ドラマ大奥幕末編 感想レビュー第17回

大奥公式サイトより引用

ドラマ10大奥感想あらすじ

ドラマ大奥幕末編 感想レビュー第17回 阿部の見た夢 未だ叶わず?

13代将軍の御台所は薩摩からやってくる――大奥では、むくつけき薩摩隼人をで迎えるべく、瀧山も気合を入れています。

と、そこにいたのは薩摩切子のように透き通った美貌の持ち主。

瀧山もあまりのことに動揺してしまいます。

※以下は瀧山の生涯まとめ記事となります

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薩摩はなぜ野蛮とされるのか?

むくつけき薩摩隼人――。

薩摩はなぜそう言われるのでしょうか。

古来より、日本人は和人以外の民族を野蛮だとする日本版中華思想があります。「隼人」という呼び方にもそんな名残がある。

考えたいのは食文化です。

和人には米以外の主食を一段下に見る傾向があります。例えば“うどん”が名物の土地ですと、

「あのうどん野郎が!」

なんて言われたそうです。理不尽ですよね。

鹿児島は火山噴火により稲作が育ちにくく、サツマイモ(現地では唐芋と呼ぶ)で補っていました。そのため「あの芋(いも)がよー!」と馬鹿にされてしまったのです。

さらには肉食もあります。

薩摩では、栄養豊富な豚は「歩く野菜」とされるほど頻繁に食べられていました。そこから「犬もよく食べる」という印象が強くありました。

犬を食べるのは薩摩だけでもなかったのですが、徳川綱吉による【生類憐れみの令】以降、犬食へのタブー意識が強くなります。

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結果、江戸では「むくつけき薩摩隼人」という印象が強くなり、それは戊辰戦争でリアルな悪夢となります。

さらに明治時代ともなれば、薩摩閥政治家のワイルドすぎる振る舞いにより、イメージは確固たるものとされたのでした。

「チェスト関ヶ原!」は『衛府の七忍』由来のインターネットミームになり、現在に至ります。

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美しき御台との閨

大奥では早速、御台の美貌が噂の的に。

あの瀧山様以上か?と囁き合う場面に遭遇し、思わず引き返してまで聞き耳を立てています。

「伝説のお万の方のようだ……」

そんな言葉を聞いた瀧山は、もう黙ってられず、噂話に興じる若者たちをたしなめます。

顔貌だけでなく、心映えまで美しかったのだと。美貌に釣られてはしゃぐ連中の引き締めにかかっているわけですね。

瀧山は、家定と阿部正弘にも早速報告。

すると「瀧山とどちらが上(美男)か?」と逆に聞かれて困惑しています。

これは意図的にそうしているとも思えますが、同じ美男でもタイプが違いますよね。

白皙(はくせき・色白)で、甘く濃い麝香(じゃこう)の香りが似合いそうな瀧山。

日に焼けた肌が精悍で、さっぱりした柑橘系の香りが似合いそうな御台。

家定は「顔貌にはまど惑わされぬ!」と言い切っています。同時にどこか楽しそうにもしている。

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そしていよいよ婚儀へ。

まるで生きた雛人形のような二人――衣装も照明も劇伴も、これでもか、とばかりに新たな夫婦を美しく引き立てています。

どれだけ冷静であろうとしても、家定は思わず御台の美貌に見惚れてしまいそうになる。

視聴者にとってもまさに僥倖、こんなに美しい映像が見られるとは……と、瀧山も家定の動きに気付いた様子です。

かくして新婚の二人は閨へ。

緊張感を滲ませつつ頭を下げる胤篤の前を、家定はそっけなく通りすぎて一言。

「疲れたからもう休む」

呆気にとられつつも、胤篤はおとなしく従うだけです。

しかし、眠りにつこうとした家定の脳裏でで、父・徳川家慶による虐待が蘇ってしまう。

「無礼者! 何をいたすか!」

夜具を跳ね除け、思わず叫んでしまう家定。

一つの床では足に触れてしまうこともあると胤篤は詫び、今宵は休むと告げるのでした。

ニヤリとしながら家定は、今宵だけではなくずっとじゃと返す。驚く胤篤。

虚弱で妊娠など耐えられない。房事も好かぬ。

家定はそう言い切ると、さらには「閨で籠絡し、慶喜を次の将軍にするなど無駄だ」と、薩摩の思惑を見抜いて、言い切ります。

胤篤は動じず、慶喜でなければ誰がよいか?と逆に尋ねます。

家定は、慶喜だけは世継ぎにしない、諦めよ、とキッパリ返答。その筋書きだけは、はなから成り立たぬとまで言い切るのです。

 

他人を思う心がない者は将軍の器ではない

薩摩の意を受け、慶喜を将軍にすべく江戸へやってきた胤篤は、粘り強く家定に尋ねます。

慶喜以外なら紀州の福子姫あたりか?

血統や家格からすれば、実は紀州が断然正統性があります。ついでにいうと慶喜のように「生母が皇族」というのも、朝廷による政治介入の糸口にもなり、幕府にとっては危険です。

とにかく頑なな姿勢である家定に対し、胤篤が、慶喜はずいぶんと切れるお方だと言うと……。

「慶喜には他人を思う心がないのだ! さような者はどれほど頭がよかろうが、将軍の器ではない。慶喜を将軍にすれば国が滅ぶ。よって後釜にはせぬ!」

ついには家定がそう言い切りました。

この台詞、実は、幕臣や佐幕藩、新選組隊士らの言い分の核心を突いています。

なぜ慶喜は、そんな酷いことができるのか、薄情なのか! という嘆きであり。

慶喜、テメエのことばっか考えてんじゃねえぞ! という怒りであり。

貴人情けを知らずっていうのは、慶喜のことよな……という諦め。

徳川斉昭という毒親に育てられたとか、政権の都合上とか、慶喜にも言い分はあるかもしれませんが、そうした縛りがなくなった明治以降も相変わらず冷淡な性格をしていたので、おそらく先天的な性分だったのでしょう。

「以上、明日にでも島津の斉彬に知らせておけ!」

そう言われると、胤篤は「はい」とあっさり答えます。

これには家定も驚いた様子。

胤篤は、彼なりに理屈を理解したようです。実に薩摩隼人らしい切り替えの良さは、後ほど説明されます。

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瀧山は翌朝、胤篤のもとへ伺いに来ています。

あの絵のように美しい、無双の美貌にちょっと翳りが……月にさっと叢雲がかかったようで、焦りですかね。

胤篤はしみじみと、上様は素晴らしいお方だと納得し、白い歯を見せて笑います。

日焼けした顔からのぞく白い肌。精悍で、お万の方の繊細さとは異なる美貌なのでしょう。

家定は瀧山の報告を受け、「上様のご慧眼に感服した」という言葉に驚いています。よりよい国づくりに力添えしたいとまで言ったとか。

そう考えた経緯を話したいとのことで、家定は夜伽の折に聞くと答えます。

向こうの手に乗ることでは……と瀧山は動揺していますが、家定はおもしろくなってきたと不敵な笑みを見せている。

瀧山はますます驚いてしまいますが、はたして。

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