられない。

その謎は解けました。

前述の『100カメ』で『大奥』美術部の回が放送されました。

◆「大奥」美術部×「100カメ」撮影部 “職人肌”スタッフたちに共通する流儀とは?(→link)note版→(→link

美を作り上げるためにここまで気を使うのか。

見ているだけでうっとりしてしまうような凝り方で、カメラで映るとどうなるか、きっちり妥協のない現場の様子が映し出されていました。

ただただ圧倒される。

『大奥』を見ていると、幕末の錦絵が動き出したのではないかと思えます。

原作はモノクロが基本ですので、色彩感覚はドラマで作り上げていくしかない。そうする過程で、当時の色彩感覚や美意識を再現しようとしていることが伝わってきました。

その美術部トップは『麒麟がくる』と同じ大原拓さんとのこと。

◆「麒麟がくる」チーフ監督が語る“カラフル大河”の裏側 衣装はサッカー代表も参考に 光秀はフランス?(→link

納得です。あの作品は衣装に五行説を取り入れていて、とにかく画面そのものが美しかった。

「衣装が色鮮やかすぎる」とクレームが入りましたが、再現性へのこだわりが理解されないか、ピーキー過ぎたのでしょう。

センスが尖り過ぎていただけで、序盤に修正するとすぐに批判は止んでいます。

そして美しさはますます磨きがかかってゆきました。

役者の美貌だけではなく、それをさらに輝かせる工夫が随所にあり、あの美は、大原さんがいてこそなのかと納得。

眼福とは、まさに彼の作り上げた映像を見ているときのためにある言葉でしょう。

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『どうする家康』の衣装や美術とは、比べることすら失礼かもしれません。本作の合戦シーンでは「兜に照明が入り込んでそのまま流す」なんてことがまかり通っていて、美醜以前の問題と思えます。

衣装のことについて私が意見を申し上げていると、こんな反論も見られました。

「武者は『どうする家康』の衣装を貶すが、『麒麟がくる』だって批判されていたのに、そうしなかった! ダブルスタンダードだ!」

ダブルスタンダードも何も、その発想すら思い浮かびませんでした。

『麒麟がくる』は癖が強いだけで、ずっと美しいと私は感動していました。それが伝わらなかったようで残念です。

 


全然金があるように思えない大坂

美術へのこだわりが全く感じられない本作。

大坂城でパリピしている場面が入りました。

成長期の秀頼すら同じ、茶々も同じ着物です。『大奥』の貧乏公家より粗末な暮らしでは?

宴だと言いますが、酒を飲むだけで食卓も映りません。作る手間すら惜しんだのか、あるいはスケジュールが厳しくてスタッフが対応しきれなかったか。

事情は不明ながら、いずれにせよ映像作品は目に見えるものが全てです。

『鎌倉殿の13人』の序盤で、狩りから帰ってきた坂東武者の宴の方が、まだ良い食環境に思えます。

 

九度山で訓練する信繁ってどうしようもない

「打倒家康!」

そんな『戦国BASARA』シリーズじみた掛け声をあげながら、九度山で特訓する真田信繁(真田幸村)って何を考えているのでしょうか。

あれほどまでに家康へ敵意を燃やして叫んでしまったら、周囲にバレバレ。

さっさと真田信之に対して「弟は何を考えてるの? 軍事訓練しているって報告が上がってきているけど」と問い合わせればよいだけの話ですよね。

真田信之と本多忠勝の必死の助命嘆願を平気で足蹴にしてしまう信繁。

本作の作り手は『真田丸』すら無視するようで、見ているだけで脳みそが溶けそうです。

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